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ちょっと変わったオカン

私の義母(夫の母・以下オカン)は、私から見るとちょっと変わっています。とにかく正直すぎるのです。

私たちが会話をする時、頭に浮かんだことをそのまま口にすると相手から誤解を受けたり嫌な感情を抱かれたりしそうだと判断し、別の言葉や表現に置き換えて話すことがあります。

しかし、オカンからはまるでそのような気遣いが感じられません。すべての言葉を直球で投げてきます。それを笑えたり笑えなかったり…。それでもやっぱり憎めないオカンの、いくつかのエピソードを紹介します。

※私の話の中での「おかあさん」はどちらの母か区別がつかないので、義母のことは「オカン」と言って欲しいと夫に頼まれ、わが家ではそうしています。

赤ちゃんいなくなったから、もう帰るわ

オカンにとって初孫である長女を出産した時のこと。逆子が原因の予定帝王切開での里帰り出産でした。控室でオカンは義父と私の両親と夫の5人でその時を待ち、無事に産まれた長女は看護師さんにキレイに洗っていただいてから一旦私の元へ、そして皆へとお披露目されます。私は切開部の縫合などの処置が終わってから部屋へと運ばれました。

私の両親にはすでに孫がいましたが、オカンたちにとっては初孫とあって、長女はまるでアイドル。顔のパーツが誰々に似ているだとか言いながら、赤ちゃんはずっと見ていても全く飽きることがないので、皆がごきげんに部屋で長女を観察し、誕生を喜び合っていました。

さて。夕方になり、看護師さんが長女を迎えに来られました。夜はしっかりお母さんに睡眠をとってもらうという産院の方針で、退院するまでは夜は新生児室にて赤ちゃんのお世話をしていただけるのです。朝になったらまた看護師さんが赤ちゃんを部屋まで連れてきてくれて、日中はお母さんが赤ちゃんの世話をする、というシステムです。ちなみに、生まれたての長女にはまだ名前がありません。

オカン「あ〜、赤ちゃん。またね〜。」
(ドアが閉まる)
「…ほな、赤ちゃんいなくなったから、もう帰るわ」

え!? わかりやすっ!
…私、今日手術したのよ?麻酔も切れてきていて、とても痛いよ?関心事は赤ちゃんだけ?…

私はこの後、長女が1ヶ月検診を受けるまで実家でお世話になったのですが、夫はじつに毎週末、車で片道約3時間かけて私たちに会いに来てくれました。そのうちの一度は、義父も一緒でした。

開口一番、
「ようだいさん、本当にお疲れさまだったね」

涙が出ました。私のあの日のモヤモヤは義父のその一言によって一気に晴れたのです。

夫婦って、うまくできている。オカン、あなたはお義父さんに助けられています。

長女とのケンカ

「うわ〜ん!」
「えっ。どうしたの?」

仏間のふすまを開けると、オカンが泣いている長女の横でまごまごとしています。

長女が幼稚園の年中の頃…。夫の実家に家族4人で帰っていて、私はまだ1歳そこそこの長男から目を離せず、絵を描くことが得意なオカンが長女と仏間でお絵かきの相手をしてくれていた…という状況。

話を聞くと、長女が描いたうさぎの絵を見てオカンが、
「変なうさぎやなぁ」
と言ったらしいのです。

…オカンなら、ありえる(苦笑)

幼稚園でこどもの日に合わせて工作した鯉のぼりも、
「こんなん、先生が切ってくれたやつをペタペタのりで貼っただけやろ?」

…はい。確かにそうですが、もうちょっと子どもを意識した発言はできないものでしょうか(^_^;)

しかし、モノは考えようです。社会に出たら色んな人がいます。オカンのようにただ口べたなだけで悪気など一切ない人ならまだしも、意地悪心を持ってわざと嫌なことを言ってくる人も、残念ながら存在します。幼少期に、優しい人ばかりに囲まれるようなぬくぬくとした環境にいては、初めてそんな人に遭遇した時にショックを受けて、しばらく立ち直れないかも知れません。

現在中学生の長女は、この出来事をよく覚えていて、おばあちゃんはこういう人なんだとしっかり理解しています。そして、おばあちゃんのことが大好きです。

世の中には色んな人がいる。オカンはそれを教えてくれ、社会に出てからの耐性を長女に身につけさせてくれたのです。


家の中で楽しみを次々と見つける

数年前に大腿骨を骨折してから、オカンはほとんど外出できなくなってしまいました。あちこち出歩くのが好きな人なのでストレスが溜まらないだろうか、という私の心配をよそに、オカンは次々と家の中で楽しみを見つけていきます。

グループLINEへの「電子ピアノを注文して欲しい」との突然の投稿に、義妹が対応します。童謡をピアノで弾くことができるようになりたい、とのこと。演奏はまだ聴かせてもらえていませんが、ちょこちょこ練習しているようです。

ある時は、突然歌詠みにハマり、朝っぱらから3日連続で字あまりも甚だしい明らかに思いつきの歌を堂々とLINEしてくるので、
私「また駄作きたで」
夫「駄作言うな(笑)」
ついに私が添削したものを送り付けてやりました。副音声はもちろん、「もうお腹いっぱい」です。

趣味の絵をどんどん描いて溜まっていくので、義妹の「お母さん、インスタやったらええのに」の一言で、昨年12月から早速始めることになりました。絵の写真をオカンが撮り、それを義妹がアップするというスタイルで、現在フォロワー数56人。なかなかです。

また、傘寿のお祝いに何が欲しいか訊いたら、コーラスグループのCD、と返ってきました。歳を重ねてからもこういう『WANT』があることが大事です。



…こんな感じで、私にとってはちょっと変わっているオカンです。

結婚したての頃はオカンとは敬語で話していたのですが、こんな性格なので気を遣われることが苦手なのだと察知してからはタメ口で話すようになり、今ではほとんど遠慮することなく接しています。そして、「え?」と驚く発言も、笑い飛ばせるようになりました。

それに、とってもいいこともあります。正直であるがゆえに、おべっかなんかは絶対に使わないので、褒められたらそれはまるごと受け取って良いのです。今までにオカンは私を何度もいい気分にさせてくれました。

オカン、長生きしてね❤





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