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モモ

「心を亡くす」と書いて
“忙しい” という漢字を作った人は
天才じゃないかと思う。
余裕がなくなると本当に心がしぬ。
ほんの些細なことに見向きもしなくなったり
ほんの些細なことなのにイライラしたり。
どうして私達は生き急いでしまうんだろう。

「人間には時間を感じとるために心というものがある。そして、もしその心が時間を感じとらないようなときには、その時間はないもおなじだ。」

ミヒャエル・エンデの「モモ」を読み終えた。
児童文学でありファンタジー、
でも見事に近代社会を風刺してる物語だった。
時間泥棒である灰色の男たちに
利益や効率こそが全て、それが豊かさだとそそのかされ
時間を奪われていく人間。
モモは大好きな人達を救うため時間を取り戻そうと奮闘する。
幸せってなんだろう
豊かさってなんだろう
見つめなおしたくなる本だった。
きっと、灰色の男たちはこの世にもそこかしこに存在してる。
私も心をなくしながら効率ばかりを考え
せっせと時間を貯蓄しているのかもしれない、
むしりとられていることに気付かずに。
そんなときはモモを思い出そう。

この物語の中には素敵なセリフがたくさんあった。
児童文学と言いながら、
いい大人の私にめちゃめちゃ響いてしまい
今こうしてnoteに綴っている。
その中でも、モモの友達ジジこと
ジロラモの言葉がとても痛かったなぁ。

「モモ、ひとつだけきみに言っておくけどね、人生でいちばん危険なことは、かなえられるはずのない夢が、かなえられてしまうことなんだよ。いずれにせよ、ぼくの場合はそうなんだ。ぼくにはもう夢がのこっていない。」

私はジジみたいに特に夢なんてないんだけど
良い思いをしてしまった後はどう生きたらいいんだろうと
虚しく寂しくなってしまう気持ちはよくわかる気がした。
終わりが怖い。
やり遂げてしまったあとは、なにをしたらいいんだろう、
そんなことをまず思った。
でもジジが苦しんでいるのは、
そういうことだけじゃないんだよね。
豊かさを見出せなくなってしまったからだ。
自分が自分じゃなくなってしまったからなのだ。
ジジはすごくおしゃべりが上手で、
色んな物語を人にきかせることがすきなひと。
働いて働いて有名なスターになりその夢をかなえられたけれど、
不本意な方法で成功してしまったことに自己嫌悪している。
消費されるようにただ話す。
聞く側も味わいもせず飲み込み、内容なんかすぐ忘れ
それでも次から次へと要求してくる。
楽しさとか、
大事にしていたものとか、
どっかいっちゃってジジはからっぽになってしまった。
かと言って抜け出す道を見出せない。
もう夢をみれなくなったし物語も話せなくなった。
金銭的にも社会的にも豊かになったけど
道化師のうそつきジロラモになってしまった。
モモにはそんな彼が病気であり
“死の病にむしばまれている” と見えたのは
まさにジジが 「心を亡くした」からなんだろう。 


手軽に消費する、
利益を求める、
便利さを大事にする、
私達が普段求めているものはそういったものだ。
見事に灰色の男に囚われてしまってる。
意味を見出すことや手間隙かけることは
人間らしいことだと思う。
やることいっぱいだけど、
道路掃除のベッポじいさんが言ってた。

「なあ、モモ、とっても長い道路を受け持つことがあるんだ。おそろしく長くて、これじゃとてもやりきれないと思ってしまう。

そこでせかせかと働き出す。どんどんスピードを上げてゆく。ときどき目を上げて見たのだが、いつ見ても残りの道路は減っていない。だからもっとすごい勢いで働きまくる。心配でたまらないのだ。そして、しまいに息が切れて動けなくなってしまう。でも、道路はまだまだ残っているのだ。こういうやり方はいかんのだ。

いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。

するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。

ひょっと気がついたときには、一歩一歩すすんできた道路がぜんぶおわっとる。どうやってやりとげたかは、じぶんでもわからんし、息もきれてない。

これがだいじなんだ。

このマインドよな。
コツコツ。1つ1つ。焦っちゃいかんな。

とりあえずなんかいっぱい書いちゃった。
まだまだ心では思ったことがいっぱいあるんだけど
頭でまとめられてないから寝よう。
またいい本が読めてうれしいな。









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