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自叙伝「#車いすの暴れん坊」#8    先輩たちに恵まれた規格外の高校生活

高校1年の冬、夕食の食材に豆腐と揚げの買い物をお袋から頼まれて、ママチャリでスーパーに向かって走っていた。

この寒いのに買い物なんか頼みやがってと、むしゃくしゃしながら家路を急いでいると、道の向こう側を二人乗りしたアンちゃんが、アポロキャップを被って、こっちにガンをつけている。あんなしゃばい格好してなにもんやと思いながら、平行して走っていると、道路をこっち側にわたって来た。


「おい兄ちゃん、お前、このへんのもんか」
「おう、このへんや」
「お前このへんで誰か知っとる奴でもおるんか」

ちょうどこの先に、暴走族の頭の紅(仮名)の総長の家があることを知っていた。普段から可愛がってくれているんで、まあこの時間やったらおるやろうと思いながら、
「紅の福山(仮名)君なら知っとるけど」と、
「お前なあ、紅の福山とか知っとてもな、話にならんたい。付いて来いこら」

なんやこいつ、しゃばいくせに付いて来いやら。福山君とこ行ったら、こいつコテンパンにやられるぜ、と思いながら、一緒に福山君のところに行った。福山君もたまたま家にいた。

イケてないこのアポロキャップ野郎が、
「おい福山、お前、こいつ知っとうとや」
「おう知っとおよ」
「こいつね、俺にガンつけてきたんぞ。お前、どういう教育しとうとや」
「え、そうなん。こら仁、お前、こん人誰か分かっとるんか」
「いや俺、知りません」
「おいお前、来いこら」
「アウトブレイク(仮名)の吉良(仮名)さんぞ」
「え、アウトブレイクの吉良さんですか」
「それは知らんこととはいえ、失礼しました」
「びっくりするな、お前」
「俺がいくら可愛い格好しとるからいうて、俺も久々にガンつけられた」

知らないことが幸いした出来事だった。アウトブレイクの吉良さんは、なにを気にいってくれたのか分からないけれど、それからもよく、会うと煙草をくれたり、ジュースをおごってくれたり、よく可愛がってくれた。

俺は汽車通いで、筑肥線で小笹駅から高宮駅まで行くのだが、高宮駅でよくアウトブレイクがたむろしていて、よく戦闘服に警棒を持って立っていた。

吉良さんは、そんな福岡でも伝説の暴走族のリーダーだった。俺はなぜか知らないが、人に恵まれていた。

今まで話してきた喧嘩の話でも、一歩間違えばボコボコにされて、それこそ不良、ヤンキーの世界から追放されてもおかしくないような喧嘩に発展したかも知れない。

けれど、その度になぜか可愛がってくれる先輩たちに恵まれ、お陰で真面目な学生生活で終わることなく、思い出多き規格外の高校生活を満喫できた。

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ユニバーサル別府

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