暗黒物質が…………ない!
このぼんやりした光は何か。
6500万光年先にある、NGC 1053-DF2とカタログ化された銀河なのだ。なんとも薄ぼんやりした銀河だ。
あまりに薄くて、向こうにある銀河が透けて見える。
これだけ薄ぼんやりしているということは、銀河を構成している星同士が密集していなくて、まばらになっているからだ。
銀河の星が密集していると言っても、我々の天の川銀河で、太陽に一番近い恒星、アルファケンタウリまで、4.3光年ある。
普通の銀河の星々は、これくらい距離が離れている。それがあの壮大の銀河の輝きを作っている。
ということは、この銀河の星々が如何に、まばらであるか理解できると思う。
調べてみると、大きさは、天の川銀河より大きい。しかし、星の数は、250分の1くらいしかない。
それで、超拡散銀河として分類された。
へえ、そうか。
そんな銀河もあるのか………では、ことはすまなくなった。
この銀河の周りを回っている10個の球状星団の動きを測定することによって、この銀河の質量を計算した。
そうしたら、その質量は、この銀河に含まれる星の全質量に相当することがわかった。
いいじゃん、それで。と思うかもしれない。
そうはいかないのだ。
普通の銀河は、その銀河に含まれる星の質量だけでは、形を維持できないはずなのだ。端的に言えば、銀河に含まれる恒星等の物質だけでは、質量が足りず、星が銀河から飛び出してしまう計算になるのだ。
どいうことかというと、恒星等のいわゆる物質だけでは、銀河を構成している星を繋ぎ止めておく引力が足りないのだ。
紐の先に小石をくくりつけたものを振り回すことを想像してほしい。小石は、紐に結ばれたまま、自分を中心にぐるぐる回転する。
このとき、紐に力が加わっているのを感じるだろう。
この力は、遠心力によって、小石が紐から飛び出そうとしている力だ。
これを紐で、飛び出さないようにしている。
つまり、紐で引っ張っている。
この力が銀河の引力だと思えばいい。
引力は、質量があるものが存在することによって発生する。
普通の銀河は、この質量が、星等いわゆる物質の総量だけでは、形を維持するだけの引力が発生しないのだ。
そこで、現代の天文学では、銀河には、恒星等、物質以外の何か、目に見えない(観測できない)何かが、それも大量にあると考えている。これを暗黒物質という。
そうなのだ、この銀河には、この暗黒物質がない、あるいは、ほとんどないのだ、計算上。
一体どういうことだ。
これでは、今まで銀河の成り立ちとか活動を説明してきた、理論が通用しないではないか。
と天文学者たちは、考え込んでしまっているのである。
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