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マガジン

最近の記事

大晦日

「大晦日だから洗濯しようとおもう」 同居人がコタツに潜りながらそういった。テレビでは紅白が始まっている。同居人の顔は退屈というか不服である。 「なにを洗濯すんの」 「人間」 同居人は宇宙人である。そうは見えないけれど頭のてっぺんにでっけえクリスマスオーナメントみたいな星がついているので宇宙人である。 ノアの大洪水みたいになるんか。こまったな。来年のプリキュアが楽しみなんで洗濯されるのはこまるなあと俺は思った。いや同居人がするといえば俺にはどうすることもできないんだけ

    • 片道520円

      もう、こんな家はいやだ。私は両親の怒鳴り声に耐えかねて、そっと窓から家を出た。靴はもうすでに準備していて窓の外に出て履いた。さっさと離婚すればいいんだ。馬鹿じゃない。 「そうだ……りえさんのところにいこう」 りえさん、は数少ない私に優しくしてくれた大人だった。就職して一人暮らしをはじめて家を出て、一度だけ遊びにいった。一晩ぐらいなら泊めてくれるかも。そんな気分で私は駅まで歩いて行った。夜の道は少し怖い。けれど帰宅中なサラリーマンなひととかウォーキングしてる人がいたので少し

      • クリスマス

        「ずぁああっ!寝過ごしたっつつつつ!」 私は飛び起きた!すっかり寝過ごしてしまいクリスマスはとっくにすぎて12月29日だった。 「どおおおしよおお」 サンタクロースの仕事をすっぽかしてしまった。寝過ごさないように目覚ましもいっぱいかけてサンタクロースの服を着て寝てソリで待機をしていたというのに!私のせいで子供たちが今年の年末をどんよりした気持ちですごすかと思うと号泣!!!えーん腹を斬りますううううごめんねみんなああああああああああさよならサンタの服が赤いのは!こういうこ

        • 温泉

          「いやあいい湯だな」 私はゆっくりと湯につかりそういった。東京のどまんなかにこんないい温泉があるなんて地球もすてたものじゃないね。 「湯につかってる場合でもないけどな」 と友人はいった。私たちは丸の内のビルのとまんなかに沸いた温泉につかっている。 こんなとこでオンナふたりが裸になっていたら写真でもとられそう、なんて思うけどおそらく半径10キロぐらいに生存者はいないんじゃないかなって思う。つまり隕石がいっぱい落ちてだいたい地球の人が死んだのだ。ぼろぼろで彷徨っていると奇

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        • おもしろ
          1本

        記事

          福袋

          友人から福袋を貰った。大きな紙袋のわりに軽かった。 家に帰ってからあけてよ、といわれたので家に持って帰って開封してみると中に福が入っていた。 「新年そうそう福だなあ」 私は友人からもらった「福」とかかれた紙をみてほっこりしてお茶をいれてしばらく福を眺めて一日を過ごした。

          死体を埋める話

          よくある話だけれど人を殺してしまった。これまでも人を殺してきたことはあるけれど、愛している人を殺してしまったのは初めてだった。 私は泣きながら庭に連れて行って埋めた。もう一度会いたかったので埋めた後、コメリで買った栄養剤を地面に何本も突き刺した。植物用がタンパク質に効くかわからなかったけれど…… 寒い寒い冬になった。あの人がいればくっついてくれて冷たくなった足をあの人の温かい足で挟んでくれるのに。 私は隙間風が入る小屋の中で凍えていた。ここは最果ての岬で、めったにだれも

          死体を埋める話

          音の万事屋

          音の万事屋があるときいてこの街にやってきた。 知人に書いてもらった手書きの地図をたよりに私は街をうろうろと彷徨った。少しさびれた商店街の一角、看板も出ていない店をみつける。 「これが音の万事屋か」 看板もでていない、こじんまりとして昭和然とした店構えに私はすこしためらった。しかし寒風のなかぼうっとたっていても仕方がないのもで思い切ってガラガラとドアを開ける。 「ごめんください」 店の中はよくわからない物が所せましとおかれている。楽器なども多いがこれはいったい?といい

          音の万事屋

          ストーンパフェ

          石パフェ屋さんが出来たときいて私は電車を乗り継いでお店までやってきた。お店は住宅街の一角にありすこしまよってしまった。 お店は混んでいて少しのあいだ待ってから入店した。 メニューを渡されしばらくまよって注文する。まわりを見渡すとスマホをむけておいしそうなパフェを撮影している客だらけだ。 私はそわそわして待った。 「すみれ水晶のパフェです」 お店の人がパフェをもってきた。すみれ水晶のあいだにシロツメクサの水晶と挟んでいるかんじはモネの水連の絵を彷彿させる。上にのせてい

