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東京ムカデ 第9話

第9話

一方寄子は気が気でなかった。
なんということをしでかしてしまったのか、という気持ちと、今まで生きてきた中でここまで男性に対して積極的になったことがない自分に対して、誇らしいような、新しい自分に初めて出会ったような、、なんとも不思議な感覚だった。


帰り、もんもんと色々な事を考えながら駅の改札を前の人について行ってそのまま通り抜けようとした際、そのまま難なく通れると思っていたのに前を歩いていた人のパスモがピコンピコンと赤く点滅し、急に立ちどまられた勢いでポンッとその人の背中にぶつかってしまった。(あーもう!こういうの、信じていたのに裏切られた気分っていうのかしら)(いいのよ!人は人、自分は自分、違う道を歩けばいいんだから!!)と、気を取り直して隣の改札機から通り抜けた。そして人生もこんなものかも、なんてぼんやり思った。
もはや、自分でも今日はどうかしてるななんて思いつつ、ちょっとイライラしながら、家路へ急いだ。いつもならこんな時もおなじみの曲のキャッチーなフレーズがあたまの中に流れる寄子だったが、この時ばかりはなぜか、

(Don't stop me now〜 〜🎵)のフレーズが、ずーっと頭の中を支配するのであった。


もちろん、寄子だって人を好きになったことも過去にはあるが積極的になれるはずもなく、デートというものもしたことがあるものの、なかなか話が盛り上がらなかったりする事が多く、一回食事をしたきりフェードアウトしてしまうようなパターンが多いのだった。
(なんで電話番号渡しちゃったりしたんだろう?バカなことを、、ムムムム)
(でも、もう少し話して見たかったんだし、、あー!)(だって彼、なんか喋りやすかったん?そうだよね!)
自分の中で自問自答がずーっと続いた。

実家の親が持ってくるお見合いの話にも、思い切って決めてしまおうか、と迷った時もあったが、( 傷ついてもいい、誰かを心の底から好きだ!と一度でいいから思ってみたい)とどこかで思っていたのだ。
41歳。分かっている。結婚は?と自分の事を思っている人もいるかもしれない。
それでもいいから、自分の情熱は大切にしていたい。
もう結婚して子供もいる友人たちからも「いい人、いないの?」
「年いってから、さみしいよ」
色々言われることにも慣れっこになっていた。
(ほっといてよ! 私は私なんだから!余計なお世話だ!)と叫びたくなる時もあった。
そんな時は、やっぱりお気に入りの曲で踊る『自作ダンス』にもおもわず熱が入るのであった。


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