気遣いの沼

俺は人と交流するとき、非常に考えすぎる。
考えすぎるというか、気を遣いすぎる。そして疲れる。
小さいときからそうだ。

目の前で人が喋っている時、
相手が不快に思わないアンサーを出すにはどうしたらいいのか、そしてその伝え方までをしっかり考える。これは、まじめな話をしている時は当然の事、普通の雑談でさえこうだ。

正直疲れる。
ましてや、自分の中でめちゃくちゃ考えて振舞ったのに、結果相手を不快にさせることもあり、そうなると更に疲れる。

この、「気を遣いすぎる自分」のせいで
人と関わることがめんどくさい。だるい。


本当は、
本当は、相手の事など考えずにその場で思ったことをポンと口にしたいのだ。


勿論相手への配慮が必要な場面ではそれは通用しないのであれだが、せめて友達と酒飲んで飯食って超無礼講な状態の時であってもそうでありたいのである。
だが、そんなときでも俺は友人の顔色を気にしている。
一挙手一投足、一言一句を常に意識されているような感覚なので、ひと時も気を緩められないのだ。それは疲れるわ。


昨日だったかおとといだったか、石丸伸二氏と成田悠輔氏が出ているとあるライブ配信を視聴した。

二人に対して、批判ありきで質問したい人を募り、それに二氏が答えるという番組で、深夜にも関わらず一時同時接続15万人ぐらいいるぐらい盛り上がりを見せていた。


話も興味深く面白かったのだが、俺は配信の中で、成田氏の自由奔放な態度が非常に印象に残った。


質問する方が喋っているのに、酒のつまみを取り出してボリボリ食べだしたり、離席して急にトイレに行ったりウーバー頼んだり、別の事をしゃべりだしたりなど、到底俺の中の常識では考えづらい行動をとっていたのだ。


先程の俺の中の常識というのは、「人が喋っている時は他の事はせず、ちゃんと話を聞く」というものだ。
おつまみをとってボリボリ食べたりトイレに行ったりすると、時間を使ってきている質問者に対して失礼に値するので、絶対にやってはならない、というのが俺の中の普通、常識なのだ。


なので、本来ならばそんな常識を持った人間がそれを見ると、「怒り」を覚えるはずだ。お前それはねぇだろ失礼だろ、と。


ところが、それを見た時、まず第一に思ったのが「うらやましいな」という羨望と嫉妬が入り混じった感情だった。


こういう気持ちになったのは初めてではない。
その時は羨望×嫉妬の感情を意識していない、もしくは羨望×嫉妬の感情を飛び越えて即怒りの感情を放出していて気づかなかっただけなのかもしれないが、


改めて振り返ってみると、成田氏のように人への気を遣うことなく自由奔放にその場を楽しんでいる人に遭遇すると、必ず一番最初に「うらやましいな」と思っていた。


そう、本当は「そうなりたいのだ」。


言い換えれば、俺の中で植え付けられている気遣いの常識というのは俺の本心とイコールではない、ということだ。


でなければうらやましいなどと思わず、成田とは合わない。嫌いだ、こいつの動画は見ない、となるはずだ。


だが俺はそうしなかった。うらやましさの次には成田氏の行動に面白さを感じ、果ては自分を成田氏に投影しながら、自分の自由奔放欲求を満たしまくり、最後まで配信を視聴した。終わってみれば夜中の2時か3時だ。


改めて言う。本当はそうなりたいのだ。


Youtubeというプラットフォームはまさに、
「普段の俺ならやらないけど、やってくれる代わりの誰かがいる」と思っている俺のような強欲人間が視聴し、そのやってくれる代わりの誰かが利益を得ている、そんなシステムなのだろう。


簡単に言えば、人々の欲求を満たすプラットフォームとでもいうべきか。まぁそれがエンタメと言われればそうなのかもしれないが。


それはさておき、
その配信の中で成田氏は今のSNS(主にX)の現状についてこの自由奔放さにつながる興味深いコメントを残している。

「XとかTwitterとか見ない方がいいんじゃないですか」

「Xの中で起きてるローカルなほぼほぼどうでもいいような反応っていうのを炎上とかバズったとかいって大げさに捉えるように洗脳されている、それが諸悪の根源」

「いかにそういうことに反応しないか興味を持たず、無視するか」

「Xの中で起きてる現象が大した影響力は持ってない、正確に言うと大した影響力は本来ないはずのものに過剰に人間たちが二次的三次的に反応することで実質的な影響力を持ってしまっていることに気づかないといけない」

「(改めて)いかに気にしないか、無視するか、が大事」


これは確かにそうだな、と思ったし、Xに限らず、他人の反応を気にしすぎて生きてきた身としては、めちゃくちゃ刺さる言葉だった。

こんな考え方だからこそのこの自由奔放さなんだろうな、と思った。

ほんまうらやましい。
俺もこうなりたい。「気遣いの沼」から抜け出したい。(笑)




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