瞽女さんの短歌
・音にのみ聞きしばかりにめぐり来て名高き月のかげにやどれる
作者不明
江戸時代中期の歌人、石塚倉子の家に泊まった瞽女さんが詠んだとされている一首。歌意は、
「かねてから、石塚倉子の事を風雅な方であると聞いていたので、そこかしこめぐったついでにお尋ねして、折しも名月の頃を、泊めてていただいた。」
というもの。
石塚倉子の家を「名高き月のかげ」に例えている部分は敬意の意味と、ただ泊まる場所でなくて心の拠りどころ、精神的な「光」を感じさせる場所でもあることを強調した表現なのでしょう。
瞽女さんがどのように文化的な人々と交流していたかを垣間見せてくれる歴史的意義もある一首です。有名歌人を訪ね、歌を交わして、つながっていた。江戸時代の空気感や、人をつなげる文化や芸術のちからがなんとなく伝わってきます。
組織が整っていた当道座の検校、勾当の短歌は非常に多く残っているのですが、家が単位となっていた瞽女さんの短歌はほとんどあまり残っていません。そんな現状からは視覚障碍者の短歌を残す人間の大切さも伝わってきます。
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