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ステキな夫婦(17人目のAさん)

先日、外出のついでに療養型に転院したAさんの様子を見に行きました。
Aさんは約2年前、くも膜下出血後のリハビリで当院転院。
退院後は在宅か療養型か迷った末、在宅介護を選択したものの、いろいろあり現在の療養先に至っています。
当院を退院して既に1年半。
奥様の様子も気になっていました。

Aさんは72歳の男性。妻と二人暮らし。
鼻からの栄養チューブをつけ、全介助状態で回復期リハビリ病棟に転医してきました。
奥様は2つほど離れた町から毎日車で介抱しに来ていました。
もともと明るい性格と積極性から、すぐ職員とも他の患者家族とも仲良くなりました。
自分でも一生懸命介抱するだけあって、時には看護師にも厳しい面もあったようです。
全くの寝たきり状態から、リハビリの結果、二人介助で少しですが歩けるまでに改善。
しかし回復期リハビリ病棟は入院期限があります。
脳血管疾患なら150日。
高次脳機能障害があれば180日。
当然期限が近づくと、当然今後の話を進めることになるのです。
奥様は何とか在宅で介護を希望。
でもクリアしないといけない課題がいくつかありました。
鼻からの経管栄養。
Aさんは昔、胃を全部摘出していたため胃瘻はつくれません。
奥様には注入の仕方をマスターしてもらわなければなりません。
また、チューブが抜けた場合の対応をどうするか。
それからインスリン注射。
元々糖尿病があり、自己注射をしていました。
さらに痰の吸引。
Aさんは自分で痰を出すことはできないのです。
あとはおむつ交換。
訪問看護やデイケアを利用し、奥様の負担を軽減できるように考えないといけません。
しかし奥様はがんばりました。
一つ一つマスターし、着々と在宅の準備をこなしていったのです。
リハビリスタッフも自宅まで家屋評価に出向き、住宅改修のアドバイスも行いました。
私も、身体障害者手帳申請、吸引機は障害福祉の日常生活用具の申請、特別障害者手当申請と手続き関係をアドバイス。
訪問診療のクリニックも決め、緊急時の対応も医師から説明。
ケアマネジャーにも連絡し、事前のカンファレンスを設定。
とにかく退院を目指して万全の準備をしました。
そして晴れて退院。
Aさんも涙を浮かべて手を振ってくれました。

しかし1週間後、奥様から少し様子がおかしいと連絡がはいりました。
すぐ主治医に相談し、救急車で大学病院に搬送してもらうようにと連絡。
結果肺炎でしたが、しばらく臥床が続いたため、日常生活動作は一気に低下。
在宅での1週間は奥様にとってやりがいはあったものの、すごく疲れたようです。今回は自宅近くの別の病院を紹介してもらうことになりました。
その後いくつかの病院に転医を繰り返し、今の病院は期限を決めず入院できることで選びました。
病院が変わっても奥様はとにかく毎日介抱に行きました。
話しかけ、顔や体を拭き、歌を歌いに。
何度か様子を見に行きましたが、いつ行ってもAさんのお肌はつやつや。
これが本当に寝たきりの人の肌なのか、と疑うほどなのです。
でも奥さんも自分の時間も大事にし、コーラスや俳句など趣味にも時間を使っていました。俳句は新聞にも載るほど。
同人誌にもエッセイを投稿し、載った時はコピーしていつも私に送ってくれました。
今回訪問した時、先日から少し調子が悪くなってきていたとのこと。
でもAさんの部屋にはいつも明るさがあります。
いつも明るい奥様。
明るい奥様に見守られているAさん。
病室に来る看護師さんまで明るくしてくれます。
もちろん見えないところでは奥様も大変苦労しているはず。
「この人は私の生き甲斐なのよ」
うれしそうに話してくれる奥様。
素敵な夫婦だなと思います。

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