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立憲民主党代表選の結果 - リベラル野党をやめて保守野党へ、維新と同じ第二自民党へ

立憲民主党の代表選が 9/23に行われ、事前の予想どおり、野田佳彦が枝野幸男との決戦投票を制して選出された。9/24 に党役員人事が発表され、幹事長に小川淳也、政調会長に重徳和彦、国対委員長に笠浩史が起用された。小川淳也は、元総務官僚で消費税25%の提唱者。重徳和彦は維新から政治家のキャリアを始めた右翼で、昨年末に不同意わいせつ容疑で被害届を出された不祥事男。笠浩史は日本会議の設立10周年に祝賀状を送っている党内最右翼だ。まさに錚々たる猛毒の顔ぶれであり、野田佳彦が今後何をするのかをよく示唆している。維新と自民に対して、そして国民に対してのメッセージが赤裸々だ。マーケティングの碩学だった村田昭治は、「人事こそ最大の戦略である」と言っていたが、この極端で過激なタカ派人事の内容に、野田佳彦の本性と政治戦略が凝縮されていて分かりやすい。

早速、党内でこの偏った人事に不満が出ていて、枝野幸男を支持したグループが会合を開き、「露骨な論功行賞人事だ」と反発の声を上げたと報道されている。人事を発表した 9/24 の両院議員総会の様子を、同夜の報道1930が映像で流していたが、会場出席者が異常に少なく、前日 9/23 の半分未満という疎らな印象だった。どうやら、サンクチュアリのメンバーが欠席したり途中退場していたらしい。党の一致結束をアピールすべき新人事発表の両院議員総会で、これほど欠席退席の数が多いと、新人事が党全体で拍手承認されたという形式と結論は整いにくい。同意了解の正統性(Legitimacy)に疑問符がつくだろう。一部党内から公然と批判が発信されている現状では、世間的に「ノーサイド」という認識にはならず、後藤謙次がコメントしたように「火種が残った」という見方にならざるを得ない。

9/25、朝起きてPCを立ち上げると、Xのトレンド欄に「消費税25」のキーワードが立ち、小川淳也の持論に対して怒涛の批判が浴びせられていた。一日中それが続き、「消費税25%」は小川淳也の代名詞となった。本人は10年以上前から「消費税税率25%」を言い続けているらしい。狂信的な増税原理主義者だった。なるほど、単なる論功行賞ではなく、それがあるから野田佳彦が抜擢したのかと、私を含めて有権者はよく理解できたし、野田佳彦が何を狙っているかが明確に察知できたと思われる。今後、消費税増税論議がマスコミの手で持ち出され、中身不明の「教育無償化」を口実に、野田佳彦の手で「税と社会保障の一体改革」の令和版が仕掛けられるだろう。財界がキャンペーンし、消費税15%を固める与野党合意の謀略が進むに違いない。選挙で野田野党が勝っても、自民党が勝っても、どちらが勝っても消費税15%から逃れられない環境に固められるはずだ。

この党には保守とリベラル、右派と左派の対立が厳然と存在する。マスコミや国民の前では目立たないように、消えたように必死で化粧し演出するけれど、あるものはあるのであって、物理的に否定できない事実であり、路線対立はこの党が生まれながらに抱える宿命的生理なのだ。私は20年間のブログ活動で何回この説明をしたことだろう。煩を厭わず繰り返すが、政党とは、政治の志を同じうする者の結社である。理念が同じ同志が集まって、理念を実現するべく政治運動するのが政党だ。それが政党の本来の定義である。だが、いま立憲民主党と呼ばれるこの党は、政党の概念を逸脱して誕生した政党であり、無理やり人工的に作った「二大政党制のための小選挙区制」というシステムに合わせて、自民党と「政権交代」する野党として化合製作された党に他ならない。理念が同じ同志が集まって結成されていない。

何度も言ってきたが、市民が、どうか小選挙区制を実現して下さいと請願したことは一度もない。国会前をデモした事実はない。逆で、小選挙区制反対のデモや署名運動は幾度もあった。国民が下から求めて実現した制度ではない。財界とマスコミと学者がそれを求め、上から強引に宣伝扇動し、国民世論の多数を作り上げ、反対派を押し切って実現した制度だ。40年前の出来事である。そこで出現したのが小選挙区制と民主党で、民主党は右と左のつぎはぎ寄せ集めの集団だった。結党に参加した者が今でも幹部でふんぞり返っている。つぎはぎ寄せ集めの、小選挙区制用に急造された政党だったから、参加した者の理念は一致しておらず、党の綱領も制定されなかった。「政権交代」だけがスローガンで、今でも政権交代を自己目的のように唱えている。本来は手段である政権交代を目的としてずっと掲げ続けている。

