社外取締役の役割と責任

最近では聞くことが多くなった「コーポレート・ガバナンス」ですが、「企業統治」などと和訳されます。

今回は、知っているようで理解していない「コーポレート・ガバナンス」について、世間的に注目されている社外取締役という視点で解説します。

そもそも、なぜ「コーポレート・ガバナンス」が必要か?

株式会社の所有者は、出資者である株主です。

株主から委託を受けた経営陣が会社を運営し、得た利益を株主に配当するという仕組みが株式会社です。

本来であれば株式会社は「所有と経営の分離」を前提としていますが、この点をあまり理解していない方は意外と多いと感じます。

近年、コーポレート・ガバナンスが徹底されている理由は、企業の不祥事が相次いだこと、本来であれば経営陣の監視機能を期待される株主が十分に経営陣をチェックできていないことなどが指摘されています。

特に、中小企業の場合、実質的には、株主と経営者が一致(同一人物)することも多く、株主からの監視機能が十分に果たせないことがほとんどです。

コーポレート・ガバナンスは、企業活動に対するブレーキであり、経営者は事業拡大・利益獲得のために積極的な活動を展開しますが、行き過ぎた経営判断がなされないよう、また、経営者が会社財産を私的流用しないようにチェックすることに主眼があります。

社外取締役とは?


日弁連が提言しているガイドライによると、以下のように記載されています。

「社外取締役は,それぞれの経歴や専門性を背景に,社会における一般常識,会社経営に関する一般的常識並びに取締役及び取締役会の在り方についての基本的理解に基づき,取締役の業務執行について,企業戦略等の大きな方向性を示し,適切なリスクテイクを支え,経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行うことにより,ブランド価値,レビュテーション等の社会的評価を含めた企業価値を持続的に成長させて中長期的に向上させ,かつ,企 業不祥事等による企業価値の毀損を避けるため,内部統制を含めたガバナンスや法令遵守等経営全般のモニタリングを行い,会社と経営陣,支配株主等との間の利益相反を監督し,また少数株主を始めとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させることや,業務執行に関与しない範囲でアドバイスを行うことかが期待されている。」

(ガイドライン全文については、こちらをご覧ください。)

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/activity/data/guideline_190314.pdf

つまり、社外取締役には、経営陣の監督、株主の意見を経営に反映、業務執行のアドバイスなどが期待されています。

そして、コーポレート・ガバナンスを実践する際には、経験豊富な社外取締役をおくことが一つのポイントとなります。

社外取締役の役割


社外取締役として期待される役割としては、次のとおりです。

取締役会の一員として経営判断に関与
•株主総会への出席、説明義務
•経営陣の監督
•不祥事の対応
などが挙げられます。

社外取締役は、自ら業務執行をするのではなく、代表取締役や取締役などの業務執行を監督し、アドバイスすることが主な役割となります。

社外取締役の責任


社外取締役は、その他の取締役などと同様に経営責任を負います。

特に、監督責任がメーンとなります。

そのため、社外取締役が、期待される監督を怠った場合などは、会社や債権者に対し、損害賠償責任を負う可能性もあります。

社外取締役の可能性について


大企業や上場企業においては、コーポレート・ガバナンスの整備が進んでいますが、中小企業においてはコーポレート・ガバナンスの徹底はまだまだ発展途上です。

理由は多種多様ですが、費用の問題やノウハウがないことなどが挙げられると思います。

もっとも、上述のとおり、企業統治の専門家である社外取締役を選任し、同人に対し、コーポレート・ガバナンスの整備を一任することなどで、ある程度解消できると思います。

そこで、中小企業においては、今後、積極的に社外取締役を導入するなどして、コーポレート・ガバナンスを整備すると良いと思います。

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