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「あがのあねさま」コメンタリー(4話)

  本編はこちら。本編とともにお楽しみいただきたく。よろしく!

 4話冒頭のエコビレッジ。これ、私たちのチーム山米茶文庫のキレキレのデザイナー・ヤマシタナツミさんがネタにならないかと紹介してくれた阿賀北の施設です。ほんといろいろ助かりました……。

 ここでまた触れますが、チーム山米茶文庫、賞をいただきました。しかもチームメートの茶山日縁さんがグランプリとりました! すげい。いやー、茶山さんギリギリまで粘ったけど報われましたね。というわけでこの『あがのあねさま』は無冠に終わりました。まーしかたないよなー。でも爪痕残せたからまあいいかー。次から多分字数制限大幅に減らされるでしょう。うん。8万字もぶっこんだからね。ヒドイっ。

 でもほんと、ヤマシタさん大活躍でした。Twitterをあんなうまく運用するとは……。NoveljamでチームSNSの運用ってのはこれまで成功例が無かったんですよ。でも見事初の成功例となりました。『阿賀北いいねっか通信』、ほんとほっこりして良かった。

 というわけでこの「あがのあねさま」無冠に終わったけど、NGTの小熊さん對馬さんに紹介してもらうという僥倖に恵まれてほんと良かった。あとは力不足だったかなー、というところも。あともともと阿賀北ロマン賞のころから求められてないエンタメ小説をぶっ込んだのも、無理と言えば無理なんですよね……。わかっていたけどやってみたかった。こういう賞でエンタメが受賞することはまずないです。なにしろ相鉄賞っていう地元の鉄道会社の文学賞にもエンタメを5本もぶちこんでその全部が1次通過したんですが2次で全滅してますからね。というか何やってんだ私。もはやメーワクであろう……。

 鉄道小説大賞|相鉄沿線の街、人、自然。
https://www.tetsudoshosetsutaisho.com/
 (今でも著者名検索で米田淳一と入れると本文も全部読めます)

 というわけで(2回目)完全に場違いな作品をぶっこんだのでどう考えても無理だったんですが、それでも審査の先生たちはホント真摯に読んでくれました。ありがたい。まあ、これでこの作戦は無冠であるけれど作戦目標の一つは達成されたと思います。あと、阿賀北ノベルジャム、なんと賞金が出るんです。もうもらっちゃいましたけど。これは凄い! 今時文学賞で賞金でるなんて少ないですから、是非腕の覚えのある書き手や編集さんは挑戦してみてください。そうやって活性化してくれればこの作品も浮かばれるというものです。まあ、でも描いててずいぶん楽しかったんでいいんですけどね……賞がほしくないと言ったら嘘になりますが、それでも無冠でも意義深いことになった、と思います。

 というわけで(3回目)4話コメンタリーに戻ります。

 阿賀野さん、女性の能力が社会に生かされてこなかった歴史に触れます。普段から何か思うところあるんでしょうね。ちなみにこのエコビレッジでみんなが飲んでる食器、勘のいい人は気づいたと思いますが、チームメイト茶山さんの作品「宵闇の盃」の紅千、千代さんの作品ということにしてます。実は「あがのあねさま」と「宵闇の盃」は世界がつながってます。こういうのやると楽しいんですよね。

 冒頭から高校生が愚痴りまくるこの展開。でも普通に愚痴りたくなりますよね……。どうしてこういう状態になってしまったのか。それは今2022年の我々の責任の結果でもある訳です。コロナはなんとなく落ち着きそうな予感でいろんなイベントが2年ぶり3年ぶりで復活してます。でもウクライナへの侵略も続いています。そして数日前に知床で遊覧船の痛ましい事故がありました。でも! それに目を奪われてますが、SDGsは解決してません。むしろもっとゴールが遠くなってしまった。だけど放置していい問題ではないのです。でも放置しちまうんだろうなあ……。書きながら愚痴ってる2029年の高校生たちに謝りたい気持ちで書いてました。ほんと。

