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花を買うこと

2月の終わりに、サクラの枝を買った。

しばらくして蕾がはじけ、花が咲き、お雛さまをしまう頃には緑の葉っぱが顔をだした。花瓶のなかでくるくると表情をかえるサクラの枝に、心が踊る数週間だった。

思えば、子どもが産まれてから植物とは縁遠い生活だった。観葉植物は、6年間ベランダに出しっぱなしだし、たまに花を買ってみるも、すぐに枯らしてしまった。

けれどもこの数日、サクラの枝を眺めていて、花のある生活がしたいと急に、強く思った。

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数駅離れた土地に、お気に入りの花屋さんができた。

ふらっと立ち寄り自宅用に数本買って帰る、そんなお客さんで賑わう花屋さん。店先には、ワンコインで買える花や枝がいくつも並ぶ。ショーウインドーからケーキを選ぶようなワクワクが、胸いっぱいに広がる。

帰りは電車だということをすっかり忘れて、反射的に、チューリップとスイートピーを手に取った。


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来月、電車を乗り継ぎその町へ行く。用事は2歳息子の通院である。

仕事を調整して、まだ小さな子と電車で出かるこの定期的な予定は、ちょっとしんどい……と感じていた。

「来月はどんな花を買おうかな?」

「あの花屋にはどんな花があるだろう」

空になった花瓶を手にふと思い、しんどい予定がすこしだけ待ち遠しくなる。


花を買うこと。

知らない町が少し好きになる、私へのおまじないにしようと思った。

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