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子ども3人って大変、だけど

バスの車内で思わず目にとまったその掲示物のこと、私はいまだに思い出すときがある。

それは、大人と同伴する幼児(6歳以下)のバス料金を図解した表で、状況をあらわしたピクトグラムが添えられていた。たとえば、「大人1人と同伴する幼児2人は無料」の脇にはこんなかんじのピクトグラム。

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(両手に幼児)

……この図からは、幼児を2人引率している大人の表情こそ読み取れないが、が!

「ちょ!待って。そっちは行かない!」
「くっく脱ご?椅子にあがるときはくっく脱ご?」
「って、どした?え?トイレ?え?トイレなの??了解、次でおりまーす」
「え?今度はどした?なあに?ママが?ボタン押したのダメだったの??」

ああーー!ごめんねごめんねーー(泣)

日々カオスな2児の母である当時の自分は、そのピクトグラムの状況にちょっとげんなりしてしまい、何気なく次のピクトグラムに目を移した。

「大人1人と同伴する幼児3人は、3人目から小児運賃がかかります」

という説明文の脇には、大人の横に一列にならんだ3人の子どもたち。...って、いやいやいや、これは!明らかに手が、手が足りない!!

揺れるバスの車内で、思いがけず3人子連れ親の心境を想像してしまい、なんだか、く、苦しい。周りに気がつかれないよう、ゆっくりと深呼吸をしてなんとか心を落ち着かせたのだった。


──あれから2年。私は3児の母となった。

わが家は車を所有していないため、移動はもっぱら公共交通機関を利用する。幸いなことに、私ひとりのときに3人を連れてバスに乗るという事態は、まだ避けられている。

が、徒歩圏内は子連れでうろうろしているため、すれ違うみなさまからぎょっとされることは日常茶飯事になった。あのとき、私が二度見したピクトグラムの実写版なので、まあしょうがない。驚かせてしまいすみません。

一方で、下町のおじちゃん、おばちゃんからは、朗らかに「頑張って」と声援をかけてもらえたり、いつもリポビタンDを買うコンビニのお兄さんから「お疲れ様です」と労いの言葉を頂けたりして、そのたび私はすこし救われている。

話はそれたけれど、幼児3人連れは分かりやすく「大変」にみえる。


現在、子どもたちは5歳・3歳・生後8ヶ月になった。
この半年で、末っ子赤ちゃんがぐいぐい成長し、真ん中っこ3歳のコミュニケーションの幅が広がったため、外出先でのにっちもさっちもいかずお手上げとなる場面はぐんと減った。

最近のワンオペ移動は、次の2パターンを運用している。

① 3歳→ベビーカー、5歳→徒歩(ベビーカーを掴ませる)、0歳→おんぶ
② 3歳と5歳→徒歩(両手で手をつなぐ)、0歳→おんぶ

楽なのはパターン①だけど、3歳は「ベビーカー、いや!」な日もまあまああるので、朝の状況によって各パターンを使い分けている。


秋晴れの昨日は、「歩いていく!」と主張する3歳の意見をとりいれ、パターン②で保育園へ向かった。

右手の5歳長女と左手の3歳長男は、私を挟んでくすくす笑いあっている。0歳末っ子は大好きなおんぶでスヤァと朝寝の時間。
なんて平和なんだろう。抜けるような晴天、暑くも寒くもない気候。清々しい朝9時の散歩道。ああ、育休万歳!
私自身、万事が上手くまわっている穏やかな今朝の状況に、気持ちが晴れ晴れするのを感じる。

と、なぜか急に息子の足がとまった。3歳児は、その場でしゃがみこんでしまった。

どうしたの?アリさんかな?息子の顔を覗きこむと、唇をむんと突き出して目が潤んでいる。え?さっきまで笑っていたので急にどした?やはり、乙女心と秋の空と子どもの機嫌。油断大敵だったか…。

「抱っこ?」

おそるおそる、そっと息子に確かめる。するとコクリと頷いた3歳児。
そっか、保育園が見えてきてちょっと甘えたくなっちゃったのかな?こっちにおいでと、体重13キロ持ち上げる。

さっきは書き忘れていたけれど、そういえば3人子連れ移動にはパターン③もあったのだ。

③ 0歳→おんぶ、3歳→抱っこ、5歳→徒歩

抱っことおんぶで両手がふさがってしまったため、娘には私の服の裾を掴むように言う。

と、さすが5歳のお姉さん。まったく弟たちは甘えっこでしょうがないよねという表情を浮かべて、私のスカートをきゅっと握りこう言った。

「ねぇママ。子ども3人って大変だよねぇ」

そう見上げる娘の、二つのくるんと愛らしい瞳と目が合った。
お姉さん然としたすました顔がなんとも可愛らしいけれど、子ども3人のなかには君もはいっているんじゃない?
やれやれという娘の表情に耐え切れず、私は思わず吹き出してしまった。

「そうだね、大変!でも、3人一緒にいるとママはとっても楽し!!」

反射的に娘にそう答えて気がついた。

この言葉はまごうことなき私の本音。そうだ、本音だ。

大変な日もそうでない日も、同じくらい愛おしくて楽しいって思っていること、ちゃんと娘に伝わるように彼女の眼をみてもう一回言った。

「3人といつも一緒にいて、ママはとっても楽しいし、とっても幸せ!」


でも。

君たち3人連れてバスに乗るような事態だけは、なんとしても避けたいっていうのも、私の本音。内緒だけど、ね。

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