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Unfortunately, less and less crowds at protests - 民族絶滅へ勢いづくイスラエル

師走に入っても小春日和の日が続いている。去年はとても寒かった。今年は稀にみる暖冬だ。普段の年なら、ジョンの曲を聴きながら8日の命日を過ごし、14日の赤穂浪士討ち入りの前に大掃除をして正月を迎える準備をする。だが、今年はガザの問題があり、心が落ち着かない。ロイターの 12/11 の報道では、ガザ保健省が発表した死者数は1万8205人。一日あたりの犠牲者数は減っていない。虐待と殺戮が続いている。12/10 には、国連の人道問題担当の事務次長が、「国連はもはや正常な援助活動ができない状況にある」と言った。ガザ住民に向けての責任放棄発言であり、飢餓、感染症、略奪・暴動の混乱等、イスラエル軍の爆撃による直接被害以外の二次的要因で大量の犠牲者が出るという予告に聞こえる。そして、国連はそれを座視する方針を決めたと開き直っているように聞こえる。

12/10 のCNNの報道では、ネタニヤフがバイデンと電話会談して、ガザ南部への攻撃を3-4週間続けると伝えたとあり、すなわち、バイデンが年明けまでのガザ攻撃の続行を承認したことが分かる。バイデンはガザ南部への侵攻停止を求めるどころか、人道支援物資の最低限の搬入すら求めていない。アメリカの姿勢は1か月前よりも後退していて、逆にイスラエルの虐殺行動に拍車をかける後押しを強めている。12/4 にはガザの最高裁判所が爆撃され粉々に破壊された。過去の裁判資料も灰となった。マスコミは報道していない。12/4 には、ガザ・イスラム大学で総長を務め、世界で最も多く論文引用されたと評価される、著名な物理学者が空爆で殺害されている。12/3 には、ガザのシファ病院に最後まで残って患者への治療を続けていた医師が、親族3人と共に空爆を受けて自宅で殺害された。

12/10、イスラエルは、鉄面皮にも「7000人のハマス戦闘員を殺害した」と言ったが、この数は死亡者全体の4割であり、すなわち、子どもと女性を除く人数である大人の男性はすべて「ハマス戦闘員」だという意味だ。イスラエルの定義では、物理学者も、シファ病院医師も、「ハマス戦闘員」であり殺害対象なのである。イスラエルはこの定義で軍事作戦を敢行し、ガザ住民を片っ端から殺戮しまくっていく。北部も南部も関係ない。そして、その民族絶滅作戦をアメリカが承認している。黙認しているだけでなく、武器を与えて積極支援している。アメリカが「戦闘」一時停止前に言っていた、ガザ南部への侵攻反対は全くの嘘だ。タテマエだ。実際にはネタニヤフのフリーハンドを認めていて、真意は民族浄化の遂行容認にある。アメリカの出口戦略は、パレスチナの民族絶滅なのである。

12月に入り、「戦闘」再開となった後、俄然イスラエルが強気になり、イスラエルを抑制する国際政治の動きが弱くなった。ガザの子どもの大量虐殺を伝えて国際世論に悲劇を訴える配信のビジビリティが弱くなり、マスコミ報道全体の中でガザ問題のシェアが徐々に下がっている。アメリカの報道で、ガザ問題についての世論調査がされなくなった。日本でも、自民党派閥の裏金問題とか、大谷翔平の1000億円移籍契約とか、別のニュースが割り込んでガザ虐殺への世間の注目度を小さくしている。そこには一つの理由と背景がある。それはこれだ。

11月以降、世界での抗議行動が下火になっている。週末毎にXで検索をかけてデモの映像を追いかけているが、最近は巨大デモの発信がなく、都市での発生も減っている印象を受ける。残念この上ない。デモが最もエネルギッシュに盛り上がったのは、ロンドンで30万人が集まってテムズ川に架かる橋を埋めた 11/11 の週だった。圧倒的な絵の出現であり、世界の政治を動かした。例えば 11/17 には、南アなど5か国がICCにガザの調査を要請する動きが出た。11/12 には、立山良治が「ハマスを対話相手として認めよ」とNHKの日曜討論で発言、その後の日本の論壇の空気に大きな影響を与えた。イスラエルとアメリカへの政治的圧力と攻勢という意味では、この時期が最大のボルテージが上がった瞬間だったと言える。そこからさらに盛り上がるか、持続すればよかったが、残念ながらデモは萎んで衰えてしまった。

