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「山のあなた」

山のあなたの 空遠く
「幸」住むと 人のいふ
噫われひとと 尋めゆきて
涙さしぐみ かへりきぬ
山のあなたに なほ遠く
「幸い」住むと 人のいふ

「山のあなた」〈カール・ブッセ(上田敏 訳)〉

 幸せって雲を掴むことに等しいのではないか。        

 「幸せ」を見たいとき、文字通りの「幸せ」なんてものはなくて、環境とか体験とかなにか一枚挟むことで、ようやくその片鱗を感じとる。

 ところが、その覆った布をひっぺがして、正体を見ようとするとたちまちどこかへ逃げてしまう。

 そうして、人々は涙さしぐみ帰ってくる。でも、それでいいのだと思う。きっとソレを「幸せ」と名付けた人も知らずに死んでいったのだろう。

 崇高な言葉だ。だから、幸せは見つかってはいけないよ。目に触れるとそれは幸せではなくなってしまうから。もっと遠くへ逃げろ。追いつかれちゃうぞ。

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