見出し画像

岸谷五朗に謝りたくなる『相棒19 元日SP』 展開的にはもう一捻りほしい

岸谷五朗の深みを増した演技に土下座したくなる

岸谷五朗で魅せる回。といっても過言ではない。

五朗ちゃんが演じるのは元新聞記者で右京と真逆の考えを持つ重要人物。

その一つ一つのセリフを発する声にしっかり感情が表れていて、しかもその複雑な表情の演技。中から外から役そのものが滲み出ててすげえとしか。

汚え声に無骨な風貌の馬面…といったような昔感じられた“五朗感”がないの。

観ていなさすぎ。その通りでほんと申し訳ない。

ある時代で五朗イメージ止まってた

何を隠そう前を隠そう(!)柏でサインと握手してもらってからもうかれこれ29年。

五朗ちゃんはリアルで会ったことのある数少ない芸能人というよりも“レディクラリスナー”にとっては身近な兄貴みたいなもの。

なのに夜ノ砂の五朗イメージは、「妹よ」(古いなあ!)とか津田恒実のドラマで止まっているんだ。

トヨエツの『愛の流刑地』は観ても五朗ちゃんのドラマ版は敬遠していたんだ。五朗ちゃんに繊細な演技ができるのかといった先入観があったからだ。

1990年代後半は、田舎っぽい無骨さ、でも根はいいやつ、時々コミカルで。

…みたいなイメージ。演技が決して下手ではないけど演じられる役の幅が狭いかもなあと思わせるところがあった。

観ていないので題名は避けるけど“ある大型作品”に出た時はその演技がメディアに酷評されたこともある。

それがこんな現場系インテリ崩れ、理想を貫いて失敗したみたいな役。

それでいて元々の無骨なイメージも活かしている(相棒ゲストらしいキャスティング)。

俳優って中年以降も伸びるんだなと本気で理解した。すごい無礼で申し訳ないが。

よし、『月はどっちに出ている』(1993年)は観ないことに決めた。公開当時中学生だったため鑑賞困難だったけどもういいや初期作は。

ところで「東京ビッグシティマラソン」のあの役はなかったことになってるんだな。ということは、もう寺脇戻ってくるしかないな、犯人役で。

もう一捻りほしい 過去SPはもっとスリリングだ

内容的には普通のドラマなら120点と付けたい良回だが、『相棒』としてはどうしても過去と比べるから評価は厳しめになる。

元日SPには「アリス」みたいな壮大でスリリングでドラマチックな回があるから、もう一捻り、ふた捻りあっていいんじゃないかと思ってしまう。

冠城くん(反町隆史)もあんま活躍しないし青木くん(浅利陽介)の力だし、警察の組織内部問題もちょこっと出しては尻すぼみ。

「アリス」なんか間接的ながら石坂浩二がカイトくんを殺そうとするんだからな。国家のメンツ保つために実の息子をよ。

だから少々ぬるい。

窮地の右京さん(水谷豊)も信念のみで巧みな頭のキレがみえない。これじゃ次回あたりで死んじゃうぞ。

久々『相棒』らしい緊張感

そもそも『相棒19』はそれまでと雰囲気が異なる。

『18』までの気品あふれる大人ドラマな感じから一変、なんだか品位がないし、画も引き締まってないし、各キャラ尖りすぎて調和が取れてない。

少なくても初回はそうだ。橋本一監督回ね。

白バイ出雲ちゃん(篠原ゆき子)の被害から復帰、捜査一課転属までの流れもご都合主義でがっかりしていたもんだ。

そんな中で久々緊迫感ある引き締まった画から始まる今回の元日SP。

何が起きているのかわからない不気味なカット。「火事?」。ほんと水谷さん体張るよなあ。そうそうこんなのが『相棒』元日SPだ。

右京の「正義」を問うというあえて根源を突きつけるような内容。複雑で難しいポジションをやってのける水谷豊やっぱすげーな。

森口瑤子の存在感

「熟女に興味ない夜ノ砂が唯一抱かれてもいいと思っているおばさん俳優No.1」森口瑤子演じる女将こてまりさん。

右京さんとの大人の恋?みたいな展開がにくいし、うらやま。

『地方記者 立花陽介』と違って芸者経験者の艶やかさがよく出せていて、相変わらずその場の全てを持っていってしまうような雰囲気に前任者が気の毒なレベルだわ。

『相棒 Season 19 元日スペシャル』(テレ朝系ドラマ 2021年1月1日)


どんどん観ていろいろ書いちゃいます。