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狂歌・ワイン知らずのワイン談義:カエルと言う名のワイン

昔々その昔、まだ日本の景気が上向きで少々日本人が傲慢になっていた時代、、、そう、リーマンショック前の話です。日本の大手飲料メーカーが日本人にボージョレヌーヴォーを鯨飲させようとやっきになってコマーシャルやマーケティングをやり、営業も大動員。結果、安ワインは高級ワインに姿を変えて日本中で大いに売れました。で、「よくやった営業員!」とばかりに、成績の良かった社員を大勢ブルゴーニュに送り込んだことがあったのです。私は通訳でついて行っただけなんですけどね。ブルゴーニュはもちろんボージョレヌーヴォーの産地ではあるんですけど、皆さんご存知の通り、由緒正しいワインの生産地です。そこで迎えてくれたのが仲買人二人。一人はゴマ塩の髭を生やし腹の出たハヴァナ葉巻が大好きな派手な初老男。なんでも日本市場のお陰で大邸宅を購入、中にグランドピアノを三台据え、腹上死もおそれずに再々婚した女房は娘と取り違えられそうなくらい若くグラマラスな女性。乗用車にはロールスロイスが三台だよ、キミ~、ガッハッハという人でした。もう一人はこれはまた地味も地味、口数も少なく、しゃべってもボソボソという外見はぱっとしない、まさかブルゴーニュで一二を争う味利きだとは、教えられても信じらないというような人でした。もちろん自分の家族がどうこうという話もしないし。でね、その二人が全員をブルゴーニュのキャヴに招待してブルゴーニュワインの紹介をしてくれたんですね。一流のネゴシアンによるテイスティングを受けたのは幸運でした。白はプイィ・フュイッセとかムルーソー(カミュの有名な小説の主人公と同じ名前)とかの有名どころ。その中にグルヌイユ(カエル)というのがありました。名前が面白いので覚えていたのですが、めったに見ないワインです。でね、今日ちょっと検索をかけてみたら超ビックリ。ロマネコンティのグルヌイユというのがあって値段は6000ユーロ!こんなの誰が、と息が詰まりそうになったけど、あっ、そうか、ああいう人なら飲めるな、横にあの笑顔が素敵な女優を置いて、その後ろにはバスキアの億単位のタブローをかけて、そいでグルヌイユを楽しむ。いいな~。てんで関係ないけど。

狂歌:ポコポコとロマネコンティが音立てる飲んだばかりの君が上だと

付け加えると50ユーロくらいからのカエルもあります。ロマネコンティという名前は開高健の随筆で知ったんですけど、ここのモンラシェは6000ユーロですね。あ~、貧乏はいやだ。

でね、テイスティングの最後に「では解禁前だけどせっかく日本から来た君らにボージョレヌーヴォーを味わってもらおう!」と派手派手オヤジが宣言、販売ナンバーワン女子男子はみんな歓声を上げて安ワインを飲み始めたんですけど、私は「いや、こっちで続けます」とグルヌイユを地味地味オジサンと一緒に飲み続けたのでした。二人でニタリと笑いながら。いや~、あの時は酔っぱらったな、Hahaha。

それじゃまた、ごきげんよう。

絵:アクリル 15F。モデルはランバレネの魚市場でプラスチックの買い物袋を売って生活していた男。気のよい男で似顔絵を描いてやると控えめながらとても感謝してくれた。いい奴だったけど、どうしたか・・・いつも日傘をさしてテクテク徒歩であちこちの市場を回りながら袋を売っていたけど。。。

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