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木工用インサート(鬼目ナット)について

「なんか、たくさん種類があるよね…」と、漠然としか把握していなかった木工用インサートについて、あらためて調べてみた。もっともメジャーな鬼目ナットは、株式会社ムラコシ精工の商品。A,B,C,D,E,F,G,I,J,M,P,Sの全12タイプでそれぞれに径と長さのバリエーションがある。

ざっくりまとめると以下のようなバリエーション構成となっている。

  1. 取付け方法:打ち込み式、ねじ込み式

  2. ツバの有無:ツバ付き、ツバ無し

  3. ねじ込み部:テーパーあり、テーパー無し

  4. ガイド:ガイドありタイプ

  5. 特殊タイプ:樹脂製、穴なし、アジャスタ・キャスター用等


■打ち込みタイプ

下穴に金槌等で叩き込みタイプ。
スピーディーに作業が行える反面、ねじ込み式に比べるて、1)強度が落ちる、2)精度が落ちる、3)母材の割れを引き起こす可能性が高い。

Aタイプ(M3,4,5)
ツバ無しタイプ。

Bタイプ(M3,4,5,6,8)
ツバ付きタイプ。ツバの形状に、厚さ、直径の大小のバリエーションあり。ツバ部で荷重を受けることで強度大。位置(深さ)決めも容易。ツバを接合部側にした場合、ツバの厚み分を座繰らないと隙間ができる。


■ねじ込みタイプ(テーパーあり)

下穴に六角レンチを用いてねじ込むタイプ。
打ち込みタイプに比べて、引き抜き強度が大。母材に対する影響も小さい。外周部についたテーパー(先細り)により、挿入が容易。

Dタイプ(M4,5,6,8,10)
ツバ付きタイプ。打ち込み式のツバ付きとは異なり、ツバの形状は1種類のみ。

Eタイプ(M4,5,6,8)
ツバ無しタイプ。ツバが無いので、ねじ込み深さの調整が容易。

Cタイプ(M4)
ツバ付きタイプ。薄板厚に特化したM4のワンサイズ展開(長さ8,10)。他のねじ込み式と違い、ねじ部切り欠き無し。


■ねじ込みタイプ(テーパー無し)

下穴に六角レンチを用いてねじ込むタイプ。
打ち込みタイプに比べて、引き抜き強度が大。母材に対する影響も小さい。外周部のテーパーが無いことで、挿入時の鉛直精度を維持しやすい。

Pタイプ(M4,6,8)
Eタイプ(ツバ無し)の外周テーパーが無いタイプ。

Sタイプ(M5,6)
Dタイプ(ツバ付き)の外周テーパーが無いタイプ。サイズバリエーションが少ない。


■ガイド付きタイプ

打ち込んだ際に表面にダボ状の突起が残り、部材接合時にダボのような位置決めの役割を果たす。

Gタイプ(M6)
打ち込み式。接着剤使用を考慮した袋ナット形式。M6のみ。

Mタイプ(M4,5)
ねじ込み式。ツバ付きのため位置(深さ)決めがしやすい。外周テーパーあり。


■特殊タイプ

Fタイプ(M5,6)
唯一の樹脂製で、打ち込み式、ツバ無し。パーティクルボードなど比較的粗い素材に接着剤を併用して使用する。

Iタイプ(M4,6,8)
打ち込み式で頭部がメクラになっている。図の様に、裏側からのボルト挿入を想定している。穴が無いことで意匠性アップ。ツバ部により引抜き強度大。

Jタイプ(M8,10)
外周に三叉のプレートを付けて強度アップしたタイプ。アジャスター、キャスター等の取付けを想定している。


■その他のインサート

ムラコシの鬼目ナット以外だと、以下のような製品がある。

ウッドシールド(M4,5,6,8,10)
三星産業貿易株式会社
ツバ付き、ツバ無し。マイナスドライバーでねじ込むタイプ(一部6角ボルト使用)。



エンザート(M3,3.5,4,5,6,8,10,12,16)
ケー・ケー・ヴィ・コーポレーション株式会社
株式会社三友精機
金属・樹脂用がメインだが、超荒目外ねじタイプ(309型)は木材・合板に使用できる。ツバ無し。マイナスドライバーでねじ込むタイプ。



■グッドデザイン・ロングライフデザイン賞

ムラコシ精工の鬼目ナットは、2022年にグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞とのこと。素晴らしい。

「日本で古くより木工用のヤスリとして使われていた「鬼目ヤスリ」その突起形状が発想の原点となり、「鬼目ナット」と名付けられた。今では「MURAKOSHI ONIME」は海外でも通じる名称となった。」

https://www.g-mark.org/award/describe/54592


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