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2020年3月の記事一覧

アルバムレビュー - Joe Colley『No Way In』

ジョー・コリーは1972年生まれ、カリフォルニア州サクラメントに拠点を置くアーティスト。視覚的または口頭的な手段とは異なる方法で意識を活性化するものとして、現象としての音について独学で学び、ジャーナリストとして儀式的な音楽や狂った芸術に焦点を当てフィールドレコーディングや様々な文化の研究を行い、その成果は多くの国の雑誌などに掲載されています。 音楽家としては90年代に実験的なノイズプロジェクトCrawl Unit名義で活動を始め、ゼロ年代には本名名義での活動も開始、ソロアル

アルバムレビュー - Yu Kawa Shizuka『minamiarupusunotennensui』

スピーチシンセや自ら行う楽器演奏などのオーディオ素材に最終的に電子的な音響加工を加えることで作品を制作している湯川静さんの2020年リリースのアルバム。 昨年にはバンド名義(実質的なメンバーは自身のみ)であるArmadilllllllidium vulgareとしてのリリースがありましたが、本人名義でのリリースは前作『kanojonodokusinshatatiniyottetoumeikasaretahanayome,saemo』から二年半振りとなるようです。 湯川さん

アルバムレビュー - Carl Didur『Natural Feelings Vol I』

Spotify / Apple Music カナダのマルチ楽器奏者Carl Didurによる2020年リリースのアルバム。彼は現在までに本作を含め計3作のアルバムをリリースしていますが、他の二作が民族音楽的な味付けなどもライトに施したインスト集(ちょっとしたB級映画のサントラみたいにも聴こえる感じ)だったのに対し、本作では自然からインスピレーションを受けて制作されたゆったりとしたニューエイジ・アンビエントといった趣の作風を披露しています。 彼はマルチ楽器奏者であり、本

アルバムレビュー - Stefan Fraunberger『Quellgeister#3 Bussd』

Spotify / Apple Music オーストリアのアーティスト兼コンポーザーStefan Fraunbergerによる2019年発表のアルバム。ルーマニアのBussdという村にある廃教会のオルガンの演奏が収められています。 本作はタイトルとなっている「Quellgeister」というシリーズの第三弾にあたります。このシリーズでは一貫して放置された教会のオルガンが演奏されており、それを通して「時間と条件を経て忘れられた機械の有機的変化に基づいた音の限界を再文脈化