リプレイ小説「三人は傭兵」#7
Session2 その本はネクロノミコン
Chapter2 三人の魔女
仮面の男は本を手に入れると、黒い船に乗り城を去っていった。三人は他の負傷した者と一緒に手当され、翌日意識を取り戻しベッドの上でお互いの無事を喜んだ。そこに怪我人の見舞いにヴェルサオがやって来て、三人は仮面の男が宝物庫を荒らして去っていった事を知った。
三週間ほど三人は養生しなければならなかった。ドゥルマ家の薬師が面倒を見てくれた。あの黒焦げの死体を見たブライは己の体も一生消えないような火傷の跡が残ると思っていたが、綺麗さっぱり火傷の跡は消えていた。これは薬師の腕が良いと言うよりやはりあの火炎と雷槌が呪いである為なのだろうと思った。
養生中に黒い船に乗った海賊が海岸を荒らし回っているという噂も聞いた。女子供をさらっているという。
あの恐ろしい魔術に対抗するにも正体が分からなければ、どうにもらならない。ゴブリンの大呪術師ラギのもとに行き相談することにした。
三人はある夜、ドゥルマ家の城をそっと抜け出しラギの住む妖魔の森へ向かった。
ラギの山塞に行くとオークが三人をラギの書斎へと案内した。手ぶらの三人を見たラギは、内心少し落胆してた。ラギはいつも複数の陰謀やらなんやらに忙しくしており、手足となって働くエージェントのような人間をいつも必要としていた。前回の陰謀でオマケのようにゴンザとヨイチという傭兵を知った。おやこの二人戦場での働きはなかなかどうして見事ではないか、もしかしたら奇貨ではないかと、たまに使っているブライという盗賊崩れの傭兵をつけて試してみたのだ。
ラギは言った。
「お前ら手ぶらでやってくるとは、俺に借りを返す気がないのか?」
ヨイチはそれに答えた、実は想定外の事態が起こり仮面の男が、と説明した。
それを聞いたラギは少し考えて言った。
「その仮面の男はラクシャだな、東方の魔術師を東方ではその方に言う。それも古の邪神を崇拝する連中だろう。あの本は連中の信仰にも関係がある。大昔に滅びた文明があると言われているのだが、その文明が黎明期の頃に書かれたというものだ。」
ゴンザがあの魔術を封じなければ、手も足も出ないと言うとラギは答えて言った。
「方法はある。だが俺の呪術では無理だ。荒地のヘカテー山に三人の魔女が住んでいる、あの魔女なら秘術を知っているだろう。手土産にバジリスクの目玉でも持っていくが良い、機嫌が良くなる」
バジリスクは荒地の西にある砂漠に生息している巨大なトカゲである。その尾は蛇となっており、その蛇に噛まれたものは石になると言われている。ゴンザはその周辺の砂漠の蛮族の出身なので、バジリスクの事は知っていた。「あの辺りなら土地勘がある、任せてくれ」ゴンザは言った。
ゴンザは出発前に武器庫によった。バジリスクの尻尾をぶった斬るのに戦鎚では不便と考えた。そこで取り回しの良い小ぶりの(ゴンザにとっては)剣を一振りと、円形の盾(これも今まで使っていたものより小さいもの)を選んで持ち出した。これは黒い手形の兵士が手強わく苦戦したので、取り回しの良い武器に変えたのだ。
ゴンザが道を案内に砂漠に到着した。三人はバジリスクが生息している付近の集落を訪ねそこのものに宿を借りた。
まる2日かけて三人はバジリスクの足跡を探し追跡をした。そして大きな岩陰の下にいるバジリスクを見つけ出した。三人が考えた作戦はこうだった。ゴンザがスリングを使いバジリスクを怒らせおびき寄せる。二人は砂に潜って隠れバジリスクが現れたら背後から攻撃する。
ゴンザの放った石がバジリスクの頭に命中した、ゴンザに気がついたバジリスクは全速力でゴンザに向かってきた。ゴンザは上手くいったと逃げ始めた。そして首尾よく待ち伏せの場所までおびき寄せた。ヨイチとブライは砂から飛び出すと攻撃を開始した。
バジリスクの皮膚は硬く三人の攻撃をなかなか受け付けなかったが、ブライが尻尾を三日月刀でぶった斬り、ゴンザが柔らかい下腹を切り裂き、トドメをさした。
ゴンザはバジリスクの目玉を保存用の瓶に詰め、ついでに切り落とした尻尾の蛇も持っていくことにした。
三人は荒地を東へ東へと移動した。そしてヘカテー山に辿り着いた。荒涼とした山で植物も少ない。三人の魔女が住んでいるという洞窟はすぐに見つかった。中から漂う妖気がむせるように漂っている。
ゴンザは洞窟に向かい、たのもう!と声をかけた。直ぐに洞窟の奥から誰だ!と誰何する声が帰ってきた。声は老婆のものだ。
ヨイチが引き取り「ラギの配下の者です。お知恵を拝借にまいりました」と言った。
「中にはいれ」と声が返ってきた。
ヨイチはゴンザを先頭に促し、三人は洞窟に入った。
中には三人の老婆がいた。醜い老婆たちで、ひん曲がった背中、顔には深いシワがあり所々ヒゲも生えている。ひどい悪臭も漂っている。
ゴンザは挨拶をするとバジリスクの目ん玉を手渡した。魔女たちはそれを受け取り、まるで少女のように無邪気に喜び騒いでる。
ヨイチは東方のラクシャの魔術を打ち破る方法を教えくてくれと頼んだ。すると魔女の一人はお安い御用だと言う感じで言った。
「お前らの武器か何か何でも良い、一つ選んでよこせ。それにラクシャの魔術を防ぐまじないをかけてやろう」と言った。
ゴンザは円形の盾を渡した。魔女たちは一日ほどかけて儀式を行い盾にまじないをかけた。儀式が終わると魔女たちは盾を渡した。盾には三人が見たこともない文字が書かれていた。
「持っていくが良い。ラクシャたちは必ず自らの魔力の源となる物を身に付けているそれを壊すか盗むかすれば奴らの魔術は使えなくなる」魔女が言った。
去り際にヨイチは魔女たちに、この辺りにフォーンズ家の残党はいないかと尋ねた。ヨイチは旅の先々でフォーンズ家の残党の行方を尋ねていたのだ。
フォーンズ家の名前を聞いて、三人の魔女はクスクスと笑いを堪えきれないというように笑っている。そして三人に言った。
「さぁもう行くが良い」
Session2 三人は傭兵、その本はネクロノミコン
収録日:2018/3/11
使用ルール:ソード・ワールド
GM:山ノ下馳夫
ヨイチ:ミチヲ
ゴンザ:社長
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