うわばみの中の豚?
読書中にこんな表現がでてきました。
パイソンと言うと最近では専らプログラミング言語を指すようですが、そちらの意味ではありません。
直訳すると「"ニシキヘビの中の豚"世代」。何のこっちゃですが、実はベビーブーム世代のことなんですって。
出生数の推移をグラフにすると、前後は水平に近くてベビーブームの場所だけがこんもり盛り上がりますよね。それが大蛇に飲み込まれた豚のように見えるところから来ているんだそうです。
真っ先に『星の王子さま』の例の「象を飲み込んだウワバミ」を連想しました。正確には『星の王子さま』の大蛇はボアなので少し違いますが。(両者は近縁ですが、ボア科が卵胎生であるのに対し、ニシキヘビ科は卵生という違いがあるのだそうです。)
主人公の「僕」は子供のころにこの絵を描いて、「帽子の絵にしか見えない」と答える頭の凝り固まった大人たちに失望するわけですが、人口統計学者に見せていれば分かってもらえたかもしれませんね。
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それで思い出したのですが、以前、「『星の王子さま』再読」という記事で、「王子さまはサン=テグジュペリ自身、王子さまの星(あるいはバラ)は彼の祖国フランスだ」と書いたことがありました。
当時、記事執筆にあたり、他の方々のブログをいくつか読み、物語本文と作家本人による作中の挿絵の両方にたくさんの第二次世界大戦に関する寓意が含まれているらしいということを知りました。
例えば、「大きくなりすぎて今にも星を破壊してしまいそうな3本のバオバブは独・伊・日の枢軸国」、「王子さまが地球に来る途中で訪れた惑星は欧州各国」という風に。
今回、また少し関連ブログを読んだのですが、新たに「冒頭のウワバミの絵は、ナチスドイツが半年かけて(ボアが大型動物を消化するのにかける時間)徐々に、着実に侵略を進めていることの寓意」、「王子さまが面倒を見ていたバラにある4本のトゲは、フランスのレジスタンスの4つの精神的な指針」、「王子さまの星にある3つの火山は、フランスの3政党」という解釈を目にしました。
こじつけと思われる方もいらっしゃるでしょうが、私にはすべて正解のように思えてなりません。
なぜなら私は『星の王子さま』はサン=テグジュペリが友人やファンに残した遺書のようなものであり、童話の形を借りて語られた、作者本人のフランスへの責任感と愛情だと思うからです。
次の王子さまの言葉なんて、本当に作者からの「さよなら」のメッセージのよう。
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『星の王子さま』に思いを馳せると同時に、私自身の日本に対する愛着のような気持ちについても考えました。
私は日本を愛しているか?--実は良く分かりません。しかし、絆のようなものは感じています。
王子さまにとってあのバラが特別だったのは、彼女が一番美しかったからではありません。彼がそのバラのために時間と心を費やしたからです。
私が日本に特別な絆を感じるのは、日本が世界で一番優れた国だからではなく、そこに生まれたのは偶然にせよ日本の自然や文化の中で育ち、思い出を作ったからです。
「結縁(けちえん)」という言葉が浮かびます。仏教用語なのでいかにも場違いですし、本来は「仏法と縁を結ぶ」という意味なのですが、私が日本を思う心情は、そこで生まれ育ったことによって、まさに「日本と縁が結ばれてしまった」という感覚です。縁が結ばれてしまったからには、愛情と責任を持たなければいけないと感じます。(そう思う一方で、私の心の冷めた部分が「こういう愛国心や民族愛は遺伝子の生存本能から来ているんだよね」と水を差してきます。どうしたものか。)
ありがたくいただきます。