見出し画像

知事会も医師会も担当相も出ない第8波 - 死屍累々、ワクチンは本当に効くのか

最近のコロナ報道で率直によく分からないことがある。まず致死率。コロナの致死率は増えているのか減っているのか。マスコミ報道では、致死率は下がっているという認識と説明になっている。1月15日の朝日の記事では「致死率は低下した」と書いていて、厚労省のデータを元に「致死率は(略)低下傾向にある」と断じている。同じ15日の産経でも「ワクチン接種の進展に伴い、致死率(略)は低下している」と書き、「致死率、インフル並みに」とある。テレビも同じで、政府がマスコミにこの論調で報道させている。どういう計算結果なのだろう。首を傾げる。致死率の計算式は「死亡者数÷感染者数」のはずだ。現在の第8波は1日あたり過去最高の死亡者数が日々更新されている。

第8波の感染者数は、厚労省の統計では第7波と同じ水準だから、致死率計算は、分母は同じで分子が増えている形になる。したがって当然、現在の第8波は過去と比較して致死率が急激に増加していなくてはいけない。小学3年生の分数計算である。だが、政府とマスコミは、第8波で致死率が上昇している事実を言わず、逆のことを言っている。そのことで、オミクロン株への安心感を醸成させ、政府の対策が成功しているように思わせ、ウィズコロナの正当性を刷り込んでいる。屋外ではマスクを外せと言い、GoToトラベルで旅行へ行けと促している。その現状に対して誰からも異論が出ず、ネットでも異議申し立ての声がない。致死率は増えているぞ、嘘を言うなと告発する者がいない。

■ ワクチンは効いているのか

もう一つ、もっと重要に思われる疑問は、果たしてワクチン接種はコロナ対策(特にオミクロン株)に効果を上げているかという問題だ。第8波では死亡者が嘗てない規模に増えている。その年代別内訳を見ると、60代が5%、70代が17%、80代が41%、90代以上が34%となっていて、高齢者に集中している実態が分かる。60代以上で97%を占め、80代以上で75%を占めている。第8波の説明では、高齢者がコロナに罹って肺炎が重症化するのではなく、持病の基礎疾患の悪化が原因で死亡に至っていると言っていて、高齢者以外の年齢層が安心感を持つ空気が作られている。だが、この現象と言説についても腑に落ちない点はある。それは、高齢者ほど数多く頻繁に、神経質に、ワクチンの早期接種を重ねたはずだという前提に他ならない。

リスクの高い高齢者をコロナ感染から守るために、高齢者から先に接種を推進し、国・自治体がそれを指導・手配したのではないのか。3年間、その防疫行政を続けてきたのではないか。今でも、感染予防のために早くワクチンを打ちましょうと呼びかけ、ワクチンが決め手ですと言っている。東京都福祉局の統計資料を見ると、1月12日までの数字で、4回目接種率が65歳以上で83%となっていて、内訳は、60代が73%、70代が83%、80代以上が86%となっている。これほど多く、頻回に、高齢者がワクチン接種を済ませている国は他にない(1人あたり接種回数世界最多)。だが、その高齢者が感染して過去最多の死亡者数を記録している。この事実はどう分析され、科学的に説明されるのか。政府とマスコミには、死亡者の接種回数の内訳を年代別内訳とクロスで公表してもらいたい。

■ 接種を多く重ねているはずの高齢者がなぜ

おそらく、今、焦点になっている高齢者施設などは、集団感染が広がったら人的負担も大きく経営的にも大打撃だから、入居者に対して3回、4回とせっせと接種を進め、もう5回目も済んだという段階ではないかと想像される。保健所も末端自治体当局も、高齢者施設については特に注意を払い、感染予防のためのワクチン接種を督励・実施してきたはずだ。なのに、高齢者施設でクラスターが起きている。これはどういう科学的現実なのだろうか。ワクチンはコロナによる肺炎の重症化は防げるが、コロナの感染を防ぐ効力はなく、コロナによる持病(心不全・腎疾患など)の重症化は防げないということだろうか。データを素朴に解釈するとそういう結論になる。高齢者施設では、入居者にどれほど接種を受けさせても、コロナ感染予防の効果はないということになる。

もし、その仮説が科学的に正しいとなれば、それは政府と関係者にとってきわめて不都合な事実だろう。一昨年のデルタ株流行の頃は、ワクチンは感染は防げないが重症化は防げるという説明が正論になっていて、命を守るためにワクチンを打とうという主張が浸透していた。松本哲哉などがそう言っていた。だが、今回第8波の実態はその定説がよく妥当しない。ワクチンが無力化された状態になっている。ぜひ専門家には、なぜワクチン接種を重ねた高齢者が死亡に至るのか、デルタ株のときと違うのか、医学的内実を合理的に説明してもらいたい。もし仮に、今のワクチンに(特に高齢者に対して)感染予防の効果が十分確認できないという判断になれば、対策も根本的に変える必要があり、基礎疾患のある高齢者はGoTo利用対象から除外する必要があるし、店の中でも外でも市民のマスク着用は必須となる。

