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「ぷよぷよ」の主人公が女の子だったわけ

コンパイルの社長だった仁井谷さんの記事を読んだ。

「ぷよぷよ」の生みの親は誰なのか、については、「ぷよぷよの生みの親は誰だ」という詳細なテキストを書いたのでそちらを参考にしてほしい。

今回は、それ以外の部分で、一箇所だけツッコミたいところがあったので、突っ込んでおく。とはいえ、これは、基本的に米光一成の視点からのツッコミで、どちらが正しいどちらが間違っているということではない。

開発現場で企画監督をやっていた米光一成と、会社の社長でプロデュースをしていた仁井谷正充とでは、違う視点から観ているということでしかない。

なのだが、

「いや、リスクじゃなくて、現場が作る。彼らは自分の好みで。もう女の子が大好きだから。ギャルが好きだからギャルを出したい、それだけです。それをもう許容したというか。

って言われると、えええーって驚きはする。
主人公が女の子なのは「ギャルが好きだからギャルを出したい」ではない。っていうか「ギャル」って

あの頃には萌え要素がある女性キャラクターがメインだった作品はまだほとんどなく、同作の前面に出ていた『アルル』というかわいいキャラの存在も人気爆発の要因でしょう。
「ああいう世界観というのを許容したのが自分だし、つまりは私はそういう人間だということ。だから『ぷよぷよ』というのは私だよね」

このへん仁井谷さんは基本的にフェアで、自分が考えたとか自分が作ったとは言わない。ちゃんと「ああいう世界観というのを許容したのが自分だ」と正確に語る。
あの世界観は、米光や、開発のメンバーで作り出した。社長はちゃんと許容してくれた。

作り手であるゲームオタクの男の子、女の子たちは、そういうかわいいキャラが好きなんですよ。もうそれだけですよ。結局、彼らの好みでそういう路線がもともとあったということですよね」

この「作り手であるゲームオタクの男の子、女の子たちは」っていうのが、米光であったり、開発メンバーのことなんだろうけど、まあ、外側からは、そう見えたんだろうなーと微笑ましく受け止めよう。だが、少なくとも、米光や「ぷよぷよ」の開発メンバーは、そういう単純な好みで設定を決めていない。

「ぷよぷよ」のキャラクターは、その前に作った「魔導物語」というRPGのキャラクターを使っている。「ぷよぷよ」の主人公の女の子「アルル・ナジャ」も、「魔導物語」の主人公だ。

「魔導物語」は、当時のRPGのアンチテーゼとして作った作品だ。当時のRPGは、マップの大きさや、モンスターの数を競っていた。「モンスター120体以上!」とか「ダンジョン70フロアー以上」とか数が多いことをウリ文句にしていて、それのアンチテーゼだったので、マップが狭いとか、モンスターが少ないとか、そういったことを自慢した。でも、小さいけれど美しい結晶みたいなキレイでこだわりのあるRPGを作ろうというのがコンセプトだった。(その反動で、三部作にまとめた「魔導物語1-2-3」を出すときのキャッチコピーは「人類はこのゲームを遊ぶために38億年かけて進化してきた」と大仰にした)

主人公も、当時のRPGが「勇者」であり「男の子」であり、目的が「世界を救う」っていうものばかりだったことのアンチテーゼとして、主人公は「女の子」であり「魔導師の卵」で、「世界を救う」なんてことは微塵も考えてなくて、迷子になったり、しもやけ薬を探したり、日常的な冒険をするという作品にしたのだ。

というわけなので、

彼らは自分の好みで。もう女の子が大好きだから。ギャルが好きだからギャルを出したい、それだけです。

ではないんだよーー!


以下、2009.07.23 に書いた「『魔導物語』20周年記念メモ」のちょっと改稿版。(2023/08/28追記)

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