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Yononakaレポート㉘「山・木」

正解のないお題に対し、参加者同士で意見を共有しあうことで、コミュニケーションを味わい楽しむワークショップ「Yononaka」
毎月1回、スクール生中心にオンラインで開催しております。今回は12名の参加者と、里山で活動されている方をゲストに迎えた計15名でYononakaを創り上げました!(小学生:5人、中学生:2人、高校生以上:5人)

まず冒頭で「?を頭に浮かべて取り組んでください」と声かけを行いました。「この言葉は何やろう?」「この人はどうしてこの意見にいたったのだろう?」「ここもう少し調べてみようかな?」といったように疑問を持ちながら取り組んでくださいと。
特に、今回はゲストトークの時間があり、いつもよりも主催者側の話が絶対的な正解のように受け取られる可能性があったため、この点を強調しました。Yononakaは「正解のない問いについて自分の意見を共有する」というのが基本方針です。

お題①「もし山や木がなくなったら・・どんなことが起きる?どんな生活になる?」

私たちのスクールがある大阪府八尾市は、どこを見渡しても山が見え、木々も豊かです。そんな環境が当たり前と思っているなかで「もし山や木がなくなったらどうなるか?」というお題を出しました。大まかな問いではありましたが、子どもたちの自由な発想に任せてみました。
まず1分間の個人ワークで考え、グループでそれぞれの意見を共有、その後全体で各グループの意見を共有しました。

小学4年生から30歳の社会人まで、年齢も立場も様々でしたが、参加者全員が互いの意見に対して理解を示そうと、前のめりになって聞く姿勢が印象的でした。
特に大学院で哲学を専攻している人が初参加したことによって、より多様な意見が共有されたと思います。

次のお題に移る前に、世界と日本の森林状況に関して、問いかけも交えながら簡単に説明していきました。
まず、世界では毎年1,000万ヘクタールの森林面積が減少していて、その大きさは北海道1個分を超える面積だとされています。どうしてこんなに減っているのだろう?と参加者に問いかけると、「焼き畑農業!」「山火事!」などの意見がすぐに出ました。

世界的に森林が減少している主な原因として、人間が開発活動を行って放牧地を作ったり、住宅や施設を建設したりすることが挙げられます。また、これらの建設材料や燃料として木材を使用すること、さらに山火事やその他の災害が原因で森林が失われていることも伝えました。

その一方で日本はどうなのか?
増えていると思う?減っていると思う?
と問いかけると、
「そら減ってる!」とか「増やしてそうやけど減ってんのかな」という意見が挙がりました。

そこで、実は日本の森林は増えていますと。
50年のスパンで見たとき、森林面積は約3倍も増えていますと伝えたところ、参加者はとても驚いていました。

日本は国土の約2/3が森林で、森林大国と言われています。しかし、増えているからこその問題もあります。そこで、森林が増え続けるとどうなるだろう?という問いかけをしました。

すると小学生から「森林が密集することで、日光が届かずに成長しない木が増える。その結果、木々がしっかりと根を張れず、災害が起こった際に倒れやすくなるのではないか」という鋭い意見!
この意見は、私が次に説明しようと思っていた問題点のひとつだったので、驚かされました。

お題②「日本の森が放置され増え続けているのはどうして?」

大まかにいうと、世界全体では森林面積が減少することが問題とされているが、日本国内では森が放置され増え続けることが問題とされています。なぜ日本はそういった状況なのか?森が増え続けるのはどうしてか、次のお題で考えていきました。
お題①と同様、個人ワーク→グループワーク→全体共有でした。

Bグループで大量の意見を出してくれたのは高校3年生です。このグループは大学院生、高校生、中学生、小学生とバラエティな組合せでした。当初予定していた時間では収まらず、グループ共有は1分延長となりました。

そのあと私から例として説明することの大半は意見として挙がったのですが、簡単にスライド共有しました。まず、各国に比べて日本は木が育ちやすい環境に位置していること、針葉樹と広葉樹ともに育つことができるという点に触れました。

そして、実際にGoogleマップで「緑の濃さ」に注目しながら参加者同士話しながら確認していきました。
「中国白いなぁ」
「ヨーロッパは緑あるけど薄い」
「北欧濃い!」「日本濃すぎ!!」などの話をしながらGoogleマップを見るのがこちらとしても楽しかったです(笑)オンラインのワークならではなことができました。

