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Y:28【読書メモ】Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

内容(「BOOK」データベースより)
深い学びを得るにはいったい何が必要なのか?子どものころに学習困難を抱えていた著者が、多くの実証研究調査と、学びの専門家への取材を通してたどり着いた、小手先のテクニックではない本質的な「学び方」。米Amazon2017年ベスト・サイエンス書。 (Amazonのページより)

【読んだきっかけ】

勉強の仕方は人それぞれあって、私も自分流のやり方を試行錯誤しながら探しているが、まだまだベストだとは思っていない。仕事柄、勉強の仕方を教える機会もあるのだけど、どうしても自分の経験上のバイアスがかかるので、もう少しニュートラルに考えを引っ張りたく、科学的な視点から「勉強の仕方」を書いた本を読んでみたくて、選んだ。

【感想】

この本は、学習に関する研究を幅広く集めてきて、書かれているので、何となく聞いたことがある話がよく出てくる。

かなりたくさんハイライトをした(←実はこれは学習面ではあまり意味がないということがこの本には書いてある)。

そりゃそうだろという部分も多い。一方でこれまで自分がよいと思っていた方法があまり効果がなかったり。学習者としても教師としても興味深く読めた。ただ、私には分量が多く、読むのに時間がかかり、内容を消化しきれていないので、以下に自分の理解をまとめる(←何度も読むより、自分の言葉で説明する方が学習効果があるということがこの本には書いてある)。

【まとめ】

イントロダクション

ここでは、以下の章で何を述べていくかが書かれている。専門知識を身につけるために体系的なアプローチが必要で

価値を見いだす⇒目標を設定する⇒能力を伸ばす発展させる⇒関係づける⇒再考する

とある。この順で章が進んでいく。学習は能動的に頭を働かせる「活動」であると同時に、フィードバックやモニタリングなどの「管理」も重要。このあたりは、そりゃそうだろ部分。

第一章 価値を見いだす(Value)

何であれスキルを習得するうえで、モチベーションは最初の一歩である。(412)

当然だが、モチベーションは大事。価値、意味、自分との関連性を見つけろと。こんな問いかけ。

この学ぶ対象は私にとってどう価値があるのか? どうすればもっと自分に関連性があるようにできるか? この知識を自分の生活にどう利用できるか? (576)

自分と関連付けていかないと記憶するのが難しい。

<知らなかったポイント>蛍光ペンでなぞるやり方は学習にあまり効果がない。←能動的な「活動」ではないから。自分で自分に問題を出したり、自分に説明してみたりするような、能動的な学習活動が最も効果が高い。

学習には指導と支援が必要で、メンターやトレーナーやインストラクターが果たす役割はいずれも非常に大きい。このあたり、教師の役割が変わってきている話と重なる。

高い成果を上げる教師は学生を、頭を働かせる「活動」としての学習に深く関与させる。また、優秀な教師はモチベーションと支援を与える。学生が学習に意味を見いだす手助けをし、自主性と自分に関連性があるという感覚を与える。 (1080:要約)

第二章 目標を決める(Target)

やみくもに勉強してもダメで、目標設定、計画策定、前提となるスキルの習得、習得したい専門知識の絞り込みを行うことが必要。

「学習を進めながら計画を変更するのはかまわないが、計画は絶対に必要です」(1172)

不安や恐れは学びの効果を下げる。

学びの効果が最も高いのはまだ理解していないものの中で最もやさしい題材を学ぶときである。(1369)

「i+1」の別の言い方みたいな。

メタ認知が重要。「何がわからないかわからない」のはやばい。このあたりは自己効力感ともつながっていて、自分が何ができて、何ができないのかを自分で理解していないと学習は難しい。自己効力感があれば、モチベーションの維持にもなる。

メタ認知とは結局、自分に投げかけるいくつかの問いにほかならない。自分がわかっていることはどうしたらわかるのか。あやふやなのはどの点か。理解度を測る手段はあるか。このような問いには大きな効果がある。学習に関しては、メタ認知はしばしば地頭の良さより重要だ。(1551)

第三章 能力を伸ばす(Develop)

メタ認知の手段として「モニタリング(内)」と「フィードバック(外)」

フィードバックの方がモニタリングより効果が高い。

その大きな理由は、自分のミスにはなかなか気づきにくいことである。モニタリングしていてさえ、ミスのすべては発見できない。これが学習の本質、知識の本質であり、ここでもまた「教育者の価値」を思い知らされる。的を絞ったフィードバック、外部からの判断をしてくれる他者が必要なのだ。(1,989 )

フィードバックというのは、学習者にとっては「間違い」「失敗」になるのだけど、これは学習の過程では「当然」のこと。ここで感情的に落ち込んでしまうと、短期記憶に悪影響を与えてしまう。ここらへんで、レジリエンスマインドセットの話も出てくる。ポジティブにいけ、失敗はふつうだということ。

