農業

「若くて頭が柔軟なうちに農業を学び、経営者として六次産業の成功者を目指す」

「早期退職をして、田舎へ暮らしを移し、食べていける程度の農業にいそしむ」

就職活動で、一度は真剣に農業をしようかと悩んでいた。しかし、会社向きではない気がしていた自分は、かといって、縁もゆかりもない土地へ身を投げ打てるほど勇気もなかった。

結局は都心部で会社員となった今も、「農業」というワードには興味を惹かれる。特に、それにかかわるライフサイクル上の時期や、生計を立てている人の苦労話なんかには弱い。

自分の知恵と体を使う仕事だとわかっているから、やはり若いうちのほうがいいのだと思う。

歳を重ねてから始めるには、少々荷が重いだろう。

確かに早期退職をして、農業をやるための資本という貯金をもって、田舎へ向かえるのはいいかもしれない。消費生活に対する欲求も、ある程度満たされて、あとはもう、自然に沿った生き方を・・・というのも、なかなか美しい話だ。だがそう簡単に、異なる基準とファシリティの不足する生活になじめるだろうか。

数多の農業経営者たちが常に直面している、金銭問題。

物々交換と労役のやりとりで生活が成り立っていたのは、本当に昔だけ。なぜ、それが出来なくなったのかといえば、金銭で生活のすべてをまかなう社会が、メインスタンダードになった時代だからだ。

過疎が進み、災害が起きても、その実態が確認できないほど人がいない地方と、人が増え続ける都市部。その両者が間違いなく繋がっているからこそ、人は移動し、それぞれの生活基準に影響を与え合う。

一向に上がらない日本の労働生産性は、もしかしたら農業分野での生産に、国策レベルで注力していないせいなのかもしれない。

情報技術が進んで、量子コンピュータなるものも登場している。一度生み出してしまえば、あとは管理場面でしか必要とされない物悲しさ、レクリエーションの主体として、「サービスの顧客」という立場で生かされるだけの人間にはなりたくない。

人間が、「生産」の場面で、本当に必要とされる産業はどこに残され、またどう生み出していけばいいのだろう。

農業にその希望を見出したい。

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