■ 政府にコロナから高齢者の命を守る意思がない

厚労省の3年前の資料を見ると、高血圧症有病者の割合は、60代で59%、70代以上で72%という数字になる。糖尿病の指摘を受けた者は、60代で19%、70代以上で21%とある。コロナ(オミクロン株)で基礎疾患が重症化して死亡している高齢者は、こうした人々だ。年寄りで高血圧でない者は少なく、半数が処方薬を服用している。現在は過去にない空前の感染爆発が起こり、感染者が全数把握されておらず、公表値の1.7倍もあると推定されている。なのに、マスクを外せとか、社会経済活動をコロナ前に戻せという政策論は狂気の沙汰だろう。テレビでは、病床が逼迫して患者受け入れができなくなっている惨状が報道されている。神奈川県では病床使用率が8割を超えている。だが、非常事態のはずなのに知事が出てきて会見しない。いつもは出たがりで、何かあればテレビに顔を出す男なのに。

救急搬送困難事例も増えて、過去最高の水準に悪化している。16日の報道では、昭島市の救急車が隊員の過労による居眠り運転で横転事故を起こした件が伝えられていた。本来、都知事か東京消防庁の幹部が会見に出てきて過去最悪の現状を都民に説明すべきだろう。だが、それはなく、事故の事実だけが淡々と伝えられている。一昨年も同様の事態が起きた記憶があるが、このときは政府とマスコミが危機感に満ちていて、感染拡大を少しでも抑えるべく国民に不要不急の外出を控えるよう呼びかけていた。救急搬送が困難になり、病床が満杯になっているのに、今は政府のコロナ担当相が何も言わない。誰がコロナ担当相をやっているのかもよく分からない。山際大志郎が馘になった後、後藤茂之がやっているらしいが、全く印象がない。何をしているのだろう。これほど医療逼迫が極まっているのに、全国知事会の会議がテレビに出ないのも不思議だ。医師会長も出ない。

■ 感染爆発・死者増を「新しい日常」として是認・宣伝

もっと不思議なのは、マスコミの世論調査で、政府はコロナ対策をよくやっているという肯定的な世論が多数であるという事実である。医療逼迫なのに、病気になっても治療してもらえず、救急車に来てもらえず、たらい回しにされる異常事態になっているのに、マスコミが特に深刻な論調で報道せず、これがウィズコロナの日常であると説明し、政府批判をしないため、世論は現状に肯定的な反応になる。医療崩壊を是認する態度になってしまっている。昨年までは、倉持仁のような政府批判する医師を画面に登場させ、怒りの声を上げさせていた。医療関係者と国民の声を代弁させていた。が、第8波ではそれはない。池袋の大谷義夫も出ない。訪問医の田代和馬も出ない。だから、医療崩壊が国民の政府批判に繋がらない。マスコミとネットの言論には何の危機感もなく、政府批判の空気もない。街はマスクなしの人で溢れている。

何が起きているのか。同じ高齢者でコロナに罹ってもへっちゃらな人間がいる。79歳の関口宏と82歳の王貞治だ。二人には基礎疾患はなかったのだろう。だが、普通の市民とは違って医療へのアクセスが容易で早く、投薬治療のタイミングが適切だった可能性は考えられる。第8波で不運にも感染した高齢庶民のように、自宅に放置されたままという境遇ではなかっただろう。関口宏や王貞治のような富裕層にとっては、免疫力の低い高齢者であっても、コロナはウィズコロナのコロナなのであり、罹ったけどすぐ治ったというインフルと同じ病気なのだ。私のような普通の庶民には、コロナは罹れば命を落とすかもしれない恐怖の悪魔なのだが、彼らは違う。田代和馬のツイートを見ると、119番に電話しても40分間繋がらないと現状が報告されていて、心底恐い気分になる。田代和馬の訪問先の患者に、瀟洒な一戸建てやタワマンに暮らす者の姿はなかった。

■ 新自由主義の勝利

ウィズコロナの政策には、貧乏な高齢者を国は面倒みないから早く死ねというメッセージが込められている。私にはそう思われるし、ずっとウィズコロナは新自由主義政策だと言って批判してきた。コロナのパンデミックを契機に利用して、日本の医療体制と医療政策をアメリカ型の新自由主義方式に転換させようとしていると暴露し、憲法25条違反だと糾弾する記事を3年間書いてきた。だが、そうした批判は世間で支持を増やさず、逆に医療を新自由主義化する方向に全体が靡いている。右翼化した若年層が、貧しい高齢者は殺処分した方がいいと5chで書き散らし、その風潮に歯止めがかからない。今の政府のコロナ政策は、低所得高齢者は自己責任で死んで行けという冷酷な思想を基調としたもので、コロナを社会保障支出削減の奇貨と捉え、高齢者人口減らしの機会として利用しているとしか思えない。マスクを外させ、人流を活発化させれば感染は増える。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?