終わりを決めること

自殺してはいけないとは言えない。
生きてさえいればとは言えない。
生きたくても生きられない人が居るのにと聞くたびに知るかそんなもんと思う。

わたしの幸せはあなたの幸せではないし、あなたの不幸はわたしの不幸ではない。
自死を選んだ本人の選択の是非など関係なく、周りが救えたかどうかも関係なく、死んでしまった事実があるその理由がある、それで、一区切りの人生というものだと思う。

とても美しくて無欠で欠点などないという絶望もある。
弱いことが許されないときがある。
幸せであることが辛いことがある。
なにも知らないから、全ては憶測だけど。

命の長さは時間でなく、タンクに入った燃料のようなものかと思う。
美しく才能に溢れて完全無欠に見えた彼の生き方では、エネルギーが尽きるタイミングはここだったのかもしれない。
身体が生きることと、心が生きることは別だと思う。
老いてただ在るだけと、美しく居なくなることのどちらがいいのかなんて、判断のしようがない。

彼は本当に美しかった。
それをたくさんの人に見せてくれてありがとうと思う。ひとりの人間がたくさんの人間にエネルギーを与えていた。
もし可能だったならば、そのエネルギーを彼が彼自身のためだけに生きていくという選択をして使って欲しかった、きっと何をしても形になった。そして穏やかに命が尽きるのを待って生きられたら、よかったのに。

ただ何もなくなった彼が楽になれたのなら、それでもう終わりということ。
多くの美しい作品を残したことは素晴らしいこと。
短い間の彼の表舞台に立っていた人生を知ることができて幸せだと思う。
ただ明日も居ないことが、これからもずっと寂しい。

不謹慎では在るけれど、終わりを決められた彼を少しだけ、羨ましく思う。
心が死んだまま生きるのはとても大変。
わたしもいつか、自分が自分で在るうちに、終わりを決められたらと思う。

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