          ストーンパフェ

          デパートデート

          年末のデパートはクリスマスの気配よりもお正月の雰囲気の方がつよく漂っていた。 「こんでいるな、さすがに」 「まあね」 僕は友人の直人を連れてデパートに来ていた。というのも恋人に贈るクリスマスプレゼントがまったく決まらないからだ。僕は32歳になるのだけれど、買い物の趣味がお子様じみているようで2歳年下の玲子さんの趣味にまったく一致しない。玲子さんは上質な落ち着いたものが似合う女性だ。一番最初のプレゼントにかわいいクッションをあげた時のなんとも言えない顔は忘れられない。一応

          デパートデート

          温泉とカピバラと魔王

          山で遭難した勇者の俺、鈴木ッ! 寒さで途方にくれていると湯気がみえる。温泉だ。 俺はイヤッホウッと服を脱いで温泉に飛び込んだ。寒さのためカピバラたちも湯につかっていた。 よきかなよきかな。 ファっ 俺は身体があったまりふとみると先客がいることに気がついた。湯に入っていたのは魔王佐藤だった。 魔王佐藤は不愉快な顔をしている。やべっ、俺かけ湯してない。 「あはは、すみませんかけ湯わすれてました」 「あ、ああ」 魔王佐藤は気まずげだ。俺はフルチンだが魔王佐藤の強靱

          温泉とカピバラと魔王

          階段の怪談

          私の働いているオフィスは古い。福祉の役所関係の三階建ての建物なのだが、老朽化ははげしくそのうち建て替えるという噂だが、なかなか話は進んでいないようだ。 私は下の階にある部署に書類を届けにいっていた。外につけられた廊下は古い。じつのところこの階段は使いたくないのだが、急ぎだというので仕方なく階段をつかう。エレベータはこんでいたのだ。私は手すりをつかんで一歩ずつ降りていった。カンカンカンと鉄の音がする。踊り場にあと二つ、というところで私は息をとめ、慎重に足を下ろす。今回はなにも

          階段の怪談

          こたつ

          宿にかえったわたしは同じパーティの山田がこたつに入っているのに気がついた。 「あ、こたつ買った?さむっからうれしい」 「ばか!こたつに入るなよ!」 「何ケチだね、いれてよ」 「バカ!ぜったいにこたつに入るな!出れなくなるぞ」 「あったかいからな、こたつは魔物だよ」 あたしはそういってこたつに入った。 がぶ!!! 足をかまれた。 「え、なにこれ」 「ばか山本!これはこたつじゃなくてミミックだ!魔王軍の奴らが送り付けた魔物だよ!」 「早くいってよ!ほんとに魔

          吊り輪

          (そんな~感染対策で吊り輪がなくなるなんて聞いてなよ) 私は電車で困っていた。いつもなら吊り輪につかまるのだけどこの昨今の情勢で手に触れる吊り輪が撤去されていたのだ。 電車のなかはそこそこすいている。こんでいたらとなりの人の肩で踏ん張れるのだが、こうそこそこすいていると寄り掛かるのもできない。この路線、カーブが多く揺れるのに。 私は腰に力をいれて電車の中で立っていた。電車が発車する。あんのじょう電車は揺れる。 「ふんっ」 私は腰に力をこめて立っているものの軟弱なので

          告白テロ

          「俺山本のこと好きだしさ…付き合わない?」 テロじゃん。 私、山本みいは松井達弘に告白されて心底、そう思った。 放課後、の教室。日直だった私は日誌を書いていた。そこで松井くんがやってきてそういった。 じつのところ…告白されるんじゃないかという予感は持っていた。松井くんは高校に入って一年の終り頃から仲良くなった。ちよちーとかよっつんとかとよく遊ぶようになって自然と交流が生まれていた。どうやら松井くんが私に気があるらしいとは、まわりの子にいわれていたし、私自身もそう思える

          告白テロ

          ピンクとキイロ

          やられた!! くそが。 あたしが髪の毛をキンパツにギンギンに染めてガッコに行った日、おなじクラスの霧雨由乃佳が髪の毛を真っピンクに染めてきやがった。 第一東中、一年一組の教室は霧雨のピンクの髪の毛の話題で持ち切りでだれもあたしのキンパツにキョウミないっていうか、あたしがパクったみたいなかんじ!なんだよせっかく金かけてキンパツにしてきたのに。 「おいごら、まねすんな霧雨!」 あたしはさっそく昼休みに霧雨を中庭でつかまえて、髪の毛をつかんだ。さらさらのアニメキャラっつう

          ピンクとキイロ

          まわれ人間

          私は久しぶりに妻と子、家族三人で回転寿司に行こうと思った。 「そういえば近所に回転寿司屋が出来てたな」 「そこにしようよお父さん」 「そうるすか」 家族で食事はいつも同じようなチェーン店なので新規の店がいい。どんなものだろうお手並み拝見。と車を運転した。 道沿いにみえてきた回転寿司屋の看板がみえて駐車場に車をとめて店にはいる。昼をすこしまわったところなのですぐに入れた。 「かわった店だな」 回転寿司といえばレーンがまわっていてそのまわりをテーブルがかこんでいるの

          まわれ人間