僕は家に帰ってこれた
2017年5月6日、ついにうちの家にも結婚式がやってきた。
三人いる姉の中で、一番下の姉が今回結婚することになったのだ。
振り返れば昨年の12月、突然姉から連絡があり、
「結婚することになった」
と連絡があった。
僕と家族が疎遠になってから、しばらく経っていたころの急な連絡だった。
お見合いから数ヶ月で結婚を決めた、いわば“運命の結婚”というやつらしい。
義理の兄は、背は少し小さいが顔は伊原剛志似。
仕事にまっすぐで、それ以外には少し無頓着だけど、今までに会ったことがないレベルに優しい男だ。
彼のエピソードを書き始めるとキリがないので、また次の機会に書き残すとする。
結婚式の前々日に、僕は実家に帰ってきた。
家族で最後の食事にと、近所の『うかい亭』へいく約束だったのだ。
数年ぶりに行った『うかい亭』は少しも変わっておらず、綺麗で小洒落たお店だった。
昔に比べれば会話も弾んでいなかったけど、店も変わっていなかったし、それぞれ何か想うことはあったんじゃないかなぁと思う。
そうして団欒の時間は過ぎ、メインディッシュが終わった頃に、
「もうガーリックライスはやってないの?」
と父さんが言った。
そういえば昔「うまいうまい!」だなんて、最後に出るガーリックライスを皆ではしゃいで食べてたことを思い出した。
「もちろんありますけど、どうしますか?食べますか?」
と答えたシェフに、父さんは少し考えた様子を見せて、
「今日は…やめておくか。」
と答えた。
その時ちょっと、寂しそうだった父さんに、
みんな「そうだね」なんて相槌をうっていた。
クセがさらに強くなった一番上の姉、
ちょっと自を出すようになった二番目の姉、
前よりしっかり者になった三番目の姉と、
心を閉ざし、無口になった僕。
そして、仲が悪くなった、父さんと母さん。
昔はよく6人で誰かの誕生日を祝いに、色んなレストランで食事をしていたのだけれど、今はもうそれもなくなった。
ちょっとずつ、ちょっとずつ時間は経って、もう十数年。
レストランから出て、皆バラバラと歩き始めた。
家につくと皆、自室へ帰っていった。
僕は少し、面倒臭い、と思っていて。
ちょっと家族が、煩わしい、と思っていて。
「もうどうでもいい」
そう思っていた。
正直、そう思っていた。
だけど僕はまた家に帰ってきた。
結婚式がなかったら、僕はもう当分家に帰るつもりもなかったけど。
僕は家に帰ってこれた。
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