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つれづれなるまま

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昔のこと、今のこと。
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2016年3月の記事一覧

お座敷通勤列車のこと

ある日、仕事帰りに奮発して臨時の特急電車に乗ると、それはお座敷列車だった。

そんな馬鹿なことが、本当にあった。

普段は車通勤の私だが、その日は事情があって電車で通勤した。

帰りは普通電車の乗り継ぎが悪く、駅で随分待たなければならないところ、臨時の特急電車がくるという。

疲れてもいたので、時間を数百円で買うつもりで一駅分の特急券を買うことにした。

その特急は全席指定だという。自由席がないこ

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マンボウのさしみ

むかし、熱海の居酒屋でマンボウの刺身を食べさせてもらったことがある。

マンボウとはエイを縦にしたような、いかにもマンボウです、といった茫洋とした顔をした魚である。

居酒屋の店長の話しによると、このマンボウという魚は、時々海面に横になってぷかぷか浮かぶらしい。

マンボウなりに疲れることもあって、海中を逃れ海面で現実逃避でもするのだろうか。

それはどうだかわからないが、ともかくマンボウは体を海

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お台場のこと

東京のお台場ほど大きく変わった場所はないと思う。

20数年前のお台場は、売店が1軒あるだけで、本当になにもない所だった。

例えば、バイクに女の子を乗せて出かける場所としては、決して選ばない。男同士で、夜中行くところがなく、なんとなく来てしまう。そんな所だった。

時々、警察が改造車摘発のための検問をしていた。騒音と排気ガスの臭い漂う殺伐とした場所だった。

そんなお台場で、ある時、海の真ん中に

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さわやかな二人

ある日、バスに乗ると、大学前のバス停から高校生がたくさん乗ってきた。

大学見学会があったようだった。

そのうち、一人の男子高校生が、女子高校生に大学見学会の感想を尋ねたのをきっかけに会話がはじまった。

二人は初対面のようだった。

今どきの高校生がナンパか、生意気な。と私を含め、多くの乗客のおじさん、おばさんは思ったに違いない。

みんなが二人の話を無関心を装いながら注視していることがよくわ

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こわい話

はだかの女の人に、腕をつかまれ、アパートの部屋の中へ引きずり込まれそうになったことがある。

それはうれしい思い出ではなく、むしろ悪夢だった。

飲み会で、席を離れタバコを吸っている女性に声をかけたのがきっかけだった。

嫌なことを言う人がいるから、席にもどりたくない、という。

じゃあ、どこか別のところで飲みましょうかと、軽いつもりで言ったら、

タクシーを呼ばれ、隣の町まで連れていかれた。

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いいこと

なにかいいことありませんか、と隣のおじさんとよく話す。

別にいいことなんかありません。

でも、いいことってなんだろ。

こんなたわいもない日々を送れることがいいこと、かな。