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「森の図書館」 木村研・はらまさかず作・吉澤みか絵

 100年に一度の大嵐で、森の図書館の本はすべて飛ばされてしまいました。
 みんなは、がっかり。
 でも、うさぎが、
 「ひとり、ひとつお話を書いて、みんなで100のお話を作ろうよ」
と、いいました。
 「よし。やろう、やろう」
 「おもしろいのを書くぞ」
 森の動物たちは、ちょっとだけ元気になりました。
 次の日から、毎日まいにち、森の図書館にはお話が届きました。
 お話が増えていくにつれて、森のみんなも元気になっていきました。
 今、お話は99作です。あと、一作で100作になります。
 それなのに、あと一作が、なかなか届きません。
 くまさんです。
 「くまさん、どうしたんだろう?」
 みんなは、だんだん心配になってきました。

 〇

 「よし。みんなで、くまさんのところに行ってみよう」
 動物たちは、森の奥のくまさんのうちにいきました。
 「くまさーん」
 「どうしたのー?」
 動物たちが声をかけても、返事はありません。
 「よし。ボクにまかせて」
 きつつきさんが、二階の窓からうちの中をのぞいて、
 「くまさん、くまさん」
と、窓をトントントンとたたきました。
 すると、窓があいて、くまさんが顔をだしました。
 「やあ。みんな、どうしたんだい?」
 くまさんが、不思議そうな顔をすると、
 「くまさん。どうしたの? お話のしめきり、もうすぐだよ」
と、うさぎが、長い耳をぴんとたててききました。
 「ごめんごめん。お話は書いたんだけど、足を滑らせて転んでしまって歩けなかったんだよ」
 くまさんは、原稿をもって、杖を突きながら外にでてきました。
 「なーんだ。そんなことならぼくたちにいってくれたら、すぐに届けたのに」
 いのししの子どもたちがいいました。
 「だめだよ。これは、森の図書館で、みんなが読んでくれる本だから、ボクが届けなくちゃだめなんだ」
 そういうと、くまさんは杖をつきながら、ゆっくりゆっくり歩いて、森の図書館まで行きました。
 くまさんが、森の図書館につくころには、たくさんの動物たちが集まってきていました。
 「お話を届けにきてくれたんですね。どうもありがとう」
くまさんからお話を受け取ると、やぎの館長さんが、
 「これで100作のお話が集まりました。森の図書館のオープンです」
と、いいました。
 図書館がオープンすると、森の子どもたちが、たくさんやってきてお話を読み始めました。

(作者のことば)
三密には、ならないでね(木村研)。
くまさん、足は大丈夫?(はらまさかず)。
100作目は、二人で合作しました。前半をはらまさかず、後半を木村研が書きました。


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