HYPNOSIS MIC 市場開拓の道のり:後半

ゆんでございます。
前半でざっくり作品紹介と特徴の紹介をしたのでここからはマーケティングの観点からヒプノシスマイクが巨大コンテンツになった理由を考察します。
といえどかなり隙だらけ穴だらけの話なのはご容赦くださいね。

11. 競合コンテンツ
今回比較を行うコンテンツは4つです。自分が聞いたことがあるコンテンツでないと比較できないと思ったので、競合コンテンツ選びは主観しかなかったですがご容赦ください。

①うたの☆プリンスさまっ♪

2010年にプレステ用ゲーム第一作をリリース以来、CD・アニメ等メディアミックス展開を行う女性向けコンテンツです。
芸能高校に入学したアイドル志望の学生たちが世界中の人々に影響を与えるアイドルを目指し奮闘するストーリーです。
10年ほど前に始まったコンテンツではありますが、今でも新曲が出たりライブが開催されたりと勢いが衰えない人気コンテンツです。

②あんさんぶるスターズ

2015年にスマートフォン向けアプリゲームとして始動後、CD・アニメ・舞台などのメディアミックス展開を行っている女性向けコンテンツです。
ストーリーは大きく分けて2種類あり、2019年までのメインストーリー【あんさんぶるスターズ!】と、2019年に新ユニットが加わり2020年のメインストーリーとなった【あんさんぶるスターズ!!】があります。

【あんさんぶるスターズ!】
理不尽な支配で秩序を保つ学院の方針に疑問を抱くアイドル志望の革命児4人が、クリーンな学院運営を目指して学院改革に挑むサクセスストーリーです。
【あんさんぶるスターズ!!】
アイドルを目指して故郷を出た兄を故郷に連れ帰るため、自身もアイドルになろうと上京しユニットを組んだものの、解雇の危機に直面する新ユニットのメンバーを中心に展開するアイドル達のサクセスストーリーです。

このコンテンツもかなり勢いがあるコンテンツです。コンテンツ開始から5年ですが、新ユニットも加わり、リズムゲームの配信も始まるなど現在もコンテンツがぐんぐん拡大中!

③アイドリッシュセブン

2015年にスマートフォン向けアプリゲームとしてリリース以降、CD・アニメ等のメディアミックス展開を行っている女性向けコンテンツです。
性格も個性もバラバラのアイドル7人がグループを結成し、華やかながら厳しいアイドルの世界でその頂点を目指し邁進するストーリーです。
リーゼの1DAYヘアモンスターというヘアチョーク?があるんですが、コラボしてアンバサダーをやっていたことがあるみたいです。コラボと聞くとやはり人気を感じますね。

④A3!

2017年にスマートフォン向けアプリゲームとしてリリースされ、CD・アニメ・舞台等のメディアミックス展開を行っている女性向けコンテンツです。
取り壊し寸前の劇場を救うため、総監督が集めたワケアリの団員たちが芝居の稽古と真摯に向き合い劇団員同士の心を通わせ、劇団存続のために奮闘するストーリーです。
こちらはJILL STUARTとのコラボリップを出してましたね、すぐなくなっちゃった印象で、女性からの人気をひしひしと感じます。

⑤まとめ
以上の4つのコンテンツの調査から、声優がキャラクターを通してラップをするコンテンツがないこと、ラップでバトルを行うストーリー展開のコンテンツがないこと、実体がない状態で始動したコンテンツがないこと、がわかります。
(ないわけではないのかもしれませんが、少なくとも今回の競合コンテンツ比較ではなかったということで……。)
ちょっと上げるだけでもこんなに競合コンテンツがある中で、始動当時実態がなかったヒプノシスマイクがどのような戦略をとって市場を開拓し、コンテンツを拡大させてきたのでしょうか?

12. ヒプノシスマイクの市場戦略
12.1 ブルーオーシャン戦略

INSEAD(欧州経営大学)教授のW・チャン・キムとレネ・モボルギュが著したビジネス書と、その中で述べられている経営戦略論です。
価値維新により創出される非競争市場をブルーオーシャンと呼びます。顧客にとって価値を高めると同時に低コストを実現する戦略で、強豪との差別化を図ることが可能になります。
また、新たな価値を創造し、新たな顧客の獲得が目的の戦略であるため、新製品などを市場に根付かせ、認知度を高めるには有効な戦略です。

12.2 ヒプノシスマイクのブルーオーシャン戦略
ヒプノシスマイクの戦略については、コンテンツ自体の特徴のほかに、市場環境を考慮する必要があります。

 声優がキャラクターを通してCD等をリリースするコンテンツの市場には、2つの捉え方があると考えました。
 1つは声優コンテンツとしての捉え方です。2017年の段階で、声優がキャラクターを通してCD等をリリースするコンテンツは既に存在していましたが、ヒプノシスマイクの競合となる男性声優を起用したコンテンツも先述の通り多く存在しているため、この捉え方では市場はレッドオーシャン(競争が激しい)市場だといえます。もう1つは、声優コンテンツの中の音楽ジャンルとしての捉え方です。先述の通りヒプノシスマイクの特徴としてラップを扱うという点があります。これまで類似のコンテンツはアイドルソングのような曲が多く、ラップを扱うコンテンツはなかったため、声優が本格的なラップをするという点では市場はブルーオーシャン市場だといえます。
 ヒプノシスマイクは、ブルーオーシャン市場を選択して戦うために、本格的にラップを追求し、ヒップホップシーンを牽引する名立たるラッパーやトラックメーカーから楽曲提供を受けているのだと推測しました。
 これにより、これまで声優を起用したコンテンツがターゲットとしてきたアニメファンや声優ファンのほかに、ヒップホップやラップに関心のある層を中心にファンとして取り込むことに成功しているのではないかと思います。

