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essay|「何か」

小学生の頃、仲の良かったななみちゃん。漢字は「七海」。
一緒に登校していたはずなのに、どうして疎遠になっちゃったか覚えてないや。
同じ中学には通わなかった。引っ越ししたのか、受験したのか…
幼い頃の記憶なんてそんなもん。


イルカが大好きだったあの子。強く覚えている。
好きな色は、小学生の女の子が想像する、「海と言えば?」の鮮やかな水色。
将来はイルカのお姉さん、と言っていた。

私の中で、ぎりぎり覚えている、小学生(低学年頃?)の容姿をしたななみちゃんは、イルカのお姉さんになれたのだろうか。


情報社会。
どの方向から、どんな情報が入ってくるのかわからない。

私の関わった業界の方が、私の言う「カスタマイズ」を「制御」と言っていた。
多すぎて、マイナスで作るようなイメージなのか。
よくわからないけど。

情報社会。
ななみちゃんは、大学で海について勉強したらしい。
ざっくりと、こんな情報が入ってくる。
きっと、「情報になる」ということは、優等生だったんだね。
海に近い街の街づくり、そんな勉強をしていたらしい。
きっと海の生物も関わってくるんだろうね。


赤いランドセルを背負っていた、ほんの十数年しかこの世を見ていないななみちゃんしか知らないけれど、そんな私にも、「ぴったりだね!」と言いたくなるような世界。

ぴったりなんだ。イルカが大好きだったななみちゃんには。

みんな、「ぴったり」とか「さすが」を持っているように見える。

今、何をしたらいいのか、何をすればいいのか、分からない迷子な私にとって、遠い言葉。

簡単に得られるものではないし、得ようとして授けられるものでもないことは分かってるきっと、みんないつの間にか手に入れてるんだ。

何年も何年も、積み重ねたもの等、私は持ってなくて、幼い頃からイルカが好きで、大学に入って海に近い勉強をしているななみちゃんに憧れを持ってしまった。

私は、とても薄っぺらいように感じてしまう。

社会に出てもうすぐ6年。小学生に例えると、卒業が近い。
その間に3つ目の部署を経験している。
早く何かのプロになれるとは思ってないけど、どこに行ってもまだまだ「ぺーぺー」。

今、私が好きな、読書も料理も、美術鑑賞も、映画鑑賞も、何年も続いている私の持ち物ではない。
こんなものにアイデンティティを求めても、仕方がないのだと思ってはいるのだけれど…
なにかに秀でたセンスがあるわけではないし、どのジャンルでも、隣の芝生は青く見えるもの。


あぁ、もう11月末か、とカレンダーを見て思う。
あと1か月もすると、クリスマスで。会う人会う人に、「良いお年を」と言葉を放ってる。
なにか衝撃的でロマンティックな事が降ってくるとは思っていない。
ので、私の2023年は、この「何か」と共に幕を閉じるんでしょう。


ななみちゃんは、どうして海について勉強していたのか。
イルカのお姉さんに、どうしたらなれるのかは知らないけれど、彼女がなっていなかったときに、声をかける言葉を私は知らない。
どうしてイルカのお姉さんにならなかったの?は、もしかすると、あまりに酷な質問かもしれない。
それが分かるくらいには、大人になってしまった。
それでも、22歳の彼女が、海の勉強をしていると知って憧れてしまった。
そのまま卒業したとして、5年以上経つ。
今、彼女は何をしているんだろうか。
彼女が憧れるものは何なんだろうか。


「憧れ」とタイトルのついた「何か」を作りたいんだ。
きっと、ないものねだりで、人生が詰まっている。
一度に多く、手に入れられない、でも、その場(地位)にいる人がうらやましくなる。
一度に多く、手に入れられないからこそ、あなたは今そこにいるのに。
と誰かが回答してくれるでしょう。



私には積み重ねてきたものがない。
早く何かを積み重ねられるわけではないし、こんな不純な動機はどうかと思うけど、積み重ねた安心で、眠りたい。
誰もかれもが、口には出さないけど、「何か」を求めていることを願う。
どんな人にもある悩みだと知れば、安心するなんて、なんて性格の悪さ。
でも、人はきっと貪欲で。
だから成長するんだろうけど、ずっとないものねだりなんだろうね、きっと。


ぽつんと、独り言。

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