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「あがのあねさま」コメンタリー(6話)


 本編はこちら。本編とともにお楽しみいただきたく。よろしく!


 年の暮れを迎える自衛隊新発田防衛センター庁舎。サンタの格好してる矢矧にトナカイのぬいぐるみかぶった能代さん。ほんと何やってんの……。幼稚園保育園のクリスマス会の支援なんだろうけど、という平和な年の瀬。でも2029年、ゴールの年はもう目の前。成果ぜんぜん上がってないよね。「処分されちゃうのかな」ってさらりと言うけど、ヤバいよね。

 そしてそんな年の瀬の保育園で聞いた労基署への政治家の介入。ここで労基署が「よく考えます」って答えるのは一見不自然に思えるけど、実はこれ労基署の目一杯の抵抗。「善処します」にすべきという意見もあったんだけど、そうするとホントに善処しなくちゃいけないでしょ? よく考えますは考えるだけで何もしなくてもいいのよ。……役所ってこんなことばっかり考えてる訳です。でも労基署もそこで抵抗してる。彼らにもそういう意地がある。

 そうしていると上越新幹線の切符が届き阿賀野型3人は東京へ出張。なんの話で呼び出されたのかというと思い当たることが多過ぎちゃう3人。ほんと何やってんの。でも能代さんもその労基署案件、実際調べに行っちゃったんだよね。こういうのに首突っ込んじゃうのが能代さんらしい。でもだから呼び出されるんだよ……。

 上越新幹線、めちゃ速く大宮に着きます。スピードアップしてるんです。それが可能になったのは新幹線の性能向上だけじゃ無くて規制緩和があるんです。2029年にはそういう進化があることにしました。なってほしいなあ。中央リニアが開通してたりね。3人が乗ってる新幹線はE07系。E8系が出来ちゃったあとの新型車なのでE9系を作るのを避けるために付番規則が変わってるという設定です。9は鉄道ではあんまり普通に使いたくない特別な数字なんですよ。

 そして首相官邸に着く3人。なんと3人の呼び出したのはときの総理大臣。そして詰問してくるのは総理大臣補佐官。直接言葉をかけないのがいかにも悪そうな感じ。これ、狙ってます。
 しかしそれに対抗するのはいつもの能代さんでは無く、なんと阿賀野さん。普段だったら能代さんの裾引っ張って「やめなさい」するのに。そう、阿賀野さんもいろんな思いが鬱積してたのです。啖呵切ってガンガン言葉で殴りまくる阿賀野さん。まさに無双……ッ!
 そして阿賀野さんが終えて「ほんとうに残念です」と言い残して帰ろうとする時、総理の直々の声が聞こえます。総理の「ありがとう」の言葉。そう、総理も立場が複雑で率直に動けないのです。この国はどうしてこうなってしまったのか。官邸を後にする阿賀野さんの「ため息しか出ない」はそれに向けられた言葉です。

 そのあと市ヶ谷の防衛省本庁舎に行く3人。そこで告げられたのは3人の驚愕の出自。オーバーテクノロジーの取得の秘密が明かされます。まあSFですからね。そこは諦めてください。でもそういう平行世界、多世界解釈の中でやっぱり追い詰まった未来の側から派遣されてきたのが阿賀野さんたちだった。荒唐無稽だけどまあこの話はそういうSFです。描きたかったのはSDGsだったわけだし。案外真面目にSDGs考えたんです。そういう中でなにかエンタメ物語的にそういう話できないかなと思ってやったのがこの「あがのあねさま」なんです。……やっぱり阿賀北ノベルジャムで賞が取れる話ではないですね。

 新宿に出る3人。気づいた総理の正体、それは新潟新発田であのショッピングモールの書店の前身の店によく来ていた高校生だったのです(!)。でも一発逆転はどうやっても無理。遅すぎた。そういう3人の上に広がる新宿再開発のビル。アニメだったら見せ場ですよね。小田急百貨店も京王百貨店も再開発建て替え計画が発表されてます。 

 なぜか埼京線で大宮経由で新幹線にまた乗って帰る3人。新幹線代ケチったんですね……せこい。また乗る新幹線もE07系。運転士さんが乗らない自動運転が採用されてます。さらりとこのE07系の車内設備を考えるのが楽しかった。ええ、テツですから。矢矧さんもテツです。でも新潟で大回り乗車するって、できるけどやるのはそーとマニアックな気がします。

 しかし新幹線に起きている異変。新幹線が暴走! でもこれ、実は白状するけど、新潟駅の車止めにぶつかる、って初稿で書いちゃってたんです。新潟駅に車止めないよ、って教えてもらえたので回避しました。そう、新潟駅の先に車両基地がつながってるので車止めはその基地なんですよ。でも調べてるうち新潟空港まで新幹線を伸ばそうって計画があることを知り、それを使いました。これ、あとでまた出てきます。ミスだったんだけどその訂正だけで無くそこから広げられて良かったなあと。

 調べるとグランクラスの車内で人質取ってる男が判明。事態を起こしているのもそいつ。この若い男、ヤバい奴です。変態だし……超時空変態でしたひいい。でもそれに気づいた阿賀野さんは思い切ったことで犯人の関心をひき、そのすきに矢矧さんが犯人を追い詰めます。矢矧さん、こういうところはうまいよね……。

 事件を解決して人質だったアテンダントさんが飲み物をくれます。上越新幹線ではこういうサービスは無いはずなのですが、まあいいやね。ねぎらわれた3人はすっかり旅行気分です。盛り上がった矢矧さんが最近できた寝台列車にも乗りたい、なんて言い出す。ほんと満喫してるなあ。

 で、さいごに多世界解釈をつかってこの話の構図が明らかになる。そう、これはもう一つの可能性なので、こうは鳴らない未来を我々は選択できるんです。そういうことを描きたかった。最後に「メリークリスマス!」で〆。

 ほんとはこれで「あがのあねさま」自身はおわりでよかったんだけど、思うところあってあと1話追加しました。というわけでもうしばらくお付き合いのほどを。

『あがのあねさま』本編はこちら。

文フリ東京出店予定。よろしくね!


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