日本でも同様で、12/10 に行われた国会正門前でのデモは、主催者発表で1500人参加と報告されている。同じ「パレスチナに平和を!緊急行動」(総がかり行動)による 11/10 の渋谷デモは、主催者発表で4000人が集まっている。同じ主催者の 11/19 の新宿デモは1500人だった。世界的な傾向として 11/10-12 の週末がピークになり、以後モメンタムが衰退して1か月が経過した現状にある。これまで見た中で最も巨大な絵は、 11/5 にインドネシアで開催された集会を撮ったもので、Xには200万人と数字が出ている。11月下旬以降も、英国や北米の諸都市ではデモが持続して行われているけれど、規模が膨らんでいる様子はない。イスラエルとホワイトハウスはその情勢を注意深く観察していて、抗議のモメンタムが衰えている状況を見越し、ガザ虐殺の鞭を入れ、手抜きせず民族絶滅作戦のスピードを上げている。

ここから先は、前回と同じ暴力悲観論の嘆き節になってしまうが、世界の市民のデモの政治的圧力が弱まれば、あとは暴力による解決方向しかない。ガザ200万人の相当数の命が失われつつ、シナイ半島の砂漠に民族が放逐され、国連が作ったテント都市の上にイスラエル軍がさらに空爆を加え、果てしなく残虐な殺戮を繰り返し、民族絶滅が進行する図式である。マスコミや専門家は、シナイ半島にガザ住民を追い出したらそこで作戦終了という見方を撒いている。不幸なパレスチナ人は国連の保護下で砂漠で生を繫ぐ、という物語を視聴者に想像させている。が、旧約聖書の世界はそんなに甘いものではない。砂漠にガザ住民を追い出しても、そこでハマス戦闘員が蘇生しないという保証はない。イスラエルの選択肢は、あくまで民族絶滅であり、キャンプであれ何であれ、爆弾を投下して全員殺処分するのだ。根絶やしにするのである。

ネタニヤフが 12/10 時点で言った「あと3-4週間の作戦継続」とは、エジプトにラファ検問所を開かせる日程の意味だろう。また、作戦に動員したイスラエル兵に招集解除を期待させるための告知だろう。1月中にラファ検問所を開かせ、そこから砂漠に200万人を放出する計画だ。エジプトと国連とカタールと他アラブ諸国にそれを容認させるべく、ブリンケンが年末年始動くのだろう。その動きに待ったをかける要素が出現するとすれば、西岸地区の「ライオンの巣穴」の蹶起しかない。西岸地区のパレスチナ人が覚悟の特攻で 10/8 の奇襲を再現させ、ガザに侵攻したイスラエル地上軍を二正面対応に分割する。それに呼応してレバノン国境でヒズボラが動き、イスラエル軍兵力を三戦場へと分散させ、ガザ投入部隊を縮小させる。それによって民族絶滅作戦にストップをかける。

それしかない。他の可能性は思いつかない。11月中旬以降、世界でガザ虐殺反対・反イスラエルの抗議行動がシュリンクした経緯においては、例の「反・反ユダヤ主義」のイデオロギー運動がカウンターとして機能した点が大きいだろう。反動の側の奸知で狡猾な思想工作の奏功だ。この問題については稿を別にして考察したい。前回、①から④まで、ガザ救済が実現するポエティックなアイディアとストーリーを披露した。「夢想」と呼んで①②③④を並べた。その延長の⑤として、こんな布陣と内容の「ガザ特集」雑誌の編集企画を考えて、週刊エコノミストに提案した。岩波の「世界」も青土社の「現代思想」も、今回なぜかガザの臨時増刊号を出していない。その理由は不明だが、市場の読者は欲しているはずで、発売すれば売れると思われる。ある程度の売上は期待できるはずだ。

1. 岡 真理 
2. 伊勢崎賢治
3. 川上泰徳
4. 立山良治
5. 酒井啓子
6. 早尾貴紀
7. 内藤正典
8. 青山弘之
9. 高岡 豊
10. 三木幸治     毎日新聞エルサレム特派員
11. 清田明宏     UNRWA保険局長
12. 河瀬佐知子    日本赤十字社看護師
13. 並木麻衣     日本国際ボランティアセンター
14. ハニン・シアム    日本在住パレスチナ人 
15. クレア・デイリー  EU議会議員(アイルランド選出)
16. 大石あきこ     衆院議員(れいわ新選組)  

メールを送ったところ、すぐに返事が来て、あえなくボツの結果となった。夢想は夢想であり、ファンタジーは現実ではなく、ユートピアはあくまで頭の中の世界である。残念ながら、サンタクロースは実在しない。政治は、ウェーバーが説いたとおりの19世紀的真理のリアリズム世界でしかないのか。

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