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100Km 走破顛末記

ちょっと運動量が足りないと思って、ロードバイクでの走行時間を普段の1時間から2時間に伸ばしてみた。

出発は、朝8時少し前。2時間走って帰りは10時。午前中に帰って、それから一仕事できるという目算だった。

さて、2時間となると普段の2倍の距離を走らなければならない。単純に考えれば、いつものコースを2周すればいい。
それでもいいが、ちょっと面白みにかける。

ということで、折り返し地点を遠くにすることにした。
ところが順調に走っているうちに、トイレに行きたくなった。

車の通りが比較的多い道路なので、路肩で・・・というわけにもいかず、かと言ってコンビニもない。困った。

ひらめいた。

途中で右に曲がると、その先に公園があり、そこにはトイレがあったはずだ!

よし進路変更。

もよおしていながら、自転車を漕ぐのは辛い。
あるはずの公園までなかなか辿り着かない。
このままでは我慢できなくなってパンツの中に・・・焦る!

ようやく公園に辿り着き、ことなきを得て一息ついた。

さて、来た道を帰ろうかと思った時に、

まてよ、


この道を真っ直ぐ行くと手取川(県内で一番大きい河川)にぶち当たる。

どうせなら、手取川の堤防のサイクリング道路を下り、海岸まで行き、そこから海岸沿いの道を走って帰るというコースにした方が、おもしろくないかい。距離は伸びるが、まあ大したことはない。天気もいい。

よし!

手取川にかかる橋までたどり着いた。

が、


堤防上の道路に上る道が見つからない。橋の周辺にあってもいい様なものだがない。

そこで、川に平行に走っている農道を上流に向かって走り(下流じゃなく上流に向かうんか)、堤防に上がる道を探したがなかなか見つからない。空を見上げる雲と太陽のコラボが面白いことになっていた。

全天が曇っている様に見えるかもしれないが、雲があるのはここだけ

ちょっと、ビビった。

これは瑞兆なのか、凶兆なのか。

凶兆なら、ここで引き返せということだろうか。
自分の心に聞いてみたら、もういいんじゃない、という怠心があった。

ということは、これは瑞兆とし、進めと解釈すべし。

いざ、前に!


なんとか、堤防に上がる道を見つけた。
田園風景の中、そこで一服やっていると、ロードバイクに乗った人が、何人も私が下って行こうと考えていた川下から走ってくる。

ほう、


ここはロードバイカーに人気のところなんだな、とか考えているうちに、この堤防のサイクリングロード(河川管理用の道なんだろうけど)は、どこまで続いているのか気になり出した。

ちょっと行ってみるか。
ここで心の声。
(予定よりだいぶ距離が伸びるぞ。大丈夫か。)
なに、帰りは川下、下りだ、鼻歌もんだわい。

上流に向かって走り続けると、川が山際から平地に出てくるところに橋があり、橋桁が堤防の上に乗っかっていて、道が途切れている。

ここまでか。



と思ったが、少し戻ったところに堤防から下に続く道があることに気づいた。その道が橋から続く道の下を通るトンネルに通じている。

トンネルの向こうに道が見える。
もしかしたら、あの道がまた上流に向かう堤防に続くのかもしれない。

ここまで来たんだ、決着をつけねば。

行ってみよう。


トンネルを抜けると、そこは曲がりくねった谷沿いの道。
そこに、『手取キャニオンロード』の看板。

手取キャニオンロードといえば、旧北陸鉄道金名線の廃線敷地を利用して整備された、県内有数のサイクリングロードだ。

金名線(きんめいせん)
金沢と名古屋を結ぶ私鉄構想があったらしい。

話には聞いて、いつか走ってみたいと思っていた道ではないか!


そうか、ここが手取キャニオンロードか!
と興奮してきた。

ただし、山道で距離も自宅からだと、往復100Kmは超えそう。だから、いつかで、まだ挑戦するのは時期尚早くらいに考えていた。そもそも道自体、大体の位置しか調べていなかった。

それが、今、目の前にある。


さあどうする・・・

時期至るには、二種類ある。


一つは、準備が整い、まさに期、熟した時
もう一つは、目の前に転がっている時だ

時期を失する者に、未来はない。

Go! Go !  Go!

