LEZYNE SUPER GPS の検証

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 Amazonで、LEZYNE SUPER GPS(以下 SUPER GPS) の40%オフクーポンを発見したので、息子の分とあわせて2台購入。早速設定して使ってみたものの、一緒に運用した他のデバイスや、地図上のデータに比べて、走行距離について大きな差異が生じるようである。(ただし、走行時に表示されるスピードは、他のデバイスとほぼ同じ値を示している。)

 走行距離は、実際に走った証として大切なものだ。やはりできるだけ正確な数値を知りたい。また、ツーリング途中で、地図上では残り○○キロで目的地に着く、というときには、やはり正確な走行距離を把握しながら走りたい。

 この機種は2017年の発売。この手のデバイスで3年落ちといえば一世代前の機種ということになる(ちょうど最近、後継機種が発売された)。購入後にあらためてネット上の情報を読み漁ると、どうも一癖も二癖もあるサイコンのようだ。とはいえ、もう買ってしまったのだから、その癖を把握した上で使い倒していきたい。そこで、この走行距離のについて検証を行うこととした。

検証方法

 我が家の近くを流れる荒川の河川敷には、1kmごとに河口からの距離が書かれたキロポスト(標識)が立っている。そのキロポストを目印に、まずは10kmを1kmごとにラップを取りながら走る。そして折り返して、同じ10kmを今度は途中停止することなく一気に走り、2台の SUPER GPS と、手持ちのいくつかのデバイスで並行してログを取った。

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使用機器

1.LEZYNE SUPER GPS(White) ※最新ファーム 10.04.07.46
2.LEZYNE SUPER GPS(Green) ※購入時ファーム 10.04.06.77
  ・オートストップ なし
  ・GPS記録間隔:1秒
  ・スピード&ケイデンスセンサー使用、ホイール外周 2105mm
3.GARMIN eTrex30x
  ・GPS記録方法:自動、間隔:標準
  ・スピードはGPSによる測定
4.GARMIN ForeAthlete 235J
  ・GPS記録間隔:1秒
  ・スピード&ケイデンスセンサー使用、ホイール外周 2105mm

※ 記録間隔自動の eTrex30x と、1秒ごとの他のデバイスでは取得密度が8倍くらい違った。本来なら、eTrex30x も1秒ごと取得に揃えるべきだったが、実際にはほとんど曲がることのない河川敷なので、距離の誤差はほぼないと考えられる。

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検証

 以下のデータが、1kmごとに停止してラップを取りながら10kmを走ったときの記録を、GARMIN CONNECT に読み込んで処理したものである。

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 まず、2台のSUPER GPS の走行距離が、実走10kmに対して9.33kmと約7%ほど短くなっていることがわかる。それに対して、ForeAthlete は 9.98km、eTrex30x は10.02kmと、ほぼ正確に10kmを示している。そもそも、河川敷のキロポストの距離の信頼性がどうなのか、という問題はあるのだが、こうやって見ると、ほぼ10kmなのだと考えて差し支えないだろう。

 ここで注目したいのは、2台の SUPER GPS が、同じ距離を取得していることだ。以下は、ラップごとの記録である。

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↑ LEZYNE_White

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↑ LEZYNE_Green

 見比べてみると、1kmごとのラップでも、まったく同じ距離を記録している。このことから、2台の SUPER GPS について、ファームウェアのバージョンによる差がないこと、センサーデータの取得が安定していて、個体差によるゆらぎがないことがわかった。
 そのため、以降は SUPER GPS は White のみを取り上げる。

 続いて以下に示すのは、ForeAthlete のラップごとの記録である。

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↑ ForeAthlete 235J

 各ラップで、1km前後の距離を正確に刻んでいる。スピードセンサーの仕組みは、センサーマグネットを通過した回数に、タイヤ周長を掛けて距離を計算しているだけと単純なはずである。少なくとも、タイヤ周長の設定値は問題無さそうだといえる。

 ForeAthlete は、SUPER GPS と同じスピード&ケイデンスセンサーの信号を拾っている。にもかかわらず、ForeAthlete と、SUPER GPS にはこれだけの違いが生じている。どうにも解せない。

 最初に挙げた表に、Lezyne_white(GPS)とLezyne_green(GPS)というデータが含まれている。

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 これは、それぞれ元の SUPER GPS のデータを、GARMIN CONNECT から一度gpxファイルとして吐き出して、再度 GARMIN CONNECT に読み込んだものだ。ご覧の通り、距離が10kmにかなり近づいている。これは、gpxファイルに変換した際にスピードデータは削除され、「いつ、どこ」というGPSの素のデータから再度距離を計算しているからだろう。

 次に示すのは、同じ10kmのルートを折り返して、今度は一気に走ったときの記録だ。

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 するとどうだろう。今度は SUPER GPS の距離も、ほぼ10kmとなっている。他のデバイス、及びgpxファイルにして再読み込みしたものの距離と比べると、あいかわらず若干短めになる傾向が認められはするが、なかなか良い精度が出ているではないか。

 ここまでの結果から、SUPER GPS の示す距離について、以下のことがいえそうである。

・実際の距離に比べて短めに出るようだ。
・実際の距離の○%減のような一律な割合で減るわけではない。
・ストップ&ゴーを繰り返すほど、距離は短く出る傾向にある。
・停止時から走り出す際に、一定距離をカウントしそこねているのでは?

 次に示すのは、峠を含めて160kmほど走ったときの記録である。

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 SUPER GPS の距離は、eTrex30x の約4%減となっている。丸一日走ったので、停止回数はそれなりの回数になるものの、全体距離が長いために、この程度の減少率になるのかもしれない。結果は前述の推測と整合しているようである。

 次に示すのは、1kmx10LAPしたときのスピードのグラフを一部拡大したものである。上が、SUPER GPS オリジナル、下が ForeAthlete だ。

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↑ LEZYNE SUPER GPS

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↑ ForeAthlete 235J

 ちょっとわかりにくいかもしれないが、SUPER GPS のオリジナルのグラフは、停止時からのスピードがほぼ垂直に立ち上がっているのに対して、gpxファイルを再読み込みしたもの、およびForeAthlete は、わずかに角度をもって、つまり徐々にスピードが上がっている。言うまでもなく、ForeAthlete のグラフの方が実際の挙動に近い。やはり、SUPER GPS は、走り出す際に距離をカウントするまで少しタイムラグがあるのではないだろうか。

対策

 これが、一定の割合で短めの距離が表示される、ということであればタイヤ周長の長さをそれに合わせて調整してやればいいのだが、どうも事はそう単純ではなさそうだ。現状では、出先では少しずれた距離表示に我慢して、帰ってきてGARMIN CONNECT や、STRAVA などにデータをアップする際に、一度gpxファイルを経由させて距離補正を行うというのが良さそうだ。

ところが…

 実はまだ疑問が残っている。以下は、以前にやはりデータを取るために、息子に荒川を走ってきてもらったときの記録である。これまでのデータとは、自転車、およびセンサーが異なる環境となる。

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 2台の SUPER GPS は、ほぼ同じ距離を示している(つまりエラーは起こしていない)。にもかかわらず、今度は eTrex30x に対して15%ほども長い距離を示しているのだ。果たして、センサーが違うだけでこんなことが起こるのだろうか…??

 さらなる探求は(たぶん)続くのである…。

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