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『コンサル0年目の教科書』の感想など

本の概要

著者の古谷昇氏はBCG出身のトップコンサルタントであり、本書も若手のコンサルタント向けの本なのですが、世間一般のコンサル本とはずいぶんと毛色が違います。問題解決のための系統立てられたアプローチがまとめられているわけでもなければ、MECEという言葉すら出てきません。一人前のコンサルタントになるためのコツ、あるいはビジネス一般に応用の効くノウハウを、著者独特の切り口でまとめた本が本書です。
章立ては以下のようになっています。

第1章 アッという間に一流になれる仕事の学び方
第2章 戦略的思考が知恵を生む
第3章 人と決定的に差がつくうまい仕事のやり方
第4章 仕事を通じて実践力を身につけよ

『コンサル0年目の教科書』目次より

個人的には、第1章と第2章の内容は非常に興味深く、学びや気づきがありました。

コツの会得と本質の理解

第2章では、何かを習熟するにあたっては、手法やテクニック、知識を学ぶことよりも、まずはコツを会得することの重要性が述べられています。具体例としてプレゼン上達法のコツが示されています。

①声を大きく
②スライドを見ない
③テンポを変える

『コンサル0年目の教科書』第1章より

これらのコツは、誰でもできる単純なものです。単純ながらも、背後には重要な本質が原理が存在することがポイントです。たとえば、②の「スライドを見ない」については、聞き手の方を見ることで話に説得力が増し、さらには聞き手の反応を見て軌道修正をかけることも可能だと著者は述べています。

これを読んで、私は『レガシーコードからの脱却』のプラクティスの話を思い出しました。

プラクティスの定義は以下とされています。

・ほんとんどの場合に価値があるものである
・学ぶのが容易である。教えるのが容易である
・実施がシンプルである。考えなくてもやれるくらいにシンプルであること

『レガシーコードからの脱却』第4章より

プラクティスの背後には重要な設計原理や設計原則がありますが、それらの理論を深く理解することは容易ではありません。そのため、プラクティスの実践を通じてまずは「型」どおりに振る舞えるようになることを目指します。

プラクティスの実践を通じて背後にある原理原則の理解を深めることが重要なように、コツを掴むということは、それを通じて対象の本質を理解し、単なる知識ではなく様々な場面で応用の効く知恵に昇華させるということが肝要なのだと思います。

要は、ほんとうに何かを身につけるには、誰かから教えられてもダメで、あくまで自分で事の本質をつかんで学び取るしかない。

『コンサル0年目の教科書』第1章より

戦略とは何か

第2章では、戦略について述べており、まず戦略の基本要素は以下の二つだとしています。

①差別化が利益を生む
②戦略とは資源配分である

『コンサル0年目の教科書』第2章より

①の差別化ですが、世間のニーズに合った商品を開発すれば売上を伸ばすことは可能だが、他の誰かでも作れるものならば競争原理がはたらいて大きな利益を出すことはできない、ゆえに他との差別化が重要だということです。

そして差別化によって競争優位を生み出すためには、資源を集中させる必要があります。いま会社が持っているリソースには制限があるからです。

どこかから手を抜いて、そのぶんをどこかに集中させることで、結果としてより大きな成果を得る。いってみれば、戦略の本質はこれだけのことなのだ。

『コンサル0年目の教科書』第2章より

つまり②戦略とは資源配分、ということです。
ドメイン駆動設計(DDD)における戦略的設計とは、まさにこのことです。ビジネスに競争優位をもたらすコアドメインを見極め、うまく境界分割を行い、資源(優秀な開発者)を集中的に割り当てることで、早くて安全なフローを実現し、企業に利益をもたらしたいのです。

この戦略の二大要素を理解した上で、戦略づくりの五大ポイントとして以下が挙げられています。

①マクロ思考
②切り口の選択
③競争
④トレードオフ
⑤定量化

『コンサル0年目の教科書』第2章より

それぞれの詳細については、書籍をご参照ください。

ビジネス書の読み方

私は技術書が大好きで、技術書だけでも積ん読が大変な量になってますし、次から次へと技術書を読みたい欲求が強いです。ですが、ITエンジニアとしての幅を広げるために、一定量はビジネス書を読むことも必要だと思ってます。

ビジネス書を読んで得たものを最大限に活用可能とするために、ソフトウェア開発の技術的な活動と結びつけて考えてみることを意識しています。詰まるところ、顧客に価値を届けるために良いソフトウェアを作りたい、その活動をチームやステークホルダーとみんなで楽しんで行いたい、というのが私の仕事のモチベーションだからです。

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