苦しみと緩和の臨床人間学：佐藤泰子

病院の相談員をしていたとき様々な人生の患者様に会いました。
現在はがん患者の支援活動もしていますが、自分ががん患者になったことで本当にがん患者や家族の気持ちが分かっていたのかという反省にかられたのは、大きな財産だと思っています。

がん患者から（がんに限らず）時としてかけられる言葉に、「がんになったこともないのに私の気持ちが分かりますか」という一言があります。
一生懸命看護にあたっていてもこんな言葉が返ることがあります。
もちろん言った本人も、この言葉を言ったからといってどうにもなるものではないというのはわかっています。
やり場のない、先の見えない苦しさ、悲しさ、辛さをとにかくぶつけたいのです。

同じ経験をした当事者というのは、言わなくても分かってくれるという安心から心を開くことができます。
ピアサポートの強みです。

では同じ経験をしていない人は何もできないのか、話を聞いてあげることは全く意味がないのか、という問いに答える内容です。

同じ経験をしているわけではない、でも何とかしてあげたい、そういう方への理論的な励ましの1冊です。