その他、木以外の素材がここ50年で増えている点や、コストの低い海外の木材を輸入している点、林業の後継者が不足している点にも触れました。

しかし何といっても、そのことが認知されていない、あるいは国民が無関心であることが問題であると、今回私は勉強していて思いました。お題②でも小学生が「木についてみんなあまり考えたことがないのでは?」という意見を出していましたし、だったらよく知っている人に聞いてみよう!と。
そういう流れでゲストトークにつなぎました。

ゲスト「ヤギ工房のヤギノリさん」

今回ゲストとしてお話しいただいたのは、森林率76%の京都府宇治田原町で生活もお仕事もされているヤギ工房のヤギノリさん。蔓を使ったクラフトやワークショップを通じて、里山の魅力を広められています。
田舎暮らしを始めた経緯から、蔓や林業についての詳しい話まで、ご自身の見解を交えてお話いただきました。実際に里山で活動されているならではの視点から語っていただいたことで、参加者は新たな気づきを得られたと思います。

里山アルモンデザイナーのヤギノリさん。ワークショップ名が「つるつくるつーる」など言葉遊びがユニークで、子供たちも楽しそうに話を聞いていました。

お題③「里山にアルモンを使って何が作れるか考えてみよう」

最後は、里山にアルモンで自分は何を作ってみたいか、1人1人考えてもらい全体で発表していきました。

1人1人のびのびと、自分ならではの意見が発表していたと思います。スクール生の意見に対し、ゲストのヤギノリさんも楽しみながらリアクションやコメントをしてくれていました。その全体の空気感も良かったと思います。

ヤギノリさんからの話を受けてインスピレーションを広げ、イラストを描いた参加者もいました。Yononakaは自己表現の形式も問いません。より厚みが出る意見共有になったと思います。

また、今回のYononakaを通して、ZOOMの立ち振る舞いもその人らしさを表すコミュニケーションになりうると気づきました。今回初参加の哲学者は書斎から参加していて雰囲気がありましたし、好きなキャラクターや季節に合ったデザインを背景にしたり、動物のエフェストや高音質のマイクを使っている参加者などもいました。その点にフォーカスして楽しむのもありだと思いますし、会話の脱線から新たなお題を生み出すような仕掛けがあってもいいなぁと。そうすると、もっとコミュニケーションの厚みが増してくるだろうと思いました。

Yononakaの参加者の感想を以下に記します。
・様々な木の使い道や、里山の活用方法がいっぱいあることを知った。
・それぞれの人のアイデアの出し方と言葉のチョイスが印象に残りました。
・つるって色々あったこと。
・薪や間材を使って薪ストーブを使ったら小屋を建てたりしているのがすごく自然とマッチした生活で素敵だなあと感じました。 蔓を使った仕事で里山の環境や将来へ大切なことを伝えていかれてるのだなと思いました。
・木に対してそもそもみんな関心がない。 という意見はたしかになあと思いました。 身近なところには木が使われたものがたくさんあるけれどニュースなどで見ないと現状も知らないことがあるなと感じました。
・森は放置でも、自然に近づくこと。
・みんながなるべく違った意見を言おうとしていたところが印象に残りました。
・竹製の耳かきを作ってみたいと言っていた意見が印象に残りました。それを作ることを山へ行く理由にするというユーモアがよかったです(笑)

Yononakaも3年目になりました。毎回10~15人が参加しています。常連の参加者は「意見をつくって表現すること」が習慣になっていて、ひとつの問いに対する回答が、量・質ともに進化していっています!おかげさまで毎回こちらが思っている以上に意見が活発化するため、時間オーバーが続いております(笑)

TikTokなどの短尺動画の常態化、動画は倍速視聴が当たり前、だんだんと生活が高速化しているなかで、正解のない問いに対してじっくり吟味する時間が貴重だと思っています。
自分の意見を発信する、他者の意見に耳を傾ける、そしてまた自分の考えをフィードバックする、その会話の連鎖によって生まれるアイデアを大切にしていきたいと、個人的に思っています。互いの視点を尊重しながら意見交換を行うことで、一人では思いつかないような創造的なアイデアが生まれることでしょう。

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