以上が何十ぺんも繰り返してきた民主党論(立憲民主党論)であり、「政治改革」批判の要点だが、この指摘が定論とならなかったのは残念であり、大袈裟に言えば私の人生の無念である。9/25 の報道1930に馬場伸幸と玉木雄一郎が出演していた。二人とも、立憲民主が路線を明確に右転換して、9条改憲を方針に据え、リベラル政党から保守政党に変わることを要求、その一致ができれば共闘や合流が可能だと垂れていた。現在、維新の党勢は極度に落ち目にあり、選挙区の現職議員が弱気になっていて、立憲民主との選挙協力態勢を求め、独自路線で突っ張る馬場伸幸と対立状態になっているらしい。したがって、維新との関係で野田佳彦に追い風が吹いていて、選挙区での維新との候補者調整はかなり有利になっている。松原耕二を筆頭に、マスコミはそれを猛烈に催促し後押しするだろうし、反共ヒステリーの芳野連合も歓迎するだろう。

野田佳彦の腹の中は固まっていて、改憲保守政党への脱皮を目指し、改憲に逡巡する左派議員を排除する覚悟ができているに違いない。国民民主との再合同を機に石垣のりこや杉尾秀哉らを斬り捨てる。前原誠司が7年前に失敗した「排除の論理」を再現し、保守政党(第二自民党)として純化する思惑なのだ。無論、左派議員が転向して野田執行部に従えば、問題なく党全体で右転換が成就する。その地平は迫っていて、総選挙を機に大きな党内政局となるだろう。何度か言っているように、国民民主との再合同の際に党名を民主党に戻し、右派にとって目障りな立憲の二文字を削除するはずだ。立憲の二文字はこの党の左派リベラル性を象徴している。ゆえに、野田佳彦と玉木雄一郎は、7年前の枝野新党立ち上げの意義の完全滅却を目論むのである。そうすることで、前原誠司の出戻りの道を用意し、前原誠司をブリッジにして維新と組む段取りを敷くと予想される。

憂鬱な野党再編の季節がまたやって来る。前回の記事でも書いたが、結局、今回の立憲民主党代表選を通じて、(1) 安保法制廃止、(2) 消費税5%、(3)原発再稼働阻止、の三つを求める民意は完全にスポイルされる結果となった。三つの政策は野党第一党から蒸発した。この三つの政策を求める民意は総選挙でどうすればよいのか。現状、それは日本共産党とれいわ新選組が吸収するという形になるけれど、二党は弱小であり、支持が低く、モメンタムに期待が持てない。大きな議席と勢力を獲得する展望がない。それがため、(1)(2)(3)の要求そのものが公論の中で異端化され、選挙に反映されず、現実政治において民意として意味のない空論という状況に押し込められるのだ。だが、その要求や民意に意味がないということはない。本来なら、選挙区の投票全体の4割は取ってもいい政策主張であることは明白だ。野田野党が裏切りに出たことで、(1)(2)(3) が第3極の論理的基盤を作ったと言える。

すなわち、市民はそれを必要とする。そのため、論理的構想のレベルでは、自民党と野田野党の一対一の構図ではなく、そこにラディカルな第3極が割り込んだ三つ巴の図が説得的に描かれ得る。要するに受け皿の問題であり、(1)(2)(3) の有力な受け皿が物理的に存在しないこと、既成左派政党が弱小過ぎ、言葉が弱く、能力に乏しく、人々の期待を集められないことが問題なのだ。ドン・キホーテ的な夢想・空想と受け取られるかもしれないが、私は、もし衆院選で(今年の韓国やフランスのように)奇跡的に65%の投票率が達成された場合は、それは左派の渾身の言霊がそれを掘り起こしたときだと確信する。眠っているのは左派の主張に呼応する票だと考える。日本でも、曹国やメランションやワーゲンクネヒトや、コービンやサンダースの政治が実現できるはずだ。


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