木の話7 法隆寺と釘
世界最古の木造建築、法隆寺のお話。
法隆寺の柱は千年もたせる為に、ヒノキを使いました。
ヒノキは針葉樹で導管がなく、外部からの水の浸入を防ぎます。また、ヒノキの中にタンニンと言う成分が多く含まれていて、腐りにくい木でもあります。
飛鳥時代の職人さんはこれらの事を感覚的に知っていたというのがすごいですよね。
法隆寺は釘を一本も使用していないことで有名でした。私もそう思っていました。
宮大工の方が、金属を使うことは、ノコギリで木を切るみたいなもんだ、だから釘は使わない、とか、釘は百年しか保たないけど木だけで作った建物は千年保つ、という話を聞いて、すごいなぁと思ったもんです。
しかし、実は重要な部分に太い釘が使用されていたそうです。
釘が使われていたと聞くとちょっと残念な感じがしないこともありませんが、発見された釘は雨に全く当たらないように使用されていて、ほとんど錆びてない状態で発見されたそうです。
飛鳥時代に打ち込まれた釘がほとんど錆びてないなんて、それはそれですごいですよね。
そういえば千年保つ釘、というドキュメント番組を見たことがあります。
普通釘というのはまっすぐ木に打ち込まれると思いますよね。木よりもずっと硬くて、木を突き抜けて入っていくからうまく機能すると。
ところが、その千年もつ釘というのはやわらかいそうです。木にさからうのではなく、木の木目や繊維にそって曲がるようにできているとのこと。
硬い釘は木を切り裂くので、割れたところから水が入って釘が錆びたり、木が腐ったりする。柔らかい釘は木を必要以上に傷付けないから、水も通さないし、密着して長く保つそうです。
こういう話を聞くとまた昔の職人さんは木のことをすごく良く知っていたんだなぁと思いますよね。
釘は強く固定できる道具ですが、錆びたりして緩んだら元にはもどりません。
しかし、釘を使わず木組みで作ったら、地震などの揺れや、気候による寒暖差から、もともと緩んだりしまったりするように出来ていて、部分的ではなく全体で強度を保つ仕組みになっているそうです。
これまたすごい話ですよね。きっちりと、ぴったりと作るんじゃなくて、遊びの部分があるから長く保つ。それを計算して作る。もちろん文字通り計算したんじゃなくて、経験でやられていたんでしょう。
木組みのすごさがクローズアップされたせいで、釘を1本もつかってない、という神話というか伝説ができあがったんでしょう。
でも実際は、釘と木組みと両方の良さをうまく活かして千年保つ建物が作られたんだなぁと思います。
綿密は施工技術と良質な木材の特性を利用して建立する飛鳥時代の職人技はすごいと思いますし、伝えて行くべき日本の文化だと思います。
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