はじめてのおつかい(創作漫才)


A:はじめてのおつかいっていう番組が好きなんですけど、あの親の気持ちになりたいので、子ども役をお願いしてもいいですか。

B:いいですよ。

A:では早速ですけど、おつかいを頼むところからやりますね。

B:はい、どうぞ。

A:おい、焼きそばパン買ってこいよ。

B:いやちょっと待ってくださいよ。そんなこと子どもに言うんですか?

A:まさか、子どもには言いませんよ。

B:なら、私にも言わないでくださいよ。

A:え、あなた子どもでしたっけ?

B:いや、ほんの少し前に私に子ども役頼みましたよね?

A:あー、そんなこともありましたかねぇ〜。

B:そんな感じなら、もう、子ども役辞めさせてもらいますよ。

A:えー、まだおつかいにも言ってないのに?あーあ、はじめてのおつかいは失敗かー。

B:失敗もなにもないですよ。じゃ聞きますけど、おつかいに行く気になるような声のかけ方しましたか?

A:あー、それはしてなかったかもしれない。次はきっと上手くやりますから!

B:はい、じゃお願いします。

A:等身大の君に伝えよう。おい!焼きそばパン買ってこいよ!

B:等身大の君にって何ですか?それに、さっきから、焼きそばパン買ってこいよ、って言ってますけど、そんなのヤンキーがパシリに言ってるイメージしかないですよ。

A:パシリとは?

B:その説明いりますか?

A:知らない人もいるかもしれませんからね。

B:分かりましたよ、説明しますよ。パシリというのは、自分より弱い立場の人に不当に用事を命じて使いに行かせる時に使われる言葉です。

A:あー、なるほど。じゃ合ってますね。

B:誰が弱い立場ですか。

A:あなたたちです。

B:私の他にも弱い立場の人がいるんですね。仲間がいてよかった。いやよくないよくない。

A:ということは、パシリとおつかいって、ほぼ同じってことですよね。

B:同じじゃないですよ。

A:同じでしょう?子どもという自分より弱い立場の人間に、親の欲を満たすためだけの用事を命じて使いに行かせる。。。ほらね。

B:ほらねじゃないんですよ。親の欲を満たすだけとか言わないでくださいよ。

A:だったら、どんな理由があっておつかいになんて行かせるっていうんですか?

B:おつかいを通して、子どもが成長していくところを見たいとか?

A:ということは、自分の子が買い物に行く姿を見たいっていう欲を満たしたいんですよね?親という立場を利用して。

B:言い方が悪いなぁ。はじめてのおつかい、好きなんですよね?

A:好きですよ!どこか嫌ってるような所ありましたか?

B:好きって言いながら、純粋に見てないような気がするんですよ。

A:どんな風に見ようと私の勝手でしょうが!

B:それはそうなんですけど、批判してるように見えちゃうんですよね。

A:どうして?毎回見て、毎回泣いてるっていうのに。

B:感動は、してるんですね。

A:ネットで何でも買えるのに、誰かのためにおつかいをするのは素晴らしいという刷り込みをされておつかいという名のパシリをさせられている子どもが、かわいそうでかわいそうで。

B:この漫才はフィクションです。




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