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「月見大福」 はらまさかず

ねこの大福が、ぼんやりと、屋根の上で月を見ています。
いくら大福のように太っているからって、いちおう猫ですから、
屋根の上ぐらいは、へっちゃらです。

「きれいだなあ」
大福は月を見ながら、昔のことを思い出していました。
捨てられたばかりのころ…。

そう。大福は、捨て猫だったのです。
小さな大福を助け、育ててくれたのは、一匹のきたないドブネズミでした。
そのドブネズミが、月を見る楽しさを教えてくれたのです。
「月はきれいで、しかも平等だ。俺たちが、もし昼間に出てみろ、みんなに嫌がられる」
ドブネズミは、よく、そういっていました。

「月は、きれいだなあ」
大福は、いつまでも月を見ています。

「大福、おだんご食べようよ」
下で、誰かが大福を呼んでいます。
うさぎのメイです。
「今いく」
大福は涙をふいて、屋根をおりました。

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