 でも矢矧さんすっかりジェラートを堪能。さらにここの温泉に入りたいとか泊まりたいとか。矢矧さんらしい……。こういうキャラが生きてくると、まだ小説諦められないなあ、って気になります。やめても何も変わらないのに。

 そこに容赦なく緊急発進命令。なんと3人に命ぜられたのは対潜戦、これ、ほんと架空戦記でもなかなか書かれない地味な戦いなんですが、でもこれ重要なんですよ。日本は海運なしに生存できない国なんで、潜水艦はまさしく日本を滅ぼしうる重大な脅威なんです。今は日本に哨戒機もいっぱいあるしその熟練したクルーも多いので安心してられますが、ちょっと気を抜いてその技量が途絶えたら日本は容易に飢えます。ほんとヤバいんです。海上自衛隊、今や世界第二第三の海軍に育ちつつありますが、日本はそれが必要な国なんです。そういう意味でここでは対潜戦を取り上げました。わかりにくいのは承知で書いた。でも伝わってほしいと頑張りました。

 今よりちょっと未来でも、海洋の利用は更に進むでしょう。この作品でも海中データセンターや洋上風力発電を扱いましたが、海底資源の活用も更に進むでしょう。特にロシアとの関係悪化で資源の値段が上がり、ますます海底資源の活用が必要になりそうです。だからこそ海のルールを守る必要、開かれたインド太平洋が日本の生命線になっていくのです。

 そんな中、阿賀野が自分を姉失格だと言います。難しい立場ですからね……。阿賀野さんは次女の能代がうらやましく思えるときがあるのかもしれません。姉って難しい。でもそこで三女の矢矧が空元気を出します。空元気も元気、ってのはパトレイバーのコミックにあった台詞ですが、こういうの、大事なんですよ。追い詰められたときにこそ空元気はほんとに助かります……。そういう修羅場はあります。

 そして能代は対潜戦で「急いで待て」とか「緊張してるけど退屈で仕方が無い」というところに突入します。これ、ほんと戦いではよくあるもので、ギリシアの戦記でもこういう時間を書いたモノがあったと思います。「レッドオクトーバーを追え」やゲーム「レインボーシックス」の生みの親であったトムクランシーはこういう時間の描写に優れることで一世を風靡しました。ほんと上手いんですよね……私も憧れました。トムクランシー、ボルチモアの保険屋さんだったのに「レッドオクトーバーを追え」でいきなりデビューいきなりベストセラーで、えらいことウケてホワイトハウスのオーバルホールに呼ばれちゃったんですもん。そりゃ私も憧れてすっかり人生狂っちゃう訳ですよ。(はい他人のせいにしないー)

 そして潜水艦を探知した阿賀野たちは追尾を他の海自の自衛艦艇に引き継ぎ、今度は北新潟特高圧変電所に向かい、そこで発電を開始して全国的な電力逼迫を解決します。そりゃめちゃ出力ありますからね……核融合ですもん。
 でもこうやって艦艇が発電所になったことは何度かあるようで、少なくとも朝鮮戦争で米艦艇が韓国に電力供給してたと思います。今の新しい艦艇はさらに今後レーザー兵器とか高出力レーダーを使うので発電能力をあげていますね。推進器も今はモーターでスクリュー回してたり。阿賀野さんたちは空を飛びますが、そういうトレンドも受けているのです。

 発電任務が終わり、阿賀野たちは約束したとおりに網代浜で海遊びと花火に興じます。アニメで言ったら水着回……まあそういうのもやってみたかったのですが、こう考えるとこれが阿賀北ロマン賞を受け継いだ文学賞で入賞するワケないですよね……残念!!

 というわけで(5回目)『あがのあねさま』本編はこちら。

 そして特報!

 第三十四回文学フリマ東京に向けて、コンプリート版『あがのあねさま』の製作が進行中! マジでやります。



 間に合うのかなあ、と思いますが、なんとかしたいと思ってます。
 というわけで(6回目)、続く!!



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