女帝 小池百合子/石井妙子

都知事選を控え話題の本書。都民ではないがゴシップ的な興味から読んでみた。

一貫して感じたのは恐怖。小池知事には横文字大好きの若作りオバサンくらいのイメージしかなく、女帝というタイトルに大げさだなー、と思っていたが・・・ぞっとした。小池知事は恐ろしい。強大な権力を持つが故の怖さではない。彼女は平気で他者を踏みにじる。あまりにも平然としていてそれが恐ろしいのだ。

本書の数あるエピソードの中でも特に強烈だったのが

  震災 から だいぶ 経っ ても、 被災者 の 厳しい 現状 は 変わら ず、 芦屋 の 女性 たち が 一 九九 六 年、 数人 で 議員 会館 に 小池 を 訪ね た こと が あっ た。   窮状 を 必死 に 訴える 彼女 たち に対して、 小池 は 指 に マニキュア を 塗り ながら 応じ た。 一度 として 顔 を 上げる こと が なかっ た。 女性 たち は、 小池 の この 態度 に 驚き ながら も、 何とか 味方 に なっ て もらお う と 言葉 を 重ね た。 ところが、 小池 は すべて の 指 に マニキュア を 塗り 終える と 指先 に 息 を 吹きかけ、 こう 告げ た と いう。 「もう マニキュア、 塗り 終わっ た から 帰っ て くれ ます?   私、 選挙区 変わっ た し」石井 妙子. 女帝 小池百合子 (文春e-book) (Kindle の位置No.2678-2683). 文藝春秋. Kindle 版.

この憎悪は一体どこからくるのか・・・

また、嘘も本書の重要なテーマだ。2016年の都知事選で対立候補の鳥越氏を「病み上がりの人」とバカにしたエピソード。

テレビ 番組 の 討論 会 で 顔 を 合わせる と、 鳥越 は 彼女 に 激しく 食っ て かかっ た。 「私 の こと を『 病み上がり の 人』 と 言い まし た ねっ」   彼女 は どう 詫び、 どう 切り抜ける つもり なのか。 私 は それ を 知り たい と 思い、 次 の 瞬間 を 見逃す まい と し た。   彼女 は おもむろに 口 を 開い た。 だが、 それ は 私 の、 まったく 想像 し 得 ない 答え だっ た。 「いいえ、 言っ て ませ ん ねえ」   テレビ を通じて、 おそらくは 何 十 万、 何 百万 の 人 が「 病み上がり の 人」 と 彼女 が 口 に する のを 見 て い た はず で ある。 それでも、「 言っ て ない」 と いう。 「言っ て ない って、 証拠 だって」   鳥越 の ほう が 取り乱し、 声 が 裏返っ て しまっ て い た。石井 妙子. 女帝 小池百合子 (文春e-book) (Kindle の位置No.77-83). 文藝春秋. Kindle 版.

もうほんとに怖すぎる。

一方、政治家としての実力はどうかというと、そもそも小池氏は政治なんてどうでもいいのだ。目立ちたい。華やかな成功者になりたい。それを実現する手っ取り早い方法が政治家だっただけだ。

なぜそんな人間がのし上がれたのか。答えは簡単。権力者に取り入るのが抜群に上手かったからだ。取り入るべき権力者を見極め、落ち目とみたらさっと乗り換える。それをするのが信じられないくらい上手かった。映画やドラマなら、どこかでどんでん返しがきて落ちぶれるのが相場だが、彼女は決して落ちぶれない。何度かピンチはある。あるんだが、ご存知の通り、彼女は現東京都知事なのだ。そして次期総理の呼び声まである。

ただ、全くの無能というわけでもなくPRの才能はあったようで、それを買われて政界への足がかりを掴んだし、メディアの使い方や魅せ方にはすごいなと思わせる部分がたくさんあった。でも近年はだいぶスベっていると思う。

巨大 な モニター に 動画 が 映し出さ れ た。   暗闇 の 中 を 靴音 高く 歩く 女性。 緑 の スーツ に 白い ハイヒール という 装い は、 小池 を 彷彿 とさ せる。「 煙草 を 吸う 男」 や「 白髪頭 の オジサン」 が 女性 に 向かっ て、「 歯向かう 気 か」、「 組織 なめん なよ」、「 変え られる と 困る ん だ よ」 と 罵声 を 浴びせる。「 既得権」、「 隠蔽 体質」、「 組織 の 圧力」、「 進ま ぬ 政治」 の 文字。 光 に 向かっ て 歩む 女性 の 後 には、 いつのまにか スーツ を 着 た 凜 々 しい 若い 男性 たち が 連なっ て いく。「 さらば、 しがらみ 政治」 の 文字 が 浮かぶ。   動画 が 終わる と 司会 者 が 声 高らか に 告げ た。 「希望 の 党 代表、 小 池 百合 子 が 登壇 いたし ます!」石井 妙子. 女帝 小池百合子 (文春e-book) (Kindle の位置No.4596-4602). 文藝春秋. Kindle 版.

これなんてもう、イジられることでしか救われないだろ。

本書に書かれた内容の真偽は分からないし、小池都知事を引きずり下ろすためのネガキャンの一環かもしれない。それについては何も言えないが、これだけは言える。読み物として面白い。ぐいぐい引き込まれた。ステイホームのお供としても損はないと思う。

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