道を進むと川は、谷川になっていた。

あの川幅の広い手取川が、こんな狭い谷川に。
もっとも、写真でもわかるように、川面からかなり上まで木が生えていない。

増水時には、そこら辺まで水でいっぱいになるということだろうから、それを想像すると、ちょっと怖くなる程だ。

橋を渡り、しばらく走ると、

おお! 自転車専用道路。


旧私鉄の線路敷きを自転車道に転用しただけあって、山間の道だが、急激なアップダウンはない。

逆に言えば、緩やかな上り勾配が、延々と続く感じ。
それでも、途中、線路敷きから、外れたと思えるところがあり、そこは、そこそこのアップダウン。

しかし、自転車から降りて歩かなければならないほどではない。なかなか、快適な自転車専用道路だと思った。

そうやって、走っているうちに、盆地のようなとこに出た。
両脇を山に囲まれているが、周りには水田が広がる。
山間部に平地があるということは、昔、この辺りを手取川が流れていたか、氾濫原だったということか、なんて考えた。
(もっとしっかり地学を勉強しておくべきだったなあ)

ここを昔電車が走っていたのか

と言っても、ロードバイクに乗っている。
ロードバイクに乗っていると、ついついスピードを出したくなる。つまりは、体力の許す限りの力で走らせることになる。

それに、前傾姿勢だから、必然的に視線は近くの前方道路に向き、ゆっくり遠くの景色を眺め周囲の風景を堪能してものを考えるとかする余裕はあまりない。

そうやって走っているうちに、なんとまたトイレに行きたくなってきた。

またか。


私は、トイレが近いとかない。しかし、自転車に乗るときは、こまめに水分を取ることにしている。脱水症状に陥らないようにするためだ。

歳をとると脱水症状になりやすいという。
私は脱水症状の経験ないが、なったらふらついたりするという。自転車に乗っている時に脱水症状が出たら、非常に危険だ。

まあ、そんなわけで、給水には注意しているのだが、もう少し加減を覚える必要があるなと思っている。

この自転車専用道路、なかなか人気のようで、かなり頻繁にライダーに出会う。

https://www.urara-hakusanbito.com/spot/detail_1215.html

ほとんどは、向かい側から、つまり帰り道の人だが、たまに私を追い抜いて行く人もいる。
私もそんなにチンタラ走っているつもりはないが、やはり一人前になるには、まだまだ修行が要りそうだ。

それにしても、トイレ。


困った。
途中で見つけたサイクリング道路の案内図を見ると、この先10kmほどにバードハミング鳥越という施設がある。

名前からすると、鳥類に関する博物館か動物園だろうか。
そこならトイレくらいあるだろう。
しかし、10Kmだと、時間にして30分くらいだろう。

繰り返しになるが、もようしながら自転車を漕ぐのは辛い。
10kmの距離が、20km、いや無限に思えてくる。

引き返したくなった。

しかし、後ろに解はない。


行くしかない。

そうしてやっとバードハミング鳥越を案内する看板を道路上に見つけ、その方向に向かって走った。

なんと、・・・・閉まっている。

今時間は、10時ちょっと前だぞ。
どういうことだ、施設自体が閉鎖になったのかとも思ったがそんな気配はない。

一体どうなっている、と周辺を走って見たが、屋外トイレも見つからない。

後で調べたら、バードハミング鳥越という名前から想像したような鳥類に関する施設ではなく、温泉、バーキュー、食堂等の複合レジャー施設で、開館時間は、12〜21時だそうだ(^^;

サイクリングロードから、横道に外れて、すでに10数分経っている。

どうする。

・・・後ろに解はない。

There's no choice but to go!

流石に、自転車道の終点、瀬女にはトイレくらいあるだろう。確か、20km位先のはずだ。

自転車道に戻り、走る。走る。

途中、観光名所の看板があったが、バードハミング鳥越のことがトラウマになって、もし寄り道をしてトイレがなかったら苦痛の時間が伸びるだけと無視した。

必死に走った。
しかし、20kmは長い。
初めて道だから、どこまで進んだのか全く見当がつかない。

後から考えたら自転車についている距離メータをみれば、あとどの程度かわかったはずだけど、もはやそんなことも思い浮かばない。

走る。
脂汗が出てくる。悪寒に似た感覚が背筋を走る。

これは、体に悪い。絶対悪い!

早急に対応策を!

自転車道の左側に小さな林が見えた。
その林に沿って、脇道が続いているのを発見した。

脇道に突進。道の側に植えていた木に(なんの木か全く覚えてない)適当に自転車を立てかけ(倒れてもやむなし!)、果たした。・・・というわけにはいかない。

ロードバイク用のパンツ(ズボン)は、尻が痛くならないように、下着、その上にパット入りのパンツ、そして、パンツ(ズボン)と三重重ねだ。

当然、チャックなんかついてない。(なぜなんだろう?)
用を足すには、大便をするように尻を全部出すようにズボンを脱ぐか、少なくとも半ケツ状態にならないといけない。

パンツは全て紐で結ぶタイプだ。
危急存亡の時期に・・・紐が、かっ、絡まる!

真剣に水分補給の仕方を考えよう。

さて最終地を目指す。
もう、あとどれくらいの距離かとか、どれくらい時間がかかるかとか考えない。
脚が持つかとか、帰りは大丈夫だろうかとか、時間の余裕は、なんて全て異世界の話。

ここまで来たら、「到達」の二字以外存在しない。


続く



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