12.3 現在のヒプノシスマイク

 2020年まで、ラップを扱う類似コンテンツがなく、市場は2年以上ブルーオーシャンの状態を保っていたのですが、2020年2月に、avexがラップを扱うコンテンツとしてParadox Liveで市場に参入してきました。

 なぜわざわざavexは、既にヒプノシスマイクが成功しているこの市場に参入したのか。
 結論から言うと成功すると思っているからだと思います。
 先ほどの表にあるレッドオーシャン市場ですが、簡単に言うと競合だらけの市場ということになりますが、レッドオーシャン市場で強いのは、市場シェアが大きい企業や資本力のある企業と言われます。
 今回の場合、市場シェアが大きい企業=ヒプノシスマイク、資本力がある企業=パラドックスライブ となります。
つまり、まだ競合がヒプノシスマイクしかいない今ならば、自社のコンテンツもシェアを獲得できる可能性が高いという勝算があっての参入であると思います。
 パラライも起用した声優、楽曲提供、イラストレーターともに豪華で音楽としての質もかなり高いので、好きな声優がいる方、楽曲提供に好きなアーティストがいる方、ヒップホップが好きな方、ぜひ聞いてみてください!
 
ヒプノシスマイクとパラドックスライブの比較については以下の表をご覧ください。

13. リスクマネジメント
13.1 リスクマネジメント

企業経営において損失を生じるリスクを把握し、その影響を事前に回避もしくは事後に最小化する対策を講じる。

13.2 ヒプノシスマイクのリスクマネジメント
 ヒプノシスマイクのコンテンツ立ち上げにおいて、最も大きなリスクはコストであると考えられます。これまでに類を見ないジャンルに踏み込むため需要予測が難しく、最初から巨額投資をすることはできません。
 ゲームは開発にかかる費用が多く、ブルーオーシャン市場の利益で回収できるか予測が難しいため、かなりリスクが高い事業といえます。アニメや映画は、原作と制作が別の会社である場合もあり、制作を依頼するための費用が高いため、ゲームと同じようにリスクが高いです。
 それに比べて、ヒプノシスマイクは始動当初はYouTubeの動画のみであり、ゲームやアニメよりは比較的制作費用が安いです。また、動画の再生回数を見ることである程度の需要の予測が可能になります。
 ヒプノシスマイクは、2019年5月に漫画になるまで、ドラマトラックのみでストーリーが展開されていたこともあり、他のメディアミックス事業に比べて、音声のみの収録のため映像作品などより費用は掛かっていないと予想できます。
 ブルーオーシャン市場で戦うヒプノシスマイクは、コストに関するリスクマネジメントをかなり意識していたと考えられます。

13.3 現在のヒプノシスマイク
 2017年にコンテンツ始動から2019年の漫画化まで、YouTubeとCDのみで楽曲発表とストーリー展開を行うことで市場を開拓したヒプノシスマイクは、満を持して2019年に漫画、舞台化、2020年にゲーム、アニメ化しています。今後も漫画の連載継続、舞台・アニメの継続が決定しています。

14. 考察結果
①ヒプノシスマイクはどのような市場戦略をとったのか?
 ブルーオーシャン戦略で、これまでの声優コンテンツと異なるコンテンツをもって従来とは異なる層へ向けてコンテンツを展開した。
②実態のない状態で始動したコンテンツがなぜ40000万人規模の会場で
 ライブができる巨大コンテンツに成長したのか?
 従来のアニメファン、声優ファンに加え、ヒップホップやラップに関心のある層をファンに取り込むことに成功した。
 リスクマネジメントにより、メディアミックス展開をうまく行った。

15. 参考資料
・池上重輔、川上智子「ダイナミック・ブルー・オーシャン戦略―マーケティングと経営戦略論の邂逅―」、Japan Marketing Academy、2017
・井上邦夫「リスクマネジメントと危機管理:コミュニケーションの視点から」、経営論集、2015
・HYPNOSIS MIC Division Rap Battle「What’s HYPNOSIS MIC」
 (https://hypnosismic.com/about/) 2020年12月24日閲覧
・うたのプリンスさまっ♪公式ウェブサイト(https://www.utapri.com/) 2020年
 12月30日閲覧
・ENSEMBLE STARS!!公式ウェブサイト(https://ensemble-stars.jp/) 
 2020年12月30日閲覧
・TVアニメあんさんぶるスターズ!「STORY」
 (https://ensemblestars-anime.com/story/introduction) 2020年12月30日閲覧
・【公式】アイドリッシュセブン(https://idolish7.com/) 2020年12月30日閲覧
・TVアニメ アイドリッシュセブン「STORY」(https://idolish7.com/aninana/)   
 2020年12月30日閲覧
・【公式】A3!( https://www.a3-liber.jp/) 2020年12月30日閲覧
・YouTube ヒプノシスマイクDivision All Stars「ヒプノシスマイク-Division 
Rap Battle-+」
 (https://www.youtube.com/watch?v=vnRgJ5dJ4ac) 2020年12月30日閲覧
・Paradox Live公式サイト(https://paradoxlive.jp/) 2020年12月30日閲覧

はい!こんな感じです!
再三言いますが隙だらけ穴だらけのばぶばぶ考察なので……ちゃんと経営学を専攻して勉強した方には見てほしくないクオリティなんですけど、こんな世界もあるんだな、こんな見方もあるんだな、程度に生温かい目で見ていただけたら幸いです。

後半も読んでいただいてありがとうございました!


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