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銀河中心の電波アーク(Radio Arc)


https://apod.nasa.gov/apod/ap230403.html

天の川銀河の中心部は、普通の望遠鏡では見ることができない。なぜなら、中心部と我々の地球の間に、チリやガスが大量にあって、それに光が遮られるからだ。

しかし、チリやガスの影響を受けない電波でなら見ることができる。つまり、銀河の中心から、普通の光は届かないが電波は届いているということだ。

そこで、南アフリカに最大8Kmの基線を持つ64個の電波望遠鏡を設置したのが、MeerKATと呼ばれるものだ。

https://www.sarao.ac.za/

この電波望遠鏡で天の川銀河の中心部を観察するとこうなっている。
銀河の中心部だから、さぞかしすごいことになっているだろうと思ったら、案の定凄まじい光景だ。

画面右上から左下にいくつもの筋になって連なっている部分は、銀河中心電波アーク(Galactic Radio Arc)と呼ばれるところで、先は銀河平面を指している。

電波アーク(Radio Arc)は、アーチ(Arches)と呼ばれる奇妙なカーブを描くフィラメントによって、銀河中心と結び付けられている。

右下に明るく輝いているのは、銀河の中心にある巨大ブラックホール Sagitarius A*(いて座Aスター)の降着円盤に落ち込む物質が電磁波を放っているところ。

なかなか凄まじい。

降着円盤
恒星やブラックホールなどの天体に周囲からガスが落ち込む場合、角運動量をもっているガスは主星にはまっすぐに落ちず、主星の周りにリングを形成し、 それが広がって円盤になる。これを降着円盤という。 質量、速度、角速度とも、中心に近づくほど大きく、角運動量は逆に外側ほど大きい。内側ほど速く回っている回転円盤において粘性が働くと、内側のリングが外側のリングに対し回転方向にトルクを及ぼす。これで角運動量は内から外へと輸送される。角運動量を失ったガスは遠心力が減少するため、内側へと降着する。粘性はまた(回転運動の)運動エネルギーを熱エネルギーに転化させて円盤ガスを加熱する。こうして熱せられたガスが電磁波を出す。

天文学辞典

このSagitarius A*(いて座Aスター)というブラックホール、太陽の400万倍というとんでもない質量がある。

どうして、それが分かったかというと、いて座A*周囲の恒星の運動を10年程度継続的に観測した結果、多くの恒星がいて座A*の周囲を公転していることがわかり、その運動から、計算して分かった。

ちなみに、これらの恒星の運動をそれぞれ独立に観測した、ドイツのマックス・プランク研究所のゲンツェル(Reinhard Genzel)とアメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校のゲーズ(Andrea Ghez)は、ブラックホールの理論的研究を行ったイギリスオックスフォード大学の名誉教授であるペンローズ(Roger Penrose)と共に2020年のノーベル物理学賞を受賞したのだ。

天文学辞典


話を戻して、このアークやアーチはどの様にしてできているのだろうか。
端的に言えば、この様なアークやアーチが見える(電波で)ということは、ここから、電波が出ているということだ。

つまりは、アークやアーチ状に電波を出す物質が存在しているということになる。

一つの仮説は、アークやアーチの形状は、一定の磁場の線に沿って流れる高温のプラズマを含んでいるからだとするものがある。

プラズマというのは、原子が電離状態になったものだ。つまり電気を帯びている。電気を帯びているものは、磁力の影響を受ける。フレミングの法則として高校で習うやつだ。

重力の影響なら、右下のブラックホールSagitarius A*(いて座Aスター)を中心とした、同心円等の形になるだろうことを思えば、重力でこの様な形になっているとは、考えにくいので、この仮説には説得力があると思う。

https://apod.nasa.gov/apod/ap220202.html

上の写真は、MeerKATで月の4倍角広さの銀河中心を撮ったもの。接頭子にSgrとあるものが多いが、これは銀河中心が、いて座(Sagittarius)方向にあるからだ。

普段可視光線で見えるものとかなり違って、激しく活動している姿がある。

私は、最初にこの画像を見た時、禍々しさの様なものさえ感じたものだ。

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