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退化と老化

人間の体力のピークは、20歳なんだよ。
と、主治医のK先生がおっしゃった。

20歳の時は、人間は遺伝的素質の全部を開花している。
人間は、20歳の時には、遺伝的特質をフル装備していると言ってもいい。

その後、衰えていくのだと。
アスリートの中には、20歳過ぎてからでも、能力を発揮する人がたくさんいるじゃない。それは、鍛えるから。

何も、しないと衰える。
なぜ衰えるかというと、退化するから。

自然は省エネ仕様でできている。
使わない機能は退化するようにできているのだ。

そもそも、人間の遺伝子は、原始人仕様のままになっている。原始人の過酷な生活に耐えられるようにできている。現代人の、安穏な生活には、オーバースペックな仕様なのだ。

だから、20歳をすぎると、自然の摂理が働いて、現代人の安穏な生活で、使わない機能(現代生活で使う必要がない)は、どんどん退化させることになる。

歳をとったから衰えたと言うものは、この退化が原因であることが多いのではなかろうかと思う。

いや、いや、鍛錬し続けている、アスリートでも、年齢がいくと衰えるじゃないかと言われるかもしれない。
全面的に否定するつもりはない。

しかし、アスリートは、特定の種目に特化して、つまり、体の特定の部位を鍛えている。
総合的に鍛えているつもりでも、使わない部分、鍛えていない部分があると思う。

人間の体は、有機的関係を持って作用するようにできている。体の一部が強くても、他の部分が弱ければ、結果的にパホーマンスは、落ちる。

簡単な例を挙げると、10Kgのバーベルを持ち上げる。
普通の成年男子なら、持ち上がるだろう。

今度は、水中(水に浮かんで)で持ち上げてみる。
まず、持ち上げられないだろう。

なぜなら、足が地面についてないからだ。
物を持ち上げるときは、手だけでなく足や他の部位も使っているのだ。

特定の部位だけ鍛えても、他の部位が退化すれば、総合力は落ちてくる。これが、原因なのではないかと思う。

現に、イチロウ選手や 室伏広治選手のような選手生命の長い人のトレーニングを見てみると、一見、野球やハンマー投げに関係なさそうな所も徹底的に鍛え上げている。

しかし、現実に老化ということがあるではないか。
先に述べたように、全面的に否定はしない。
だが、人は老化しない、老化は病であるという説がある。

全部精読したわけではないので、自信を持って言えるわけではないが、正しいように思う。

仮に、正しくなくても、従来老化現象だと言われてきたことのかなりの部分が、退化であるように思う。

老化は、言ってみれば素材そのものの変質である。
退化は、機能の低下である。

そうであるなら、対処方法はある。
本来持っている能力をフルに使えばいい、鍛えればいいのだ。

ただこれは、難しい。本質的に難しい。
大変複雑な手順を踏まなければならないとか、ものすごいハードなトレーニングが必要で、難しいというのではない。

本来持っている能力を目一杯使い続けるだけだ。
難しいわけがない。

しかし、本質的で、それゆえ強大な障害がある。
それは、本能だ。本能は、省エネを好む。いや、好むというような生易しいものではない。むしろ、強いるというべきだ。

本能は楽(エネルギー消費小)を快とし、非楽(エネルギー消費大)を苦とする。

本能は正しい。
問題は、その本能が、原始人仕様なことだ。

だから、我々現代人は、この本能に抗わなければならない。
これは、終わりのない戦いになる。
相手は、何百万年の歴戦の強者だ。絶対に屈しない。

命ある限り、この強者に挑み続けなければならない。
真人間として、生きようとすることは、そういうことなのだと思う。









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