見出し画像

リプレイ小説「二人は傭兵」#5

Session1 毒蛇は賞金稼ぎ

Chapter5 首の価値

 勝敗が決した戦場では、勝者のゴブリンたちがドワーフの首を刈り取り並べている。三人は満身創痍でそれを眺めていた。そこにラギがやって来て言った。
「お前らが追っていた三人の暗殺者は西に向かって逃げていったぞ」
 黒蛇は追うぞと二人に言った。ヨイチはもうヘトヘトで今日はもう殺しは沢山だといった感じだが、ゴンザはケリをつける気のようだ。
 ラギが部下に命じて足の早い蜘蛛と乗り手を用意した。
「地の果てまででも、追うが良いさ。」
三人は蜘蛛の後ろにまたがった。森を駆ける蜘蛛の足は速かった、ありとあらゆる障害物も乗り越え一直線に三人の暗殺者が騎乗する馬に追いついた。
 ヨイチは弓を、ゴンザはスリングを取り出し先頭を走っている馬に攻撃を加える。ヨイチの矢が馬を貫く。一人が落馬して地面に叩きつけられた。他の二人もそれを見るや素早く馬首を返し、落ちた仲間のもとに駆け寄ると下馬し剣を抜いた。
 三人の蜘蛛はその前で止まった。乗り手のゴブリンは言った。
「あとは好きしな」
 ヨイチは素早く蜘蛛を降りると素早く矢を放つ。ゴンザと黒蛇は武器を手に襲いかかる。男たちは優れた暗殺者であったが、正面切っての戦いではゴンザと黒蛇に敵わなかった。次第に追い詰められ立ち上がれないほどの傷を負わされ地に倒れた。
 黒蛇は剣を突きつけ言った。
「我が父をお前らに殺させたのは誰だ?」
「口は割らん、だがそんな事をする奴は世界に一人しかいまい」
男は笑った。毒蛇はそれで十分だと思ったのか、三人の首を次々と切り落とし、それを二人に与えた。それが報酬だった。
ヨイチが言った。
「そんなに楽に殺して良かったのか?」
「こいつらは言ってみればナイフみたいなものだ。ただの道具だ。本当に我が父を殺したのはそのナイフを突き立てた者だ」
「これで終わりだな」ゴンザは言った。
「俺はこのまま北に行くよ」
毒蛇はそう言うと暗殺者が乗っていた一頭の馬に乗ると言った。そして懐からだした短剣をゴンザに投げて言った。
「これは我が家の紋章が入った短剣だ、いずれこの借りは必ず返す、それはその証だ。それでは御二方また会おう」毒蛇は馬首を北に向け走り去った。
「死ぬなよ!」ゴンザが叫んだ。
 王都に戻った二人は首を賞金にかえ、拠点としている北の国境に近い都市に戻った。
 そこで、あの戦いの噂を聞いた。傭兵団・雷鳴が呪術師の森でスチュワート家の生き残りを巡って戦った。ドワーフのほとんどが死にその首は平原に晒された。あの平原はかっては何の名もなかったが今ではドワーフ髑髏ヶ原と呼ばれている。恐らく永くそう呼ばれるだろう。あの戦いはドワーフ髑髏ヶ原の戦いと呼ばれている。
 傭兵団・雷鳴の団長ドヌルベインは生き残って逃げ延びた指揮官を処刑した。指揮官は傭兵団の後ろ盾グラームズ家に連なるものでドヌルベインの従兄弟に当たる者だったという。
 本来ならすぐに兵を起こしその首の奪回と報復の戦を仕掛けるべきなのだが、傭兵団・雷鳴の主力は西方で戦っている。残された戦力では奪回は困難だ。首は暫くの間、風雨に晒されていたが、ある日突然それは消えていた。
 噂では傭兵団・雷鳴が苦渋の決断で極秘裏にゴブリンに黄金を出し首を買い戻したという。その交渉にたったのはドワーフ髑髏ヶ原の戦いでゴブリン側の部隊を指揮した二人の傭兵だったという。

Session1 二人は傭兵、毒蛇は賞金稼ぎ
収録日:2017/8/12 2017/9/9
使用ルール:ソード・ワールド ウォーハンマーファンタジーバトル
GM:山ノ下馳夫
ヨイチ:ミチヲ
ゴンザ:社長

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?