第四章 発展させる(Extend)

学習とは知識の発展、専門知識の領域の拡大とも言える。学習プロセスのこの段階においては、理解を深化させなければならない。(2,550)

少しわかりにくい章。わかったつもりでいることが、本当にわかっているか。わかっていないと縦に掘ったり、横に拡げていけないという話だと思う。前章までが短期記憶の話で、ここから長期記憶の話へ。

概念の要約が効果的。授業の終わりに、今日、勉強したことについて「要約」するのは効果的。学生だったら嫌だけど(笑)こういうのが頭を働かせる「活動」。

(概念の)説明、議論、応用、分析←知識領域を広げる方法

だから、「人に教える(説明)」「はっきりと定義されないものや不確実性を受け入れる(議論)」「疑問を持つこと(分析)」は学習に効果的。

第五章 関係づける(Relate)

前章までが、知識を縦横に拡げていくとについて書かれていたとすれば、この章はそれを既存の知識や自分自身の環境とどう「結びつける」かについて書かれている。

思考実験、システム思考、問題解決、仮定思考、ハッキング、アナロジーとかキーワードが出てくるが、要は、実際に知識を使って試行錯誤することが、学習効果を高めるのに大事だと言っている。

結局、知識を持ってるだけではどうしようもなくて、それを現実場面でどう生かしていくか考え、試し、知識で何ができるのかを知るという過程(思考実験、ハッキング、アナロジー、問題解決)こそ学習だと言っている。

第六章 再考する(Rethink)

過信の問題

過信は効果的な学習をおおいに阻害する。自分を過信していると、人は勉強しない。練習しない。自分に問いかけを行わない。過信はとりわけ、知力を鍛えるタイプの学習に取り組む邪魔をする。(3,756)

過信があることで、学習が本当に自分のものになったかの確認も行わなくなる。学習の最終段階は自分の知識を再考すること

私たちは実際よりも自分がよく知っていると思い込みやすいのである。( 3,794)

簡単に学んだテーマは忘れるのも簡単。TEDトークのようにわかりやすい動画は、かえって学習の妨げになる。わかりやすいものに人は努力しないとのこと。これは面白い。教師としては、わかりやすい授業を目指すことは多いのだけど、これが場合によっては学習者の過信をまねくかもしれないと言っている。

学習における過信の第二の重要な要因、すなわち過去の実績である。以前に体験したことは学習の判断に影響を与えがちだ。化学のテストで常に優秀な成績をおさめていたら、たとえ次の試験が前の試験よりずっと難しいかもしれなくても、試験勉強をしない可能性が高い。(3,830) 

徹底的な再考

カーネギーメロン大学のマーシャ・ラヴェット教授は講義の後で学生に一問か二問の課題を与えることがよくある。この質問をラヴェットは「仕上げ」と呼んでいる。授業の一環として、学生に「自分は何を学んだか? 理解しづらかったのはどこか? わからないと思えるのはどこか?」と自問させるのである。(3,935)

つまり、わかっていることとわかっていないことを自覚させることが大事と言っている。そこで「小テスト」の重要性をあげている。

評価の種類にはもう一つ、小テストがある。これも自分がわかっているかどうかを知る手段となる。心理学者のリーガン・グルンのような学習の専門家は学生にたえず「自己テストをしなさい、教科書の巻末にある質問に答えなさい、模擬試験を受けなさい、できるだけ小テストする機会を持ちなさい」と呼びかけ、この事実を意識させている。グルンによれば効果はすぐに現れる。 (4,004)

忘れないためには学習期間を長期間に分ける分散学習が効果的。忘却曲線を念頭においたアプリ(Anki)などを利用して学習をコントロールするとよい。試験で高得点を取るためには、試験勉強を早く始め、時間的に分散させ、自己テストを行うとよい。

内省も大事。

内省には自分の学びについて再考する機会以上の効果がある。熟考そのものにも教育効果があるのだ。この観点からは睡眠も興味深い例で、私たちは睡眠のおかげで自分の思考を理解することがわかっている。(4,212) 

スローシンキングや瞑想もよい。

 どのアプローチを取るにしても、重要なのは時間だ。内省的な思考に取り組むためには、考えたり、書いたり、ただ思いを巡らせたりするための邪魔の入らない長い時間が必要である(4,313)

エピローグ

学習支援に必要なのはアドバイスだけではない。本やハウツーガイドや多少の練習だけで終わらせてはいけない。私たち誰もが学習プロセスをマスターしなければならないのだ。私たち誰もが、学び方を学ばなければならない。(4,527)

ツールキット

エピローグで「ハウツーガイド」だけで終わらせてはいけないと書いているのだけど、ここにハウツーガイドがある。ここを読むだけでも価値がありそう。

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