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いつも解をさがしていない

朝からツイッターと闘っていた。
青いバナーが浮かんでは消え浮かんでは消えまた浮かび、通知欄が狂ったように上下に入れ替わる。
見ていたら永遠に終わらない気がしたので、少し時間は早かったが家を出ることにする。
駅前の交差点でスマホが熱を持ち始めているのに気づき、いい加減通知を切ったほうがいいかもしれないと思いツイッターを再起動したら電池がごそっと減ったので慌てて閉じた。私のiPhone7は貧弱だ。

今日は仕事のあと美容院の予約を入れている。
私はポンコツなので現金を全て電子マネーにチャージしてしまっていて、夜iPhoneが使えないと美容院の支払いができなくなってしまう。電池は死守。


いいねとリツイートが止まることなく繰り返される私の言葉の連なりを他人ごとのようにぼんやり見ながら彼のことを思い返す。

「やっぱ子供いると楽しいすか」
私は飲み会や友人との会話の中でよくこういう質問をする。恋人とのこと、配偶者のこと、子供のこと。簡単に場が盛り上がるので気楽である。その代わり、誰が何と答えたのかは一切覚えていない。そこに何の有意義な意見も答えも私は求めていないからだ。
誰が何と答えようと、私がその場で「よし、子供産むぞ〜!」とか「やっぱ今はまだいいかな…」と決定するわけがない。

彼は私のそういうところを見越した上で答えたのだと思われる。

「いや、老人でもネコでもいい。空間に接点が多ければそれだけ話題が生まれて話が尽きない。子供もいいけど子供じゃなきゃいけないなんてことはないんだ」

ハッキリ言ってこれは答えになっていない。
「話題が生まれて話が尽きない=楽しい」ということなのだろうけれど。
子供がいると楽しいかどうか、それに対する彼の解によって私の「今は子供を産みたいと思えない」という意思は覆らないことを彼はわかっていたから、彼は「答え」ではなく「考え方」を私に与えてくれた。

年頃の娘2人に奥さんがいればそりゃ家に人が多くて話題は尽きないよね。だけど子供じゃなきゃ、配偶者じゃなきゃいけないなんてことはないんだ、空間に接点を生むことを考えてみて。

優しくて柔軟で、私の持ち得ない形をした思考だった。平面的ではなく、いろんな角度から眺めていろんな姿を楽しめる、不規則だけど美しい多面体を思わせた。
(柔らかい多面体は「多様体」というのだと理数系の方の引用リツイートで知ったので調べてみたら、多様体は空間の好きなところどこにでも座標を描き込めるらしい。全く意味がわからないが、それはそれで自由でいいなと思った。)

私はテキトーな質問を本当によく人に投げかける。いつも最適解は求めていない。その人だけが持つ多面体を見たいだけなのかもしれない。


美容師さんはいつもどおりにきれいなカットをしてくれた。マメな人で、カットのビフォーアフターを毎度しっかり写真に収める。
だけど彼女は写真を撮るのに夢中で私の顔に付着する大量の髪の毛の切れ端に気がつかないので、美容院のあといつもデートの約束を入れてしまう私は払いきれなかった髪の毛を引っ付けながら男と酒を飲む羽目になる。
この美容院あるある問題については最適解がほしいところだ。

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