『Nightwork』

売上冊数が世界で一番多い作家と聞くノーラ・ロバーツ作品です。彼女の作品が面白くてオススメだよと、大学時代に友人が薦めてくれましたが、当時の興味はスリラーオンリーだったのでごめんなさいでした。
『Nightwork』(邦題『夜に心を奪われて』)のKindle版が割引されていたので買って読みました。主人公はロマンスではマイナー派で、男性です。ルパンのように盗みや変装がうまく、自分の学歴や経歴を偽って生きてきた男性です。最近のトレンドでは主流派ではない三人称視点(third-person point of view)で書かれてるからか、読んでいて背筋が伸びるような気がします。
展開としては前半がルパン三世を見ているような感覚で面白かったです。後半四分の一が物事がうまく捗りすぎて若干あっけない感じはしましたが、楽しく読了できたと思います。
ロマンス感は弱め。幸薄かったヒーローが、ある事情から別れたヒロインと再会してからは少し増しましたが、サスペンス要素のほうが勝っていました。

作品の中で興味深かったのは、日本語の葛(kudzu)や根付(netsuke)が出てきたことです。北米でそんなに日常的な単語なのか気になったので調べてみました。根付は、主人公が盗みに入った場所で目にした芸術品で、日本の芸術に興味のない北米人がご存じなくても不思議はない単語ですが…葛は?
オンラインのEnglish dictionaryと英和辞書を見てみましょう。

kudzu: a fast-growing Asian vine (Pueraria lobata) of the legume family that is used for forage and erosion control and is often a serious weed in the southeastern U.S.
大体の意味はこんな感じでしょうか↓
葛:アジアの成長の速いマメ科のつる植物(Pueraria lobata)。飼料や土壌侵食制御に利用されるが、米国南東部では厄介(深刻)な雑草となることが多い。

Merriam-Webster Dictionary

kudzu《植物》〈日本語〉〔米国南東部では侵略的外来種として増え過ぎてしまい、深刻な問題となっている(2013年現在)。〕

アルク『英辞郎』

続けて調べてみると、kudzuは北米のみならず世界的に認知度の高い名前であることがわかりました。ただ、葛の今の立ち位置を考えると日本語名が微妙な気分です。

昔、子どもの幼稚園で山野草を食べる行事に参加したときに葛の芽の天ぷらやタンポポの葉のバター炒め、スズメノエンドウの実を具にしたお味噌汁等々を食べさせていただきました。
特に葛の芽が美味しくて、その後も郊外に住んでいた間は、近くの葛の芽を採集して何度か作りました。懐かしい思い出です。

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