理系でも分かる現代哲学

現代哲学を理系でも分かるように紹介します。

分析哲学(英米系哲学)と大陸系哲学

20世紀以降の哲学は大きく分析哲学(英語圏が中心だったので英米系とも言われます)とヨーロッパ大陸で行われてきた大陸系哲学の2つの潮流があります。この二つはお互いに対立というか無視しあってきました。分析系の哲学者から言わせると、大陸系の哲学は曖昧で難しげな言い方をしているが内容は無意味だということになります。大陸系の哲学者から言わせると、分析哲学は底が浅い、ということになります。最近は融合が進んでいますが、哲学について言及する人がどちらを主に念頭に置いているかは注意しないといけません。マスコミに取り上げられたり一般の人文読書人が接したりしているのは主に大陸系哲学です。よく紹介される「現代思想」はフランス系の大陸系哲学にはいります。

このノートでは大陸系哲学は省略し分析哲学だけ紹介します。

分析哲学の考え方

分析哲学では、概念の分析や言葉の意味(の理論)を重視します。たとえば引用符の意味といったことについて膨大な研究がなされてきました(自然言語の引用符の意味はそんなに自明ではない...と考える人も多いです)。これはウィトゲンシュタインが哲学の問題は概念の混乱や言葉の不正な使用にある、としたことからです。

アナロジーとしてではなく実際に数学的手法が応用されることも大陸系哲学と異なった点です。もともと20世紀初頭の数学の基礎や論理学に関する議論から出発していることが背景にあります。現在では計算機科学とつながりが深いです。例えば言語哲学は構成的数学やプログラミング言語理論とつながりがあります。プログラムなどの形式検証でよくつかわれる様相論理はもともと哲学で研究されてきました。また、形而上学はオントロジー工学と関係があります。

そのほかに、個人の思想ではなく共有可能な理論構築を重視する、歴史研究や過去の哲学者の解釈を軽視する傾向などがあります。

分野

哲学の分野をいくつか紹介します

形而上学:多分一番ファッショナブルな分野です。「形而上学」が悪口である時代は終わりました。形而上学は世の中にどんなものが存在するか、それらはどのような関係にあるか、を議論します。それは物理学では?と思うかもしれませんが(そういう考えもありますが)数学の対象のようにすぐには物理の対象と1:1対応すると思えないものがあります。無限の精度のsin関数とか存在するのでしょうか?とか。

言語哲学:ことばの意味とは何か、のような議論をします。直接「意味」とは何かを論じるのではなく、意味を適切に記述する理論とは何か、という問題に議論が集中する傾向があります。また、それを前提にしていろいろな(例えば引用符のような)言語の要素の振る舞いを記述しようとします。

倫理学:何が正しいかを議論する分野です。そもそも「正しい」なんてものはあるのか、ということを論じる「メタ倫理学」、正しさの基本的な基準を与えようとする「規範倫理学」、個別の領域にそれを適用する「応用倫理学」があります。たとえば応用倫理学では動物の倫理的な扱いに関わる議論が盛んです。肉食に反対するヴィーガニズムの源泉の一つです。

参考書

私が読んだ本を紹介します。良い本だと思います(が、書かれていることに私が賛成しているとは限らないので念のため)

現代存在論講義I-ファンダメンタル現代存在論講義II 物質的対象・種・虚構

言語哲学大全1-4

メタ倫理学入門

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