平和への短歌01|西田郁人

・大統領が謝罪をしたつてどうなるの ヒロシマは静かな街であつて欲しい
 西田郁人「心の花2016年8月号」

・被爆者の組織に三団体もあればアメリカ大統領とハグするもゐる
 西田郁人「心の花2018年9月号」

2016年5月27日、バラク・オバマ米大統領(当時)、現職大統領として初めて被爆地・広島を訪問し平和記念公園を訪れました。平和記念資料館を見学し、原爆死没者慰霊碑に献花し、第二次世界大戦のすべての犠牲者を追悼しています。
戦争を経験していない私からすると、それは歴史的な出来事であったように観えました。
しかし、当事者である広島の被爆者の方々の心の痛みを癒す行為ではなかったのでしょう。被爆者の方々にとって一番の望みはおそらく、失われた日々を、そして平和な日々を取り戻すことです。

・原爆の歌などなにも歌はなくつてもと思ふ日のあり ああ七〇年経ちぬ
 西田郁人「心の花2018年9月号」

「原爆の歌を詠みたくない」という感情と、一方で「原爆の悲劇を決して忘れてはならない」という強い気持ちを同時に表現している一首です。歌に詠む行為は、心の傷を再び開く行為であり、その避けたい感情こそが心の痛みとして描かれています。
この歌を読んで、原爆の悲劇を忘れてはならないことを改めて思い知らされました。
西田郁人さんは1934年8月広島県生まれ。竹柏会「心の花」の先輩歌人で、私がもっと世に知られてほしいと思っている歌人の一人です。東京新聞の「一首のものがたり」が取り上げてくださいました。お読みいただけたら幸いです。

竹柏会「心の花」
http://kokoronohana.sakura.ne.jp/kajin_1.html#5

東京新聞「一首のものがたり」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/197392



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