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【本】昆虫の不思議と数字の不思議をあわせ持つセミの話

ニュースをみているとアメリカで周期ゼミが
221年ぶりに大量発生すると伝えていた

このニュースをきいて3年くらい前に読んだ本を思い出した

『素数ゼミの謎』 吉村仁 文藝春秋

アメリカで周期的に大量発生するセミ
なぜ周期的に一部地域に大量発生するのか
なぜ13年と17年の周期なのか
をわかりやすく説明してくれている



セミは通常6-9年ほど地中で育ち
その後地上に出できて羽化する
ただそれは必要な木の水分と温度が
きちんと整っていればの話で
氷河期をむかえると話が違ってくる

だんだん寒くなる中
地中で木の水分を吸収しながら
育つセミにとって
寒さで凍える木からの水分が足りなくなり
成長が緩やかになっていく

十数年かけて地上に出できても
相手がいない状況だと子孫が残せない
そんな中で同じ時期に出できて出会う
同じ周期のセミが相手をみつけることになる

そしてそのセミのこどもも
同じような周期で出てこないと
他のセミに出会えなくなるため
温度や水分などの栄養状態で
地上に出るタイミングをはかるのではなく
進化のひとつとして時間をはかって
地上に出てくるようになったそうだ

そしてなぜ13年と17年なのか
それは13年と17年が素数だからだという

さんすうと数学が苦手なわたしにとって
普段の生活で耳にしない「素数」という
言葉を使われてもすぐに理解はできないし
これを説明しろと言われてもできない

なんとなく理解できる内容としては
周期的に羽化するセミは
同時期に同じ場所で羽化することにより
相手を見つける機会を多く得ることができた

たまたま近くで同じように羽化する大群がいて
その群れと混ざって相手を見つけることもあった

しかしその群れは自分たちと違う周期の群れで
そこからうまれる子ども達は周期がずれて
羽化しても相手が見つけられず
子孫を残せないことでその周期のセミはいなくなる

それを繰り返すうちに
違う群れと会う回数が少ない周期の群れが
残りやすくなっていったため
13年と17年の周期ゼミがいる
という話だった

今回の221年ぶりに大量発生とは
13年と17年のセミが
同時に近い場所で発生するのが
221年ぶりということらしい


詳しく知りたいなら
本を読むのがいちばんだ

この素数の問題は
同志社中学校の授業でも取り上げられているようだ

「素数ゼミ」で検索すると
色々な解説やそれにまつわる問題が
出てくるのも楽しかった

セミの大群の中にいると
パチンコ屋さんと
同じくらいの音の大きさらしい

セミたちに養分を吸われる木々は
枯れてしまったりもするそうだ

ニュースではセミの発生を
お祭り騒ぎで楽しむ
街の人達の様子も映っていた

アメリカの人たちにとって
セミは毎年出会う夏の昆虫ではなく
たまに発生する昆虫だから
うるさいけれども楽しいようだ

レストランではセミの料理があり
しかもおいしいらしい

他の生き物たちにとっても
捕食の対象になるくらい美味だが
このセミを狙って捕食するには
発生に時間がかかりすぎて
捕食対象にはならないし
なにより大量発生するから
食べられても少なくなることはないらしい


本の最後の話では
氷河期という気候変動により
進化したセミではあるが
現在の地球温暖化などの
人間による気候変動は
それに合わせた進化を遂げるには
あまりにも急激な変化になってしまうとあった

氷河期という過酷な状況の中
生き延びることができたセミでさえも
危険な状況におかれていることを知り
環境問題を考えるきっかけにもなった

石森愛彦さんのイラストも
見入ってしまうくらい
カラフルで素敵なので
ぜひ手にとって読んでほしい本


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